“ずずっ-ずずずっ-”
店に入るとおいしい音が真っさかりだ.
8月31日午前11時40分、ソウル鍾路の鍾路書籍後方にあるクァンチョル洞食いしん坊路地.初めて目に入ったうどん専門店‘ドコモ’には、昼食時間になる前に押し寄せる人々で一杯だった.
48坪規模でかなり広い店内だったが、空のテーブルは探し出せなかった.
季節に似合わないが、あちらこちらで静かに溢れでるうどんをすする音が、8月最後の暑さを色褪せさせた.
99年4月、鍾路で初めてうどん専門店を始めたというこの店は、非需要期のこの頃にもうどんをもとめる人々で食事時には足を踏み入れる場もない.
食堂の片隅では金髪の外国人が不慣れな手つきでうどんを箸ですくおうと余念がなかった.
この店の人気の秘訣は、さわやかなスープの味.魚のだしで作ったスープは、日本・大阪地方のスタイルをそのまま踏襲しているというのが、ホン・スニョン(59)社長の説明だった.
彼は、“うどんを味わうためにこの店を訪れる日本人も少なくない”と、明らかにした.
路地をそのまま上がると、うどん専門店が一つ二つ目についた.
若者達がたくさん集まるこの場所の特性上、昼食時には、ゆったりしていると言える広さながらも、うどん専門店だけはあふれ出る客たちでうれしい悲鳴をあげていた.
日本うどんとドンカス(註:とんかつの韓国での呼び方)を専門とする ‘ナニワ’鍾路店.
室内をすっきりと飾った現代式インテリアが若者達の足を捕まえた.20坪あまりのこの店も混雑することでは同じだ. この店で同僚と昼食を済ませた会社員
カン・某さん(27)は、“量が適当で負担が少なく、すっきりしたスープが気に入って、一週間に3-4回は昼食にうどんを食べます”と話した.大部分が基本メニューのうどんにドンカスとすし, 日本式丼物を出しているこれらの店を訪れる人々は、主に20〜30代の若年層が主を成している. この中の70%以上が女性顧客だ.
うどんが人気を集めながら、ここでは新しい流行が生まれている.既存喫茶店などの店たちがうどん専門店に業種転換をするようになったのだ
.今年6月末、店を開いたうどん専門店‘コメイ’は、元来喫茶店だった.
60坪あまりの広い空間にすっきりしたインテリアで、うどんの客を集めている.カン・ファンボク社長(46)は、“まだ開業初期なので、予想よりはお客さまが多くはないですが、着実に増加しています”と説明した.
現在、この一帯にある大小のうどん専門店は、少なく見積もって、20余に達する. この何年かの間にぐんぐん増えた.クァンチョル洞で飲食店を運営しているイ・某氏(52)は、“最近、うどん旋風が吹いていて、昼食時にはうどん店ばかりが混雑して、一般の飲食店は閑古鳥が鳴いているのが実情”としながら、“うどん専門店として専業しようかどうかを真摯に考慮しています”とさらけ出した.
うどんが全盛時代を迎えている.ソウル・鍾路と江南駅, 明洞, 大学路等、最近人々がたくさん集まる所ならば例外なく目につくのが、うどん専門店だ.
正統日本うどんを標榜している所から、私たちの口に合う韓国式うどん, 健康を強調した機能性うどんに達するまで、種類と名前も千差万別だ.
現在、国内うどん専門店の正確な数は知られていない. だが、業界ではチェーン店形態で運営されるうどん専門店の種類だけでも30余を超えるものと推定している.価格は、大部分が3千500〜8千ウォン水準だ.いろいろな種類の料理が多様に揃えられるという定食は1万ウォンを超える.
‘うどん熱風’が始まったのは、3年前の98年.外国為替危機以後、退職した職場人たちの小資本創業が続きながら、人気業種に浮き上がった.
昨年は、2002年 韓・日ワールドカップ準備熱気と韓国・日本文化交流雰囲気までが重なり、うどん専門店創業は順風に帆をかけたようだった.
現在、国内のうどん専門店の種類は大きく正統日本式うどんと韓国式うどんとに分けることができる. 日本式うどんチェーン店が初めて顔を見せたのは、88年、韓国・日本の合弁会社として門をあけた葛、栄食品がチェーン店として始めるた‘キソヤ’が初めてだ.
