“料理というのは、食べる人のまごころも重要”
イ・ガンピル 東亜日報 新東亜 記者
きっぱりとした予測と人を引き付ける解説で観戦の楽しさを教えてくれる‘国宝級
野球解説者’ ハ・イルソン氏(51)は、プロ野球の試合がない今がよりいそがしい.
素朴な隣の家のおじさんのように、安楽な印象にずば抜けた会話力をもった彼を、世の中は一時も放っておかないためだ.
仕事は自由業従事者とはいうものの、放送出演と企業講演がほとんど毎日連なる、相変らず自由時間が持てない境地.
結局、彼は新しいミレニアム開始10余日で、当初の新年目標を修正してしまった.
‘家族と共にする時間を最大限増やそう’から‘共にいる時だけでもよくしてあげよう’に.
今日、彼が腕まくりをする理由の中のひとつだ.
折りよく、彼の家は暖かい人の気配で一杯だ.
豪州に留学に行っていた二人の娘のうちの上の娘 スンヒ(24)が一昨年帰国したのに続き、昨年末には、ホテル経営学を勉強した次女テギョン(23)が
帰国したためだ.
このように家族が一つの垣根のなかで過ごすのは、実に8年ぶりだ.
だが、二人の子供はどちらも勉強をもっとしたいという意思が強いため、こう穏やかな時間がそんなに長くないということを彼は理解している.
さらに、この子供たちは、すでに大人になっているではないか.
ハ・イルソン氏は、最近になって台所への出入が‘頻繁’になった.
もちろん、その回数が1ケ月に 1・2 回を超えない程度だとか,
台所仕事を共にする最近の若い夫婦に比較すれば‘面はゆい’水準の場合もある.
しかし、せいぜい、水一杯を飲もうと冷蔵庫のドアを開こうとでもしない限り台所には入ろうとしなかった以前と比較すると、彼としては大きな発展でない筈がない.
彼にこういう変化が起きたのは、実は、自発的なことというよりは、周辺状況の‘半強要’のためだというほうが正しい.
主婦たちの悩みを聞き入れてくれる朝の番組や娯楽番組等、放送出演が増えながら、彼の家庭的な容貌を聞いたいろいろな媒体から“料理を一度しよう”という要請が相次いだのだ.
考える事すらできなくて、1・2
回エプロンを着けてみたのだが、最近では“料理をしよう”という気持ちになるほど経験がついた.
自身が作りだした料理を前に、いろいろとおしゃべりをする間、家族のつながりがより深まるのを体験することは、以前には知らなかった楽しみでもある.
今日、彼がしよう考えている料理は、鶏の炒めもの.
その間の‘実験’を通じ、野菜料理よりは肉料理が相対的に甘いということを体得した末に、彼はこの料理を集中的に‘研究’している.
基本的に、野菜料理はソースが支えなければならなくてそのうまみが出にくい反面,
肉類は適当に味付けをするだけでも‘まあまあ’にはできるというのが、彼の持論だ.
“本人はどうかは知りませんが,
普段はしていなかった事をするから、私が困ります.
とはいうものの、準備から仕上げまでを一人でやるのですることもないのですけど.
助手のつもりでそばにいると、見ていられないこともあって,
それで料理をするというなら、私はむしろ止めるたいほうですね.”
まさにジャガイモやニンジンを準備している彼に面と向かって言い放つ妻
ガン・インスクさん(44)は、まだそれほど高い点数を与えられないという意見だ.
これに対する、ハ・イルソン氏の反撃.
“昔から料理というのは、作る人のまごころも大事だけど,
食べる人のまごころも重要なのではないでしょうか.
そのような点で、私のようにどんな料理でも区別せずによく食べる人も、料理が上手い人と同じ程に重要ですよ.
そして、こういう人々が料理を作るというのなら、その時は勇気を出して,
また、へたであろうがどうであろうが、おいしく食べてやるのが道理です。”
夫人と軽い口喧嘩を繰り広げる間に、ハ・イルソン氏はいつのまにか野菜をぶつ切りにしていた.
ところが、その様子がちょっと風変わりに見える.
