土曜日には地下鉄へ行こう.
チケットを予約する必要もない. 柔らかくお尻に敷くシート一枚あれば充分だ.
土曜日の午後1時から5時まで、ソウル市内の地下鉄は公演場になる.駅舎はもちろん、時には列車で音楽を楽しむことができる.
地下空間でも小さな隙間があれば、どこでも公演は開く.運が良ければ、地下鉄で映画のハイライトを見ることもできる.また、‘国民俳優’アン・ソンギの案内放送を聞くことができる.
最近、地下鉄の風俗図のひとつは、時間を合せて‘ドリームメトロ’や‘シネトレイン2001’等の列車に乗るために待つ若者達が増加しているということだ.
また、テーマ列車に乗った人々は、席を求めて争うより、むしろ、先頭車両から最後尾の車両まで歩いて、文化的香りをたっぷりと楽しむ.
そのように歩く人同士がぶつかっても、“あ、大丈夫ですか?”と、視線を交わすのも、以前とは異なる地下鉄風景だ.
最近になって、文化団体は経済的困難を経験しているが、地下鉄は文化がぱっと花開いている.初めから損益計算が必要ない無料公演で、市民奉仕であるから、経済的状況とは関係がない.
地下鉄で公演をする若い芸術家たちは、自分たちがソウル地下鉄文化を作っていくという自負心がたいしたものだ.
もちろん、地下鉄は若年層だけの専有物ではない. 4号線 ヘファ(恵化)駅で公演を持つおじいさんバンドは最高の人気スターだ.
おじいさんたちが現れると、‘お兄さん部隊(註:『お兄さ-ん(オッパ-)』と叫ぶことからそう呼ばれる熱烈女性ファン)’が必ず出てくる.
こういう人気を土台に、楽劇‘親父の青春’に出演したり、TV出演も頻繁だ.
地下鉄公演が私達の社会に新しいトレンドとして位置を占めたのは、2000年だ.
既に地下鉄は単純な運送手段ではない. 文化的余裕を与える所だ.
ある人は、“地下鉄駅舎には雨が降らなくて乾いている.
しかし、地下鉄公演が、心をしっとりとぬらしてくれる”と、地下鉄公演を喜ぶ.特に、ソウル地下鉄の二大運営機関である地下鉄公社と都市鉄道公社が競争的に文化芸術列車を運行, この未知の改善競争にたちながら地下鉄の文化的力は日々増加している.
地下鉄公演はジャンルを選ばない.ジャズダンスと ヒップホップ, バレエ, 国楽とクラシック,
大衆歌謡とアマチュアオーケストラ演奏があり、あやつり人形公演とマイム等、なんであれ見せたい器用な人には、完全に開いている舞台だ.
‘草の根 文化芸術公演’の象徴の、地下鉄公演では観客も自由だ.
時間に間に合わずに小さくなりながら席を探さなくてもよく、いつでも公演の席を立ってもかまわない.座ったり立ったり, あるいは前の人の頭越しに公演を見る人々もある.
地下鉄公演は、どんな公演よりも観客動員では最高の数値を記録している. 7号線 完全開通を祝って、昨年8月から走った‘都市鉄道 文化芸術館’は、3ケ月間400回運行された.何と、55万名が観覧した.
インターネットサイトへの接続数も、5万8千件を超えて人気を証明した.5号線には、年末年始を迎えてサンタ列車が運行され、父母と子供たちの良いお出かけの場になった.
また、‘都市鉄道デジタル旅行’は、6号線の電車内部が、海と林, 陽が昇って沈む姿を見せるという試みで, 動映像先端テクノロジーとしてのデジタル媒体と美術の姿を見せた.一般人に現代美術を容易に接することができる契機を用意することもした.
最近、最も話題になったことは、さる3月13日に開通し、9月9日まで7号線で運行している芸術列車, ドリームメトロだ.
多国籍企業 ユニレバー社からの協賛を受けて、8名の若い女性作家に列車を預けて地下鉄広告マーケティングとしての成果を見せたこのイベントは、地下鉄文化と企業との連係という新しい試みであった.
企画社 フレニ・コムのジョン・ムンヨン部長は、ドリームメトロの成果が良いとし、“今後、企業と文化芸術列車の連係が増える”と話した.
また、4月6日から開通した‘シネトレイン2001’は、3号線10輌の列車をアクションとメロ, ドラマとSF, コメデイ等、それぞれ異なる映画空間として企画した.30編あまりの映画のハイライトを3分に絞って編集して上映し, 俳優たちの声で到着駅の案内放送まで聞かせてくれる.
この列車は、平日10回, 週末には12回ずつ運行するのだが、列車の運行時刻の問い合わせ電話が殺到している.
映画俳優 ジョ・ヨンウォン氏(ウォンエンウォン ピクチャーズ代表)が企画を担当した.“私たちの土壌は瘠薄です.自国の映画が存立しようとするなら、1年に1億名以上の観覧客がなければならないのですが、私たちの実情は道が遠いのです.何より、大衆が近くで映画を楽しむことができる文化空間が切実に求められます.”彼は、地下鉄文化空間実験の成功は市民の声援にかかっていると話した.
“芸術を共有することは楽しみであり、私達の社会が市民社会, 開かれた社会へ向かうのに重要なポイントだと考えます.さらに、無料舞台である地下鉄舞台こそは、平等と安らかさの最大値”と、演劇評論家 アン・チウン氏は、地下鉄公演の意味を明らかにした.
今後、ソウルの地下鉄は、イベント性文化芸術列車を全路線に拡大する予定だ.
しかし、地下鉄の文化行事が過度に前衛的, 実験的だという非難もある.赤や青の室内照明に、むしろ老人や子供達が驚いたり、通路の中ほどに置かれたテーブルの角が乗客に不便さを加重させるためだ.そして、地下鉄文化芸術は、地下鉄の特殊性を生かさなければならないという指摘も、文化芸術人の間で議論になっている.
最近、地下鉄公演をする芸術家を呼ぶ ‘メトロアーティスト’という新造語も作られたように、地下鉄文化は変わってきている.
ホ・ナムジュ記者[yukyung@kdaily.com]
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