“本当にたいへんなものなのです.真の才能をさがそうとするなら、なんとか地方にまでも来て、オーディションをしなければならないのではないでしょうか.地方に来ることができないならば、私が踊る姿を撮ったビデオを送りたいのですが….お願いですから、私のダンスの実力を見てください.”
“歌手を夢見ている13歳の少女です.歌はあまりうまくないけれど、ダンスは上手です.パク・ジユンのダンスを全て習得して、最近ではオム・ジョンファのクロスを学んでいます.お願いですから、公開オーディションをもう一度だけ開いてください”
“率直に言うと、歌手を夢見る子供たちの中には、歌よりもダンスをはるかにうまくやる子供達が多いです.ところが、何故、スルギ(註:人名)だけ認められて、ぼくらはだめなのでしょうか.”
SBSのショープログラム‘超特急 日曜日 万歳’のホームページ掲示板は、最近ダンス歌手を志望するティーンエージャーによって完全に占領された状態だ.
歌手
パク・チニョン氏と共に、ダンスと歌に素質がある‘英才’を発掘し、歌手に育てるという趣旨で始まったこの番組は、さる1日、10〜15才の子供たちを相手に公開オーディションを開いた.
当初の計画は、昨年からダンスの動映像がインターネットに飛び交い始め、インターネット最高のスターになったク・スルギちゃん(10)を歌手に育てようということだったが、多くの‘子供ダンサー’たちが“私たちにもチャンスをください”と哀願したことによって公開オーディションを開くことになった.
行事場には、何と3千500余名が集まった.オーディションが終わって2週間が過ぎたが、予め参加できなかった子供たちと予選で落ちた子供たちが中心になって、ホームページにまたオーディションを開けという文を上げているのだ.
掲示板で行われる論議沸騰の核心は‘ダンス’だ.
地方のティーンエージャーは、自分たちのダンス実力を発揮する機会を剥奪されたと騒いで、予選脱落したティーンエージャーは“
何故自分よりもダンスのへたなを子供が合格したのか”と正す.スルギちゃんに対する評価は、神経戦にまで広がり、‘アンチ
ク・スルギ’運動が行われているのが実情だ.
‘ダンスをうまく踊れば歌手になれる’ということが常識になった状況で、‘歌手になろうという子供たちが、何故ダンスにはまり込むのか?’という質問は愚問であるだけだ.
青少年がダンスに傾倒する現象は、昨日今日のことではない.
しかし、今見られるような‘ダンス旋風’は、幼い時期、ほんの一時病む熱病として片付けることのできないほど多くの青少年たちの‘全てのもの’になった.
韓国青少年開発院が、最近ソウル市内の中・高等学生698人を対象に、将来の希望職業に対してアンケート調査した結果、芸能人になりたいというのが、全応答者の
8
.8%で、コンピュータプログラマーに続いて2位を占めた.労働部傘下の中央雇用情報管理所が実施した中・高生の希望職業調査でも、芸能人は堂々3位を占めていた.
たとえ、芸能人の種類が多様だとしても、多くの青少年たちの関心は、‘ダンス歌手’に合わされていて、追従や選好を超えて、自らダンス歌手になってやろうという子供達が四方にあふれ出ている.
全社会的な‘ダンス旋風’に乗って、雨後の筍のように生まれたダンス学院なども、各々‘放送ダンス’,‘B-boying’,‘バックダンサーダンス’などの講座を開設して、青少年たちを引きつけている.本格的な夏休みが始まったこの頃が、ダンス学院としては最大の掻き入れ時どきというわけだ.
ソウル・大学路にあるダンス学院‘ヒップホップスクール’の
ジュ・ヤンサン院長は、“多くの子供たちがダンスを芸能界進入の必須関門だと思っています”としながら、“
小学生の場合は、大部分が子供たちの素質を確認してみようという父母たちによって引きずられてくる”と話した.
