2002年5月週刊東亜 333号

[海外リポート] 日本AV業界, 既存産業との壁崩す
第333号/2002.05.09

[海外リポート] 日本AV業界, 既存産業との壁崩す

一年に製作5千余編‘アニメーション’と肩を並べて… トップ女優たち 人気絶頂

'アダルトビデオ’(Adult Video)の略字を取って日本式英語で表したAV.
この単語は、1990年代後半、韓国にも上陸、成人用ビデオ, すなわちエロビデオを示す言葉として使われている.
だが、日本でAVとはポルノビデオを言う.
日本は米国, ヨーロッパと共に、世界3大ポルノ生産国の中のひとつだ.
したがって、日本のAV産業は清渓川裏路地を連想させる韓国のポルノとは全的に違う.
ハリウッドが‘夢の工場’ならば、日本AVは‘ポルノ工場’だ.
男女俳優が実際に情事を繰り広げる撮影現場で、AV女優と監督などに会い、その隠密な世界を覗いた.

現在、日本で絶頂の人気を享受している最高級AV女優 及川なお(21).
彼女が新しい作品を撮っているという消息を聞いて、東京都内にある撮影場へ向かった.
撮影場は、70余坪程度のマンションを専用セット場に改造した所だった.
セット場は高等学校の教室, 寝室と浴室, 事務室の雰囲気などで組まれていた.
ラブホテルを転々として、あらゆる人の顔色をうかがってエロビデオを撮る韓国とは非常に対照的だった.

年間女性6千名程 AVデビュー

この日、彼女が出演した作品のタイトルは‘及川なおがぼくのベッドに’だった.
教務室として組まれた事務室で、及川なおは国語教科書を読んで自慰行為演技に没入した.
一方の手は胸を愛撫して, もう一つの手は隠密な所をまさぐり、吸い込まれていった.
続いて、日本女性特有のあえぎ声が撮影場を満たした.

自慰行為場面撮影が終わって、ガウンを着た彼女と挨拶を交わした.
最も気になったのは、“何故AV女優になったのか”だった.
だが、及川なおはためらいなく“好きだから”と答えた.
質問は“どれくらい稼ぐのか”につながって, 少しの間迷った彼女は、一日の出演料が200万円程度だと答えた.
より一層驚くべきなことは、人気AV女優の場合、1ケ月に20編程度の作品に出演するという事実だった.
近くの席に共に座っていた監督 溜池ゴロー氏(40)は、
“人々は女性の人格を口実にしてポルノを攻撃します.だが、AV女優たちは大部分が本当に好きでこのことをするのです. 演技中にオルガスムを感じる女優たちも80%を超えます”
と話した.
また、彼はAVに対して多くの意味を附与するのに反対した.
“AVは、ただ欲望を解消できるように作って、それを消費すればそこまで”ということだ.

日本AV業界では、年間約6000名の女性がAV女優としてデビューすることと推定する.
彼女たちは、18才少女から20代の大学生, 会社員, 30〜40代の人妻に至るまで、年齢層が多様だ.
だが、興味深い点は、AV出演の事実が周囲の人々に発覚する確率が0.1%にすぎないということだ.

AV女優志望者が増加するもっとも大きい理由としては、飯島 愛の登場を選ぶ.
90年代日本最高のスターとして登板した彼女はAV出身として放送界で成功した立志伝的人物.
彼女の自叙伝‘プラトニックセックス’は、日本で100万部以上売れて、韓国でも出刊された.
日本女性たちは、飯島 愛の成功を見ながら性に対して新しい考え方を持つようになった.
豊富な人的資源は日本AV業界を堅く後押ししている.
日本ビデオ協会資料を見ると、96年のビデオ市場規模は2570億円.
この中でAVは輸入映画を除く、アニメーション, 邦画と一緒に市場を三等分している.
97年一年間に日本で製作されたAVが計5000編で、販売量は1300万本だなどと、その威勢を察することは難しくない.
ゆえに、日本の大抵のAV企業は規模が大きい.
また、収益性が確実だと見るため、AVと無関係な一般企業の進出も列をなす.
これは、飯島 愛の成功のように、AV業界と既存産業の壁を崩す促進剤の役割をしている.

