2001年9月NEWS
PEOPLE 487号
[社会] タクシー政策 '失踪' 市民だけが'右往左往' |
![]() タクシー政策が空回りしている. 料金引上げ提議が出てくる度にサービス改善問題も共に提起されるが、いままで変わったことはほとんどないのが実情だ. ソウル市は、9月1日からタクシー基本料金を1300ウォンから1600ウォンに, 模範タクシーは3千ウォンから4千ウォンに、各々上げた.料金が上がる度に国民は、期待と不安をもってタクシーに乗る. だが、変わったことはない.サービス改善は期待することもむずかしい.むしろ、運転手たちの溜息の混ざった愚痴に、人の顔色をうかがいながら乗らなければならない状態だ. 苦しいのは、タクシー運転手も同じだ. 料金が上がっても、むしろ負担になるだけだという主張だ. 8月16日、ソウル市庁では異色的な記者会見が開かれた.ソウル市のタクシー料金引上げ案を置いて、受恵者のタクシー運転手たちが料金引上げに反対して立ったのだ. この日、席を用意した民主労総系列の全国民主タクシー労働組合連盟側は、“ ソウル市のタクシー料金引上げ案は、業界の原価保全要求分だけをそのまま受け入れたものであり、運転手たちの処遇改善や乗客サービス改善にとっての助けにならない”と主張した. これに先んじ、6月、韓国労総系列の全国タクシー労働組合連盟も声明を出して“運転手の処遇や乗客サービス改善に焦点を合せない料金引上げ案を白紙にもどせ”と要求した. タクシー運転手たちの奇妙な(?)要求は、今回が最初ではない.98年2月、基本料金が1,000ウォンから1,300ウォンに上がった時にも、料金引上げ案を撤回しろという要求が激しかった. 彼らの主張は、対国民サービス改善のために上げる料金が、全くその役割を果たせないということだ. ソウル市議会で通過させた、28.24%の引上げ率中の90%が原価補填用として策定され、運転手たちの賃金引上げ分は10%にすぎないという主張があった.この比率をそのまま適用すれば、運転手が会社に収める謝納金は一日に2万ウォン上がるが、賃金は1ケ月に2万ウォン上がるのにとどまり、相乗りや乗車拒否等の不法行為がより増えるはずだと指摘した. それさえも、引上げ案がソウル市物価対策審議委員会を経ながらより削られて、25.28%で最終確定になり、賃金引上げ分は消えた. 料金引上げの度に雑音が上がるタクシー問題は、昨日今日のことではない. 建設交通部も、89年からいままで、タクシー制度改善方案を相次いでだしているが、実効をおさめることができずにいる. 料金引上げの度にサービス問題について騒々しくなったが、また、リスが車を回すような(註:どうどうめぐりの)政策に焦燥した市民だけが損害をこうむっているわけだ. 建設・交通部が悩んだ末に出した政策は、94年立法した後、3年間の準備過程を経て実施したタクシー運送収入金全額管理制であった.タクシー運転手がすべての収入金をタクシー会社に納付するようにした制度だ.日雇い勤労者の水準を抜け出すことができないタクシー運転手たちの処遇を改善して、月給制を定着させて市民に良質のサービスを提供するためであった. 97年9月から、地方自治体別に施行されたこの制度は4年が過ぎたが、制度を誤って運用し、当初の趣旨とは違い、運転手の処遇とサービス改善は全くなされないでいる. 98年2月には制度定着と123万ウォン程度の運転手たちの月給を保障するという名目のもと、料金を23.06%上げた. 既存の経営与件ではこの制度の施行がむずかしいという事業者の要求を受け入れた.だが、変わったことはなかった. 当初、問題は全額管理制を解析するところから始まった. ソウル市運輸事業組合側は、現在ソウル市259タクシー会社中の大部分が、全額管理制を採択していると主張する. 収入金を毎日受納した後、月給を支給しているということだ . これに対して、運転手たちは, 言葉だけが全額管理制だけだと主張する. 