99年5月367号NEWS PEOPLE

[カバーストーリー] 韓国風水の'虚と実'

 
newspeople99_367.jpg (10282 バイト)単純に社会病理現象だと言うには、あまりにも理解できない猟奇的な墓荒らし事件が最近続いている.さる3月、ロッテ シン・ギョクホ会長の父親の墓で、死体の一部を取り去った事件, そして、4月に入って、忠武公墓地毀損事件を始めとする朝鮮時代の主要王陵に至るまでに広がっている. また、巨師として尊敬を受けているソンビ(註:学徳を兼ね備えた人に対する敬称)退渓とユルゴク先生の墓まで荒らされている実情だ. それならなぜ? そして、どこまで? 最近起きた墓地毀損事件の特徴と原因を精密分析して、王陵をめぐる韓国風水の‘虚と実’などを集中的に診断してみた.(編集者)

度量の広さが破られている. 生きている人の幼稚な利己心が、死んだ先祖の墓地を暴いて傷づけている.さる3月から、すでに3回に達する.
先祖の墓地を‘山所地気(註:墓の敬称)として敬ってきた、私たちの道徳観と倫理観は、それを前にしながら余地も無いまでに粉々になった.

さる3月上旬には、巨額をねらってロッテ シン・ギョクホ(辛格浩)会長の父親の墓を破り、遺骨を持ち去るという奇妙な事件がおきた. その後、さほど経過しない昨年3月には、ハンナラ党 李會昌 総裁の父親の墓に鉄棒が打ち込まれる事件があったことが明らかにされた. そのうえ、最近では、私たちの民族の聖雄として敬愛を受けるイ・スンシン(李舜臣)将軍の墓地で、刃物と鉄棒が数十個も発見されたことを始めとして, 太祖 太宗 世宗 等、朝鮮の王陵のみだけでなく、朝鮮時代の儒学者のイ・ファンとイ・イの墓でも、数百個の刃物と鉄棒が発見された.はなはだしきは、ソウル瑞草区のホンルン(太宗及びウォンギョン王侯の墓)では‘甲申年 十二月 二十日生 ク・ジャヨル’という生年月日と名前が彫られた銅版(長さ 66p,幅 5p,厚さ 4o) 2枚が掘り出された.

これで“明堂(註:風水で墓所として最適だとされる所)だと知られる所に墓を持った歴史的人物だけでなく、財閥や前職大統領, 有名政治家たちの先祖の墓が危険だ”という声はだんだん説得力を得てきている. 毀損のみだけでなく、明堂として知られた他人の墓地に自分たちの先祖の遺骨をこっそりと埋葬するサムジャン(挿葬)の危険性も警告している.

‘李忠武公墓 毀損事件’を調べている忠南 アサン警察署の中間捜査発表によれば、最近の‘王陵 毀損’は、巫俗人を自任する釜山のヤン・スンジャ氏(48)とヤン氏の息子 ムン・デウォン氏(27)の不分別な欲望から始まったようだ. “夢に李舜臣将軍が現れて、巫病を治療するために犯行を行った”という従来の陳述をヤン氏は去る4月 30日ひるがえした.“離婚した後、息子たちと離れて住むようになり、苦しかった.有名墓地や王陵, 山等、明堂に刃物と鉄棒を刺せば、私と家族が精気を受けて、和やかな家庭になることができると思って犯行を行った”というのだ. 家族の和睦のためにヤン氏 母子は、95年から慶尚南道 金海市 ソンサン洞 キム・スロ王陵を皮切りに、世宗大王 曉鐘 太祖イ・ファン 李忠武公の墓地等、計48基に刃物158振りと鉄棒125本を打込んだ.本当に無知蒙昧なことだ.

結局、シン会長の先祖の墓の盗掘はお金のためで,李総裁の先祖の墓の毀損は子孫に害を及ぼすために, 王陵及び歴史的人物等の墓では、利己的な欲のためになされたことが明白になった. 最初の事例を除けば、他は誤ったまたは無知な風水観にともなう‘犯罪’だと見られる.ところで、こういう奇異な社会的現象はどこに起因したものか?

まず、風水に関する私たちの考え方に問題がある. 風水がそのまま明堂探しであり, これがまた子々孫々富裕栄華を享受することができる根源だと連結して考える悪いクセがある. 元来、葬法にともなって“明堂があるかないか”という論議の根本は、故人の鎮魂を願う子孫たちの孝心だった.ところが、これがだんだん、死んだ先祖の恵みをこうむろうという次元に堕落していったのだ.

