98年8月14日 NEWS PEOPLE NEWSPEOPLE.gif (941 バイト)

[文化] 尋常でない スクリーン クォーター "怪談"
 
今夏は怪談シリーズが過激だ.容易には納得できなかったり、ひねくれていて、ともすれば複雑怪奇ともいうべきような‘怪談’だ.そのような脈絡で見るなら、怪談シリーズにもう一つ付け加える話がある.スクリーン クォーター(韓国映画 義務上映日数)論争.newspeople98_8_14.jpg (15909 バイト)

実は、この論争はそれ自体は目新しいわけではない.‘存続’か? ‘廃止’か?を糾す,明確な両極端的対立の構図を帯びたまま少しも進まない論争なのだ.しかし、内幕を覗いてみると,今回のはちょっと違う.

映画街内外で明るみになる声は現在、厳格には二つある.‘スクリーン クォーター 死守’と‘スクリーン クォーター 廃止’.問題は、大多数の映画人と製作関係者たちがデモをも辞さずに制度存続を叫ぶ反面, 論争に火を付けた主体が影も形も無いということだ.‘奇異’なことに存廃をめぐった論争は残っていても,まさにその論客は姿が見えないという状況だ.

映画界をひっくり返すほどの、今回の論議沸騰に火種を投げたのは、外交通商部であった.正確な震源地は、韓徳洙通商交渉本部長.さる7月22日、韓本部長は記者懇談会で次のような要旨の話をした.

“年間の3分の1以上は韓国映画を上映しろというスクリーン クォーター制が、むしろ映画産業の基盤を揺さぶっている.映画業界の危機を克服するためにもスクリーン クォーターを解くべきだ.いっそ、外国映画を思う存分上映し、映画館を観客で満たせば、映画振興基金もより多くおさめることができ, その金で国内映画産業振興を助けることができる.世界でスクリーン クォータ制を運用する国家は11ケ国であり, 処罰条項がある国は私たちだけだ”

映画界がひっくりかえるほど驚いたことは火を見るより明らかなことだった.即刻映画の団体が声明書を発表して,あげくの果てに韓本部長の辞退まで促してしまうほど.ところで、過剰ともいえるのは、外交通商部側の反応だ.記者懇談会で廃止主張を繰り広げていた態度が、180度方向変換した状態だ.震源地の通商交渉本部の対応姿勢もそうだ.

一関係者は、“本意ではない話が、そのように流されたことは遺憾だ.この度のことは、私達が関与する懸案ではない.主務部処の文化観光部側にバトンを渡してある”という趣旨の釈明を反復しているだけだ.スクリーン クォーター廃止は外通部の公式立場ではないとの, 曖昧な主張だけをしている.

今回の論争が何故‘怪談’シリーズにまでなったのかは、全国劇場主協会側の反応にもよる.これまで間断無く廃止論を力説してきた全国劇場主協会が、最近、事態に対してだけは ‘ノー コメント’で一貫しているためだ.事件がおきて以後、協会長は外部インタビューにも一切応じないでいる状態.是非の余地がうかがえる発言はただの一言も外に出ないように、急いで内部意見を整理したという後日の噂だ.

協会 李ヨンハ常務は、“スクリーン クォータ制存廃に対する私たちの立場は明らかにしない”を前提にして、“これから残った問題は、政府の意志”という意味のわからない言葉だけで、それを分析した.

外通部側の‘手を引く’ということには、うなずけなくもない.内部関係者もその背景を率直にさらけ出す.“ともすれば、部処間(文化観光部側と)の葛藤まで生じかねないという憂慮もあり,何より外通部長官の名前で公式の立場を明言した懸案ではないため”というのが、通商交渉本部の一関係者の釈明だ. それにしても、その間一貫して廃止主張の声を高めてきた劇場主団体は何故口をつぐむのか?

“外通部の立場はなんとか大目に見れるが、到底、劇場主団体の態度は理解することができない”というのが映画人の一様な声だ.この大きな問題で、映画製作者たちは最近の論議沸騰を、いままでとは全く違う性格のものだと解釈している.

スクリーン クォーター 監視団 ヤン・ギファン事務局長は“廃止不可という、私たちの立場は一様だ.しかし、最近の込み入った話を組み合わせてみると, 今回の事態は尋常ではない”と、憂慮の念を隠すことができなかった.ヤン局長は、“廃止論を繰り広げていた側が、突然、余裕のあるところを見せるようになることも、理解できないわけではない”という弱気な主張もはばからなかった.

政府次元の廃止意志があちらこちらから感知されるということだ.この数ケ月間廃止論が力を増している決定的背景は、外でもない、大統領の一言. さる7月2日、文化観光部長官の大統領府 業務報告時、“韓国映画 義務上映制は、市場経済に合わない”という、金大中大統領の指摘があった後、米国映画業界の‘喉笛締め’が日々勢いを増してきていると映画人は主張している.

実際に、米国映画業界のジェスチャーは、近来驚く程堂々としていている.米 映画協会(MPAA)は、韓国のスクリーン クォーター制廃止を前提に、5億ドル規模の投資を提議してきている.内容としては, スクリーン クォータ制をなくせば、韓国全域にマルチプレックス劇場(複合館) 20を建てるということだ.単純にスクリーン クォーターだけを主障害だとして、米国側が現政権が外資誘致に積極的な点をみてとり, 巨額投資をえさとして投げているわけだ.今回の外通部側の発言も、結局ここに背景をおいていた.

米国マルチプレックス劇場に対する、映画人の憂慮は並大抵のものではない.
映画人協会 副理事長であるイ・ドゥヨン監督は、“スクリーン クォーターもなく、20館にもなる米国 マルチプレックスが入れば, 私たちの配給構造は一瞬にして米国支配の下に入っていくことになる.恐らく、韓国映画は上映の機会自体を確保されないことが明らかだ”としながら、“外資誘致や雇用創出も良いけれど, 短期的な経済論理で短絡した大きな狼狽を見るようだ”と興奮した.

厳密に言って、外国資本の国内劇場事業投資は既に進行形だ.去る4月、ソウル廣津区 九宣洞にオープンした CGV川辺11 が先例だ.この劇場は、第一製糖が50%, 香港のゴールデンハーベストと豪州のヴィレッジロードショーが各々25%ずつの持分を持っている.

外通部から始まった今夏のスクリーン クォーター論争は、現在、表向きにはかろうじて縫合段階に入っていっているようだ.映画界の反発世論が沸き立つと、文化観光部長官が直接出てきて、“時期尚早”と収拾したおかげだ.

だが、表に出ないが、火種は相変らずパチパチと弾んでいる.映画界では、この間、‘スクリーン クォータ制 死守 汎映画人 非対委(註:非常対策委員会)’を別に結成してあり、政府の処理動向を注視している状態だ.

(黄スジョン記者)