毎日収入金を全部受納するが、非公式的に謝納金のような一定額を定めているため、謝納金制とは違わないという主張だ. 謝納金制は、毎日一定額(現在平均7万5千ウォン)を会社に納付して、残りの収入金を運転手がもらう方式だ. ここに、基本賃金75万ウォン程度を合わせたのが運転手の収入だ. 全国民主タクシー労働組合 キム・ソンハン局長は、“全額管理提議の趣旨とは違い、燃料費と修理費負担まで、会社が陰性的に運転手たちに押し付けている程で、謝納金制とはなんら変わらない”としながら、“謝納金だけを上げれば利潤を出すことができるという会社側の認識が変わらない限り、サービス改善は遠くの国の話にすぎない”と指摘した. これに対して、ソウル市タクシー運送事業組合関係者は、“労組で主張する全額管理制は、いくらを稼ぐかには関係なしに一定の月給をくれという完全月給制にしろという意味だ”としながら、“汗を流した分だけ儲けるという勤労動機自体を無視している”と反駁した. 問題は、両側の立場が大きく交錯しているが、まさに交通整理にたたなければならない建設・交通部とソウル市は手をこまねいているということにある. ソウル市によれば、ソウルで全額管理制を施行している業者は、全体259会社中で92.7%である240社.ソウル市は今年上半期にだけ、これを守らない19社を摘発したと明るみにした.ソウル市内の各区役所の報告を集めた統計だ. だが、区役所別にタクシー会社をいちいち尋ね歩いて確認することは現実的に不可能で、電話で制度施行を把握しているのが実情だ.たとえ訪問調査を行っても、実態を把握することは不可能だ. タクシー運送収入金全額管理制施行要領によれば、日程金額の運送収入金基準額をすべて受納したり、注油費や修理費等の車両運行に必要とされる諸般経費を運転手に運送収入金やその他の金銭で充当させることは禁止している . だが、ソウル市ですら基準額策定は不回避だという立場を見せている.ソウル市のある関係者は、“タクシー運転手の勤怠を確認することができる方法が現在はない一日基準額を必要とされる”と明らかにし、制度の弱点を自ら認めた. 彼は“基準額策定は全額管理制とは別途に各労使が合意したことで、労組側の抗議は理解し難い”としながら責任を回避した. 事情がこのようでは、全額管理制という制度の1次被害者は、大多数の運転手たちだ. 料金引上げ分の大部分が基準入金額形態の謝納金引き上げにつながっているので、謝納金だけが上がるためだ. 実際、ソウルSタクシーは、最近料金引上げ分全額を謝納金引き上げに反映した.この会社の一日の謝納金は、9万8千〜11万3千ウォン線.ここで仕事をしているユン・某氏(57)は、“一銭でもより稼ぐために、不法行為と知りながらも、やむを得ず相乗りや,乗車拒否,猛スピードなどをするようになる”としながら、“私たちの会社も、名目上では全額管理制をしている”と、苦笑いを浮かべた.Iタクシー イ・某氏(42)は、“燃料費の一部や、事故兔責金を運転手に押し付ける事が一度や二度ではないが、実体調査や、公務員がこれを摘発したことは一回もない”としながら“告発したくても不利益を受けると思ってできない”とさらけ出した. 運転手たちの劣悪な環境は、社団法人 緑色交通運動が98年末、520人の会社タクシー運転手を対象に実施したアンケート調査でもそのまま現れている.月の総収入が100万ウォン未満という回答が全運転手の70.1%を占めた.応答者の84.6%は、一日に10〜12時間を勤めていると現れた. 運転手たちの被害は、そのまま消費者の市民たちに転嫁されるということに問題の核心がある. 劣悪な環境で運転手たちの離職率が高く、職業安全性や職業意識が落ちることは、どちらかといえば当然だ. 緑色交通運動が最近調べたところによると、現在、会社タクシー運転手中で現職場経歴が1年未満の人が全体の36.04%で最も多かった. 1年は26.47%, 2年11.96%, 3年7.72%で、勤務年数が増えると会社を離れると現れた.一つの会社で6年以上働く運転手は、1.93%に過ぎなかった.