崔チャンジョ 前ソウル大地理学科 教授は“新羅 ドソン国師から降る、韓国の伝統的な風水は、土地を、病気のお母さんを世話するように扱うことであって,明堂を探すではない”ときっぱり言う.すなわち、悪い土地, 問題の多い土地を探して、寺を立てたり搭を立てたりして、土地を保護し, 明堂も個人ではなく、村を中心に探した.

そのようなことが、だんだん‘発福を求める’中国式理論風水に影響を受けて、墓所の選定に大きく偏る現在の風水傾向に傾いてきたという.

その上、崔チャンジョ氏は、他の地官(地相見、風水師)たちとは違い, 誰でもここに埋められれば、大統領が出てくる土地だなどというような絶対的に良い土地などはないと説明する. 80年代から社会指導層の人々の間で起こり始めた明堂探しの結果は、今日の外国為替危機と違うのかと反問する.どんな用途で、誰がその土地を使うかによって、良し悪しが変わるということだ.一例を挙げれば、寺刹跡地はむかしから明堂だと知られてきたため, 朝鮮時代に入ると、儒林(註:儒教学者)たちはその‘明堂’の寺を廃して墓を作った.
しかし、その結果、職階が失われたり,精神疾患者が出てきたりした例も少なくないという.すなわち、寺刹跡地は、僧侶が修練する場所として有用だが、墓所としてはふさわしくないということだ.

墓所を探して先祖の陰徳を得ようという、誤った欲は, 智異山 実相寺 極楽殿 下の数多くの挿葬によく現れている.最大吉地として知られたそこに、欲で目が見えなくなった子孫たちは、故人の死体から首だけを切り離して暗葬した. 人間の欲がどれくらい怖く変質するかを見せている.
家族の和睦をとりもどすために48基もの墓に約300振りの刃物と鉄棒を刺した行為もそれと大きく違わない. 墓と生きている子孫たちが感応するという‘同気感応’を一方的に解釈して、何も関係がない 自分たちが陰徳を得ようとしたというのにも、大多数の人々が唖然としている.

韓国人の意識と巫俗に関して、長く研究してきた漢陽大 趙ヒョンユン教授(52人類学)は、こういう現象をみて“今回の事件を単純化させれば、機械的に‘巫俗人が問題だ’ということができるが, これは私達の社会の病理現象だ”と指摘している.正しい価値観が何かを教えてくれる‘おとな’がいない社会で、自分たちの利己心と虚しい欲望を成し遂げようとしたが、社会混乱を起こしたということだ.

“巫党(註:ムーダン、巫儀式を行う巫女)社会にもシンオモニ(註:神オモニ、先輩巫党)があって、娘に巫祭をどのようにして行い、巫党とは何かを教えてきたのだが、こういう体系が崩れた.だから、ヤン氏のように巫祭をする方法も知らないくせに巫党を自任する人々が現れる.これは、健全な巫党を貶める行為だ.ヤン氏は何も習わず、誤った風水策をもって自分の欲望を満たそうとしたが, 他人の墓地に刃物と鉄棒を刺すなどというやり方は巫党のどんな処方法にもない”と、趙教授は説明する.

現在、ヤン氏 母子の行動について、ひょっとすると、韓国の精気を断ち切ろうとする外部勢力の指示を受けたのではないかという疑惑も提起されている.個人的な欲望を満たすためという陳述では釈明できない、お粗末な部分が多いせいだ. しかし、それでも相次いで発生する墓地毀損事件を止めることはできない. 結局はこういう事態を防止できる道は、風水に対する新しい理解と埋葬文化に対する変化が同時に行われることだ. 墓地毀損にこのような大きな社会的反応がおきることも、別の見方をすれば、その根底には壊された明堂を惜しむ気持ちがあるのかもしれない.シン・ギョクホ 会長の父親の墓の場合、本当に明堂だったのなら、事後にあれほど情けなく苦痛な事件が起きただろうかという疑問も聞こえてくる.

価値観が撹乱されたことが最も大きな原因だと見ている趙ヒョンウン教授は“しかし、こういう末期的な現象が現れることは、そのまま私たちの問題を正せという警鐘だから、その警告を受け入れなければならない”と提言する.
(ムン・ソヨン記者)


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