‘日本うどんの醍醐味を見せてさしあげます’というスローガンを前面に押し出したキソヤは、ソウルと首都圏を中心に、全国に18のチェーン店を運営しながら、最近のうどん熱風と噛み合って、第2の全盛期を迎えている.91年に門をあけた
‘ キジョアム’も、正統日本うどんを標榜している.日本・鳥取県にある小さな寺から名前を付けたキジョアムは、日本関西風の讃岐うどんを披露している.
厳しいチェーン店資格のため、現在、チェーン店はソウル大学路と明洞, イルサンの3か所にしかないが、多様なメニュー開発で顧客の足を誘惑している. 特に、毎年一度ずつ、チェーン店職員たちが有名レストランと食堂を見学する研修過程を運営して、うどん専門店の水準を押し上げたという評価を受けている.
このような正統日本式うどん専門店の特徴は、正統を標榜しながらも、韓国人の口に合うように少しずつ味を差別化しているという点だ.
甘みが強く濃いスープが特徴の日本うどんとは違い、甘みがないながらもすっきりしている味を生かしている.
正統日本式うどんの味に固執しながら、上客を確保する専門店もある. ソウル・鍾路2街、鐘閣の向い側にある‘ケンジョアン’は、内国人よりは日本人客が主な顧客だ.
社長であり、うどん専門家の ウォン・ヨンミン氏(47)の所信は、‘キムチは
キムチらしくなければならず、うどんはうどんらしくあるべきだ’ということ. 本場のうどんの味を知らるには、日本うどんと全く同じく作るべきだというのが彼の考えだ. 仕事をしていた福岡で、うどん製造秘法を勉強してきた彼は、製造過程も日本の伝統を守っている. 麺を作るのに4時間, うどんスープを熟成させることだけでも15日がかかる、大変な調理過程を必ず守っている. このため、ケンジョアンのうどんの味は、韓国人よりは日本の人々により知られている.客の50%以上が日本人だという程だ.
韓国式うどんチェーン店が初めて登場したのは、82年.潟Tムキフランチャイズが、日本企業と技術提携契約を結んで、韓国うどん・うどん専門チェーンの‘ダリムバン’を募集したのが最初だ.
現在、全国主要都市と高速道路休憩所を中心に、300余のチェーン店を運営している.
85年、‘うどんの全てのものを見せてあげる’というスローガンで‘ダジョンクッス’うどんチェーン店事業を始めた潟_ジョンは、高速道路休憩所と鉄道駅舎を中心に、全国に150余のチェーン店を運営している.
旅行の間食として知られていたうどんが大衆化したのは、85年、大邱で初めて支店の門をあけた‘ジャンうどん’の役割が大きい.そとが広々と見通せる大型ガラス窓に、明るい照明灯の室内装飾をカフェ式にして、若年層を中心に旋風的な人気を集めた.
90年代に入り、韓国式うどん専門店が続々登場しながら、正統日本うどん専門店の人気に対抗した.96年に門をあけた活齠エ食品の‘ハンうどん’は、日本・名古屋から入れたうどんの味を私たちの口に合うように変えて人気を集めている.かつおぶしを使う日本うどんとは違い、しらすと昆布などを主材料としてスープを作る.
室内の雰囲気も、正統日本食店とは違い、現代式に整え、若者たちを攻略している. この会社の関係者は、“チェーン店参加の問い合わせが、一日平均15通以上くる程に人気が高い”としながら、“今年の下半期にはうどん麺にキトサンを添加した新しいうどんを披露する予定”と明らかにした. 97年から‘ヨンうどん’を出している潟ンマウルも、しらすを基本にした辛くてさわやかなスープで誘惑している.現在、全国に120のチェーン店を運営している.
独特のアイデアでスキ間市場を攻略もする.
京畿道
富川で‘メウリ’を運営しているアン・ビョンボク社長は、既存うどん麺には特徴がそれほどないという点に着眼, 野菜うどんを開発した.別名‘八色野菜麺’.小麦粉によもぎと長ねぎ, ニラ, 西洋野菜, ホウレンソウ等、5種類の野菜を入れて機能性を高めた.野菜が入っていて、カロリーが低く、ビタミンと無機質が豊富で、女性にはダイエット料理として最適だというのが、彼の説明だ.一日平均売上げは、120万〜130万ウォン線.彼は、“うどんの本場の日本からも、3-4件の導入問い合わせが入る程で、成功している”と明らかにした.
うどんの人気は大企業も例外ではない.農心とドンウォン,プルムウォン等、大企業もインスタントうどんを出している.