売上げ基準で、日本出版社順位20位程度という大洋図書.
こちらは20年前には負債だらけの小さな会社だったという.
しかし、AVと成人専門雑誌などに飛び込んで、現在は職員だけでも400余名にもなる大型企業に成長した.
大洋図書の子会社のひとつのアクアハウスだけで1年に550巻程の成人書籍を出版するらしい.
‘クリーム’‘イブ’‘投稿キング’‘SMDX’など、定期的に発行される成人雑誌も10余種を超える.
去る4月7日、銀座のある書店では、10代のアイドルスターに浮び上がったタレント 上野未来のサイン会があった.
体育服と水着姿で撮った写真集出版を記念するためのことだった.
彼女の写真集を出版したアクアハウスのある関係者は、“大衆の人気を博す 女性のイメージを読むことが重要だ”としながら“今年は平凡だけれど、ぽっちゃりして可愛い外貌が流行”と話した.
日本AVは、女優の人気に大きな影響を受ける.
したがって、芸能界のこういう流れを把握することは、マーケティングから決定的な戦略へ作用する.
また、このように結ばれた10代アイドルスターとの縁は、後日ヌード集出版やAV進出時に対応した保険的性格もある.

変態性行為を扱った特別ジャンルも

東京都内にある、平凡な商店街ビルディングの6階に位置した成人専門ビデオ販売店.
だが70坪足らずのこの売り場には、ビデオとDVDが山盛り一杯あった.
店長の中田ヒデアキ氏(30)の話によれば、VHSビデオで製作されたAVだけで1000編程度を保有しているという.
主な顧客を聞くと彼は“30代前後半が 最も多く, 女性の場合は池袋に専用ショップがあるので、そちらを主に利用しています”と説明した.
こちらでは一日平均150本で、200タイトルが販売されるという.
AV一本の価格は2980円から2万円.
価格差が大きい理由について、彼はプロダクションの規模の差だと話した.

ビデオ販売店で最も目を引いたのは、断然SMとボンデージ(Bondage)ジャンルだった.
韓国では単に変態だと置き換えられる性行為だ.
だが、このジャンルは日本ポルノの象徴といっても言い過ぎではない.
幸い、東京のSMクラブで最も有名だという女王のプレーを見ることができる機会を得た.
AV撮影ではなく、SM雑誌に掲載される画報撮影現場だった.
だが、自然な写真を得るために、あらゆる行為は実際に展開するという.
この日の画報撮影の特徴は、相手の男性がSMは全く経験がない一般人であったという点だ.
黒い服を官能的に着飾った女王. 彼女の撮影準備は、まるで手術を準備する医師のようだった.
加虐的な性行為を繰り広げるために女王が使った道具は、自慰器具から浣腸器具まで、実に多様だった. 撮影が始まると、女王は男性を慣れた手つきで凌辱し始めた.
初めは男性のヒップを適当な強度で殴った. まもなく男性の性器を加撃し、そこに洗濯ばさみをぶら下げた. 男性は若干苦痛になったが、反抗しなかった.
そのくらいで、撮影現場から撤収した.
もっと見ていると、何日もの間、ご飯も食べられない程の凄まじい場面を目撃することになるという忠告のためだった.

日本最高のボンデージ専門家の中の一名である 雪村春樹との出逢いもなされた.
ボンデージとは、日本語で‘バリ’とも言い、綱で女性を縛って性的虐待することを言う.
ごま塩頭の50代に達した彼は、自身の仕事に格別な自負心を持っていた.
日本でボンデージは、既に芸術行為として認められているという.
最近、彼は国内にもかなり知られたAVスター 金沢文子と一緒に作業した.
文子がボンデージジャンルを撮影したのは今回が初めてで、日本国内でも多くの話題を集めたという.
特別に作業過程を公開することにした彼は、タバタモモコ(21)というボンデージ専門モデルまで渉外しておく等、配慮を惜しまなかった.
雪村春樹の話によれば、ボンデージの歴史は400年をはるかに超えるという. 日本では大阪地域を中心にボンデージ 文化が発達したという説明もつながった.
モデルが赤い着物に衣更えする間“ボンデージは縛る人の気持ちによって変わります. 時には強姦犯になる事もでき、時には愛する人になることができるのです. 現在のボンデージは暴力ではなく、共感のための遊びです”と彼は真剣に話した.
雪村春樹はボンデージで最も重要なことは、相手方の反応だと強調した.
相手方が性的快感を得られないならば、ボンデージは意味がないということだ.
デザインと縛る方法などは付随的な問題に過ぎないという.
彼の速い手の動きの終わりに、女性モデルの両手を縛った綱が、広げた股間に正確に食い込んだ.
瞬間、女性モデルは単発的なあえぎ声を吐きだした.
苦しい吐息をつき、汗を流して作業に熱中した彼は“いっそ縛られる人の方がずっと楽だ”と冗談を投げかけた.