普通、鶏の炒めものには野菜を大きく切って入れるが,
特にニンジンは三つに切ってあるが、どう見ても一口で食べるにはあまりにも大きい.
普段は野菜と果物を食べずに、妻に‘からだに良くないものだけを選んで食べる’という心配をされている彼は、自分が料理をするときは補償心理が発動してわざわざ野菜を大きくするということだ.
野菜と肉の上に粉トウガラシとコショウ,
一抹の砂糖とごま油をばら撒いて醤油を入れてと、手当たり次第、彼の手 を加える.
食べ物の味は"手の味"だと言われるが,
もし、その味が手の厚さから出てくるならば、彼は最高の料理人になる条件を元々持っていたのかもしれない,
“何度もしてみもしなかった人がこう言ってはちょっとおこがましいのですが,
料理とはとてもおもしろい作業なんです.
先月‘新東亜’を見たら、ハン・ワンサン
尚志大総長様が料理をオーケストラに喩えていらっしゃいましたね.
そのお言葉をハ・イルソン式に応用するならば,
料理とは、野球です。 良い選手たちは材料になることで,
監督の作戦と用兵術は調理法に比喩できます.
こういう要素が調和を作り出す時、おいしい料理になって,
おもしろい試合になりますよ.”
しかし、年配の平均的な韓国男子であることを自任するハ・イルソン氏は、今後も料理を趣味とする考えはないという.
実験用料理で家族を困らせるよりは、良い‘選手’たちの腕前を鑑賞することの方が、皆にとってはるかに生産的だという判断のためだ.
自分のようにしょっぱくて辛い料理と酒に慣れ親しんだ口では、良い料理を出すのが難しいということだ.
酒の話が出てきたように、彼には料理よりは酒に関する話がより多く,
誰も追従できないほどの酒のみだ.
彼の酒の実力を象徴する用語中では、‘20-20
クラブ’というのがある. 元来、20-20クラブとは、一シーズンにホームランと盗塁を各々20以上記録した打者に付けられる光栄な呼称だが,
彼は、焼酎20杯と爆弾酒20杯をその場で片づけるという用語として使用する.
まだ、このクラブに加入した人は、彼を含んで、3-4名にすぎない.
それでも彼が健康を維持しているのは、持って生まれた健康と共に、酒を飲んで家に帰っても必ずご飯を,
それも普段より多い量をたいらげるため.
料理より酒により関心を持った夫を持ったことによって、彼の妻はヘジャンクク(註:牛の内臓を辛く煮込んだスープ.二日酔いに効くとされている)とチゲ(註:鍋物)の‘達人’になった.
特に、キムチ, もやし,
牛肉を入れて煮込んだ、さっぱりとしたヘジャンククは、ハ・イルソン氏が最高の賛辞を送る一品だ.
元来、体質的に酒を好むが,
彼は自身が酒を頻繁に飲むようになった、もう一つの理由として妻との結婚を話す.
昨年末、高視聴率を記録したMBC週末
ドラマ‘愛しい貴方を’のように, この夫婦は、74年ハ・イルソン氏が大学卒業直後、体育教師として赴任した金浦のある高等学校で、先生と3学年の学生として出会い、カンさんが卒業して8ケ月になる75年10月結婚にゴールインした.
幼さからお互いの顔を見るのがぎこちなかった新婚当初,
二人はこの雰囲気を変える姑息な手段として、浴びるほど酒を飲んだという.
おかげで、妻のカンさんの酒の実力も相当な方だ.
“学校から退勤して家に帰るときは、豚肉一塊と焼酎2-3本を持って行きましたよ.
この人は、夕方に開く豚肉パーティーのために、一日中研究に研究を繰り返しせいで薬味にとてもうるさくなりましたよ.
最近も、時々当時を思い出して、豚肉を買って食べても,
新聞紙をぐるぐる巻いて持ってきて、煉炭コンロに焼き網を乗せて焼いた、あの時の味が出せませんでした.”
鶏の炒めものが出来上がって、香ばしい香りが新しい家の中全体に広がっていた.
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