99年7月、国内インスタント麺類市場で、スキ間戦略として市場に発表したドンウォン‘ラうどん’は、月平均売上げ15億ウォンを続けて、会社内部でも成功作としての評価を受けている.
この会社関係者は、“うどんの麺とラーメンスープを混合し、うどんとラーメンを同時に楽しもうという消費者の嗜好性を浮上させたことが合致した”と説明した.
農心も、昨年3月
そば(メミルクッス(註:韓国版日本そば、とでも言うもの))をインスタント化した‘チュンミョン’を出した.揚げていない麺に液体スープとからしを入れて、夏に涼しく食べることが出来るようにした.これに先んじ、99年はに冷凍麺の‘農心カラクうどん’を出したりもした. 農心側は、“季節によって販売量に大きな差があるが、うどん製品の月平均売上額が40億ウォン水準で、全体売上額の4%台を着実に維持している”と明らかにした.
うどん専門店が増えていることには理由がある.他の食べ物を素材とする創業よりも創業費用が安く、特別な技術がなくても容易に店を整えられるためだ.
創業費用は、チェーン店の場合、10坪を基準に加盟費とインテリア費, 厨房機器, 販促広報費などをすべて合わせて、2千万〜4千万ウォンがかかる.すべての食材は100%本社が供給してくれて、半製品の食材をたくさん使うために、調理が簡便だということが長所だ.
独特のうどんの味で勝負をしようという考えがないのなら、本店で運営する調理教育過程で一般的な調理技術は習うことができる.
70%台に達する高いマージン率も魅力として作用している.
たくあんやキムチ等、おかずの種類の数が一般飲食店に比べてはるかに少ないために、材料費用がたいしていらないためだ. これに対して、業界では正しくうどんを作ろうとするなら、マージン率は15〜30%にすぎないと主張している.
うどん専門店の人気が爆発しているが、創業専門家たちは大部分用心深い立場を見せている.
業種の特性上、パイの分捕り合戦式競争が限界に達しているというのが共通的な分析だ
.彼らは、“ある程度安定した収入を保障してくれるということはできるが、無計画につっ走っては狼狽をさせられるのがおち”と忠告する.
ソウル・鍾路にあるAうどん専門店は、何年か前、うどん店創業風が吹きながらチェーン店を募集したが、正しく管理できなくて、チェーン店事業をたたんだ.結局、このチェーンに加入した店主たちも、一つ二つ事業をあきらめている実情だ.
韓国創業開発研究員
ユ・ジェス院長(45)は、“現在、ソウルと首都圏のA級商圏は、うどん専門店はほとんど飽和状態”としながら、“うどん専門店の増加が停滞状態に入っていったため、うどん専門店の創業はもう一度考え直した方が良い”と指摘した.
実際、ソウルでA級商圏と呼ばれるソウル・鐘路 クァンチョル洞
うどん専門店の場合、権利金だけで3億〜6億ウォンにも達する.それほどA級商圏進入はむずかしいという話だ. 彼は、“小資本外食創業の特徴は、進入障壁がそれほどないという点だが、それだけ競争者が多くなるという点を看過してはならない”としながら、“実際、チェーン店として運営されるうどん専門店の1ケ月の売上げを調査してみれば、200万〜300万ウォンも儲けるのが難しい場合も少なくない”と明らかにした.
韓国事業開発研究員 イ・ヒョンソク院長は、“うどん専門店のように、外食創業が人気
を集めるということは、それだけ景気がよくないという証拠”と説明した. 経済が安定すれば、既存になかった異色業種の創業が人気を享受するが、経済が不安定になれば、安全性を最も優先して置くために、伝統的な食べ物の創業になるのだという説明だ.
彼は、“最近、小規模飲食店創業相談をしにくる人々の70〜80%は40代”と、最近の雰囲気を伝えた. 彼は、うどん専門店等、小規模飲食店を創業しようという40代たちの大部分は、大きな結果を期待するのは難しいと強調する.大部分が退職金を投資するので、‘石橋もたたいてみてから渡る’心情で用心しなければならないのが現実だ.可能性があるかと、時間をおいて見回している途中で創業をしても、既に盛りが過ぎた流行に遅れて乗った境遇になるという説明だ.彼は、“うまくいくといううわさが起こり始めたら、もう既に遅い場合が多い”と付け加えた.
キム・ジェチョン記者[patrick@kdaily.com]
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