“この頃は、全羅道なまりを使うタクシーのお客さんはいませんよ”
“最近、ソウルで全羅道なまりを使う人を見ましたか? 金大中政権初期にはどれほど多かったでしょうか?”
ソウルでタクシー運転手をして28年目のキム・某氏(62 ソウル 千戸洞)の話は、示唆するところが少なくない.
時々、官公署周辺から‘コール’を受けて行くと、客の語り口がむかしより明確に変わったというのが、キム氏の説明だ.
“ヴィジョンがないですよ.社会全体が大きなトンネルの中に閉じ込められていているようです.庶民はIMF以前より、もっと難しく暮らしているんじゃないですか?”
第3共和国の時からタクシー運転手をしてきたという パク・某氏(54 ソウル 長安洞)の声はより一層高まる. 全南・麗水が故郷だという彼は、“最近のお客さんの中には、第3共和国の時の話をする人が多いですよ.あの頃は、もっとよく暮らそうというのが国民的意志でもあったのに…”
しかし、最近の客たちは虚脱感に陥ったかのようだと話す. 彼はまた、自身は湖南出身だが、湖南出身の大統領が一度出たということで満足するばかりで、これ以上は大統領に期待することがないと舌打ちする.
タクシーは別名‘走る世相サロン’だ. タクシー運転手たちは世の中の様子を最もよく知る職業人でもある.
タクシー運転手は、一日平均60人程度の乗客を乗せる.ソウル市だけでも‘違法タクシー’を除外した5万5千余台が、一日220万名の乗客を乗せている.全国的には、23万余台のタクシーが一日に600万名程度に達する乗客と対話をするわけだ.世論形成に大きな役割をする彼らの不満は並大抵ではない.
湖南出身ドライバーたちの批判も荒々しい肘鉄を一杯食わす.
“医療保険もそうです. 医師にリベートをあげなければ、薬を出さないではないですか.
庶民だけが、この中で三重にひどい目に合う状況なんですよ.
また、それのみか.LPGの値段を安くしてくれるからと言うのでLPG車を買ったのに、結局、税金ばかりがどんどん上がりました.”
5年目の営業用タクシー運転手をしているパク・某氏(43 ソウル 安岩洞)は、交代の時間に会社の友人たちと会っても良い話は一つも出てこないとし、“社会が何故このようになったのかわからない”と話す.
“金大中政権になって、きちんとできるということになっていたのに....
改革もうやむやで.構造調整によって庶民たちだけが路頭に追い出されて,それだけでなく.不正腐敗した政治家や金持ちの人々は、どうしても次々と出てきます.
さる98年初め、突然失職者になった後、退職金で個人タクシー‘許可権’を買って、妻子五人家族を養っているというキム・某氏(47 ソウル 九老洞)は、“金大中大統領のせいにはできませんよ.やる時はちゃんとやっている…”と、言葉尻を濁す.
“ゴルフですか,良いじゃないですか.ところで、賭けだとか、何千万ウォンのゴルフクラブだとか,これは何なんでしょうね.
上の方の人たちは体面を気にするんでしょうかね? ゴルフクラブでねえ….”
タクシー経歴が30年近くなった半白頭の老人 チョン・某氏(71 ソウル 面牧洞)が吐きだす話は猟奇的でさえある.チョン氏自身は愛煙家だといいながら、次の通り辛辣に皮肉った.
“タバコの値段を引上げながら,その上、国民の健康のために禁煙区域を拡大するだって? 国がいつから国民健康を考えていたって言うんだ.
経済も正しくつかめないくせに….”
このように、この1週間タクシーに乗りながらながめた‘走る民心’は、一様に地べたの水準だった.
タクシー運転手たちの話を総合してみると、"経済不況" "失業者100万名時代" "床に落としたカメに水を注ぐ式の公的資金" "特定地域偏重人事" "検察の無気力" "医療保険失策" などを主要‘ネタ’としていた.
特に、彼らは、江北と江南にはその不満の方向に若干ずつ差があるとし、特にミョンモク洞 ドクサン洞
サンゲ洞一帯の客に会えば、ほとんど猟期的な悪口をたたくと伝えている.
サンゲ洞で営業用タクシー運転手をしているというオ・某氏(32)は、“ともすると、私のような若造がタクシー運転をするのですが”と、歴代大統領を遠回しに言ったジョークを聞かせてくれた.
“朴正煕 前大統領は‘模範運転手’,全斗換 前大統領は‘乱暴運転手’,盧泰愚前大統領は‘初歩運転手’,金泳三 前大統領は‘無免許運転手’,金大中 大統領は‘飲酒運転手’ではありませんか?”
キム・ムンギ記者
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