職業意識を持った運転手よりは、あちらこちらの会社を転々とするアルバイト式にタクシー運転をする‘渡り鳥’運転手が大部分のようだ.きちんとしたサービスを受けられないのは当然だ. サービスは差し置いて、会社タクシーの劣悪な環境は、市民の安全にも大きな脅威になっている. タクシーの乱暴運転にともなう、高い交通事故率も深刻だ.警察庁の昨年の交通事故統計によれば、99年、韓国全車両の0.8%に過ぎない8万 9千573台の会社タクシーは、その年の全交通事故の8.3%に達する2万2千806件の交通事故を起こした.死亡者も全体の3.1%に達する290人に達した. 発生比率は、全体の10倍を超え、死亡者も4倍に達する数値だ. 今年11月から導入される予定のブランドタクシーも俎上に上がっている. ブランドタクシーは、タクシー会社の申請を受けて、一つのブランドを付けて運営し、サービスを改善するということだ.例えば、‘ソウルタクシー’というブランドの下にいくつかのタクシー会社が集まり、タクシーのデザインや運転手の制服を統一し、コール機能を付けてサービスを強化するという趣旨だ.このためにソウル市はまず5千台ずつを一つにまとめて、1万5千台を3つのブランドでスタートさせる予定だ. だが、ブランドタクシーの成功可能性はまだ未知数だ. サービス改善に先立ち、運転手たちの処遇改善問題が解決しない限り、出発から険しい道を行かざるを得ないためだ. 実際、ブランドタクシーを導入しようという計画は、今回のが初めてではない.ソウル市は昨年4月、タクシー制度改善策の一つとしてブランドタクシー導入を検討した.だが、運営権をめぐってソウル市タクシー諮問委員会と運送事業事業者組合の意見の差で、結局導入が霧散した. 当時、専門家たちで構成されたタクシー諮問委員会は、品質経営とマーケティング強化のために、別途の法人を作るべきだという主張をした.反面、組合側は経営権を強化する話だと、強く反発した. 結局、今年導入される予定のブランドタクシーは、組合側の会社を集めて運営することになった. これに対して、専門家たちはタクシー会社や運転手に対する管理監督を怠ったり、会社経営を改善せずに制度だけを導入しては実効を納めるに難しいと指摘する. 緑色交通運動 ミン・マンギ事務処長は、“既存のタクシー業界に新しい風を起こし、業界自ら変化するように誘導するという次元では望ましいが、タクシー会社自らが現実にだけ安住し、経営改善努力を怠る状況でブランドタクシー導入はまた違う失敗を産むだけ”と忠告した. 彼は続いて、“経営効率性を高めて既存会社に刺激を与えるという側面で、会社の参加と脱退をある程度許す登録制を施行し、タクシーを高級交通手段として引出す政策が必要とされる”としながら、“解決策を政府が握っていながらもできない理由とは、能力の不足、意志の不足、のふたつのうちのひとつ”と釘をさした. 交通開発研究院 イ・ジェリム博士は、“不法タクシー営業に対する法規は用意されているが、一時的な取り締まりに終わり、何らの効果もおさめることができずにいる”としながら、“飲酒運転撲滅のように持続的な取り締まりと管理監督を通じて、不法を行う会社やタクシーすべてを果敢に追い出さなければならない”と指摘した.彼は続いて、“米国ニューヨークでは、ジュリアーニ市長が就任して、強力な取り締まりでニューヨーク交通の慢性的な問題だった、タクシーの乗車拒否問題を解決した先例がある”としながら、“当時25%に達していた乗車拒否率が3年で3%台に落ちた”と紹介した. タクシー政策がまた試験台に上がった. 来年のワールドカップ開催までは1年も残っていない. 事後処方よりは根本原因の治療をしなければならない時だ.対策は誰よりも政府がよく知っている.市民が気楽にタクシーに乗ることができるかどうかは、政府の意志による. キム・ジェチョン記者 patrick@kdaily.com
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