この男性からは、ポルノの陰湿な欲望などは感じることができなかった.

エロ物として取扱うには規模があまりに大きくて

日本的なAVジャンルの中にはナンパも省けない.
ナンパとはその場で服を脱がすという意味を含んでいる.
東京都内を散策して、詳細に注意深く見ると、おかしな光景を目撃できる.
ナイトクラブのウェイターのような男性たちが道を通る女性たちと駆け引きを繰り広げるように対話をする場面だ. こういう場合、十中八九はAVハンティングマンである可能性が高い.
ハンティングマンの提案に応じる女性もやはり少なくないのだが、普通、価格は時間当り1万円程度だという.
女性たちはこの金を受け取って、カメラの前に下着や, 恥部を現したりポルノを撮る.
路頭ハンティングはアマチュアポルノのメッカであり、AVスターの予備登竜門だということができる.
日本AVが公式的に性表現の自由を享受するようになったのは、90年代中盤だ.
もちろん、それ以前にはいわゆる‘ウラボン(註:裏本)’という陰性市場を持っていた. 今でも、正規商品AVは実際の性行為部分に必ずモザイク処理をしなければならない.
だが、日本最大のAV製作社中のひとつのソフトオンデマンドは、むしろこの点を利用して、10年にもならない間に 高速成長した. 彼らは陰毛露出も厭わなかった.
他の製作社が様子をみている間、モザイクの大きさを最小化する差別化戦略で押し通した.
その結果、今年の予想売上額が約30億円に達するらしい.
企画物製作で強烈な印象を残したソフトオンデマンドが広く知られたのは、看板スター 森下くるみ(23)の助けも大きい.
彼らの製作方式は、ポルノのイベント化に焦点が合わされている. 例を上げれば、森下くるみが50名の男性に自慰行為をしてくれる.
そして、そのうち最も気に入った男性一名を選抜して、彼とのセックスでフィナーレを飾るという方式だ.
日本のAV業界は、率直にポルノ工場に過ぎないかも知れない.
だが、それは風俗業界と呼ばれる遊興産業はもちろん、演芸, 出版など、各産業分野と密接な関係を結んでいる.
また、日本AVの莫大なコンテンツは、インターネット時代を迎えて全世界で売れている.
このくらいになれば、これからAVを単純にエロ物としてだけ取扱うことは難しくはないだろうか.
< イ・ミョング/性文化評論家 >
 
インタビュー/ AVスター 森下くるみ

“実際と撮影時の差は特にありません”


日本でAVスターは、一般芸能人と全く違うところがない存在であった.
作品中では、たとえ服を脱いでセックスをしても、対外的な活動は露出を敬遠する他の公人と違う必要がなかった.
ジーンズにジャケットまで着込んで出てきた森下くるみ(写真)との出逢いは、それで多少残念だった.
だが、163cmの身長に85-60-87のスタイルは、既にインターネットで確認されたファンタスティックなヌードを思い起こさせるのに充分だった.
79年7月29日生まれのくるみは、日本最大のAV製作社のひとつのソフトオンデマンドの看板スターであった.
彼女は人形のような外貌をもつことはなかった.
しかし、慎ましやかな雰囲気にもかかわらず、果敢な性行為で一気に人気を集めた. くるみが出演したAV作品は、普通、男性が数十名ずつ参加するスタイルが多かった.
また、数多くの男性たちが顔に射精する、いわゆるぶっかけシリーズでも頭角を現した.

あとは一問一答.

−AV中のセックスと実際の個人の性生活と違う点があるならば?

“それほど違う点はありません. 実際のセックスでも、AV中のセックスでも、最善を尽くして感じようと努力するだけです.”

−韓国男性は、日本女性が性に関して開放的だという先入観があります. 貴方の考えは?

“個人差はありますが、ある程度は事実です. 開放的という言葉よりは、性を早く経験するということがより正確なようです.”
−ソフトオンデマンドの看板スターとして有名ですね?

“ソフトオンデマンドでは30編あまりに出演して、最近には製作社を移りました. 今月中旬から、新しい製作社の作品を通してファンに会うことになるはずです.”
−韓国のエロビデオを見たことはありますか? もし、機会があるならば出演する意思はありますか?

“すみません. 韓国のエロビデオを見たことはありません. 出演と関連した事項は、マネジャーと相談しなければなりません. でも、条件が合えば、一度仕事をしてみたいです.”