大学 演劇映画課を志望する受講生 パク・ヒョンソンさん(18)は、ダンス学院に通う理由を、このように説明した.
“いくつかの大学の演劇映画科進学には、ダンスの実力も重要な考量対象になります.ダンスを通じた進学が最も大きい目標ですが、‘社交の道具’になることも無視出来ません.
最近の子供たちは‘音痴’より‘リズム音痴’の言葉の方をずっと恥辱だと考えます.友人たちからの‘いじめ’に遭わないためにも学院にやってくる子供も多いのですよ.”
だぶだぶのTシャツ, お尻にひっかかっているズボン, キャップと白い‘スニーカー’を基本とする路上のダンサーたちは、大学路,
大型ショッピングモールなどが主要ステージだ.
大学路は主にチーム間でひと勝負の対決を繰広げる舞台になっていて、ショッピングモールのイベント行事場所はファンを確保・管理して、自分たちの存在を知らせる重要な場だ.
特に、ソウル南大門のMESA,
東大門のミリオレと斗山タワーのステージは、ストリートダンサーたちの‘メッカ’だ.若年層の顧客を引きずり込むにはダンスよりも良いイベントは無いのだと確信する商店街側と、常に華麗な舞台を夢見るアマチュアダンサー達の利害の計算が合致したのである.
ミリオレ イベント担当
イム・ミジョン氏は、“20余ものダンスチームと契約を結んでいる”から、“一日に2〜3チームが舞台に立つためのテストを受けようと私たちの事務所を訪れている”と話した.踊って貰う代価は、食券がわずかだが、舞台に立つことを喉が渇くように待ち望んでいたダンサーたちにとっては、それより大きい代価は必要ない.
ティーンエージャーが最も熱狂するダンスは、断然 B-boying’.1970年代末、米・ニューヨークのブロンクスで始まったブレイクダンスの一種で、韓国には80年代末に入って、90年代序盤に‘ソテジワアイドゥル’の突風以後、ヒップホップ文化の代表的な形態としての位置を占めた.
B-boyingは、ラップをする行為を称するMC-ing, MCに音楽を提供するDJ-ing,
塀にスプレーで絵を描くグラフィティとともに、ヒップホップの4大要素として選ばれる. 足の動きと回転動作,
逆立ちから起き上がるなどのリズムを重視する動作としてなされ、しばしば言われる‘B-boy’とは、こういう種類のダンスを踊るダンサーを称する.
‘B-boy’たちがどれほど多いかは計り知れない.最近、大抵の中・高等学校にはサークル形式のダンスチームがあって、区役所や教会が支援するチームも多い.
ダンサーたちを眺める既成世代の視線は、相変らずきれいではない.
あるおとなたちは、彼らを“蛾のような
n世代”とし、“華麗なスターを渇望するあまり、結局は壁にぶちあたって麻薬やシンナーに手をつけて、社会の敗北者になる”と心配する.
文化現象を分析することを好む専門家たちは、“現在の‘ヒップホップ文化’では、長髪とジーンズが代弁していた‘ヒッピー文化’の抵抗性を見ることができなく,
取りあえず、若者達の消費を狙う商業大衆文化であり、青少年は消費文化の奴隷になっている ”と評価することも.
青少年たちの非正常的な芸能人崇拝風潮,
過熱したダンス熱風をみる時、このような指摘は極めて当然だ.しかし、問題は、既成世代の定規があるだけで、彼らの声がないということだ.
12日夕方、‘ダンスに狂った’子供たちの声を聞くために、ソウル江西区青少年会館を訪れた.
江西区庁は、区で最も優れたアマチュアダンスチームである‘ジェンナー レーション’のために、夜遅くまで舞踊室を提供してくれている.
中・高生11人で構成された‘ジェネレーション’は、さる7日、京仁放送(iTV)が主催した‘ダンス ダンス
大激突’で優勝したチームで、2連覇に挑戦するために、最近猛練習をしている.
チームリーダーであり、末兄のイ・インウ君(18)から末っ子
キム・ヒョンシク君(15)まで、メンバーたちがすべて集まるのには2時間以上がかかった.学校の授業が終わる時間が各々であるうえ、富川,恩坪区,西大門区
等、出発地点が皆違うためだ.
ダンスをやるために、彼らは1時間を超える道を厭わずに、毎日こちらに集まるのだ.
“ダンスが何故好きなのかというのは、何故生きているのかというのと同じです.
日曜日になれば、ボールを蹴るためにグランドに集まるサッカーサークルのおじさんたちと似ているでしょうか.”
インウ君はどのように説明していいのかと首をかしげた.
準備運動を終えて、本格的なダンス練習に入っていった.ある友人は床に頭をつけて廻る‘ヘッドスピン’を集中的に試みるかと思えば、他の友人は一本の手で逆立ちして空中回転をする‘エアートラック’に没頭した.練習時間の終始、彼らはチーム全体の呼吸を合わせる訓練よりは、各自の動作にだけ気を遣うようだった.
ブレイクダンスに入門して3年になるイ・ミョンスン君(17)の説明が意味深長だった.
“ダンス自体が創造なんです.各自の個性が充分に表現されてこそ、全体的に調和した作品が完成されます.私たちメンバーは、皆、自分だけの特技があります.先輩だからといって、後輩に自分の動作をまねしろとは一方的に教えません.”
ダンスにまけないくらい、生活方式もそれぞれだ.
Y高校2年のキム・ジョンファン君(17)は、学校では‘ジャン’で通じる.誰も彼に文句をつけず、喧嘩などはしない
.C中学校3年のキム・テギュン君(16)は簡単には一等から落ちない‘優等生’だ.ジョン・ファニの夢は、平凡な‘サラリーマン’で、ダンスはひたすら趣味であるだけだ.
そして、ナ・テギュンはプロダンサーになることが夢だ.
テギュンは“ダンスに熱中すればするほど、成績が落ちるけれど、その代わりに自分の夢に近くなるようで気分が良い”と話した.
それほどまでに違う二人をしっかりと結びつけたのは取りあえずダンスだった.
大部分のメンバーは、父母たちの支持を背に負って踊るが、末っ子のヒョンシクは事情が違う.母親が練習場にくる交通費まで統制する程で、ダンスを頑強に反対する.
“両親は、後で何になるつもりでダンスばかりするのかと言うのですが、ぼくはプロB-boyになりたいのです.両親が何を心配しているかは知っているけど、ぼくがしたいことをすることこそ、幸福になることではありませんか.”
彼らが大人に望むことは、たったひとつ. 自分たちをそのまま見てくれということだ.
インウは、“おとなは無条件にぼくたちを、追い込まれて酒やタバコをする不良の子供たちのように見る”としながら不満を炸裂させた.
彼らの真面目な姿勢は、青少年会館管理人が保証した.
“はじめは半信半疑だったけれど、あまりにも生活がきちんとしています.練習が終わると、清掃をきれいにしてから家に帰りますよ.すべての青少年たちがこの子供たちのようなら心配ありませんよ.”
‘B-boy’たちは、むしろ自分たちを利用しようというおとなを警戒した.
公演を頼む時はお金をくれると言いながら、公演が終わると、とぼけられるという‘詐欺’を数えきれない程経験させられたためだ.
“ダンスを利用してお金を儲けるつもりはありません.しかし、学校に早退を許可してくれという公文まで送った程だというのに、約束を破られたら、ぼくらは一体どうすればいいのですか.”
ジョン・ジュヨン君(17)が不満をならべると、汗をぐっしょり流して練習をしていたイ・ジェフン君(17)は、“韓国のおとなたちがみんなそういうわけじゃないさ”こう、正面から受けた.
イ・チャング記者 window2@kdaily.com
Copyright (c)1995-2001, 大韓毎日新報社 All rights reserved.
E-Mail: webmaster@seoul.co.kr
|