日本の歴史教科書波紋は、単純に教科書検定や歴史技術上のエラーから醸し出しされた問題ではない. 韓国と中国等の周辺国と日本内の良心的知識人が、今回の事態にそのように敏感に反応する理由は他のところにある. 21世紀‘日本号’がどこに向かっているのかという、輪郭を見ることができる.
日本で歪曲歴史教科書不採択運動を始めた‘子供と教科書全国ネット21’の俵 義文事務局長は、歪曲教科書を作り出した張本人である‘新しい歴史教科書を 作る会’をこのように話す.
“彼らは、戦争と侵略が誤っていたことではなく、過去の日本の行為に対して、日本は謝罪する必要がないと教えようとしています.こういう、彼らの窮極的な目的は、また日本を戦争が可能な国に作ろうということにあるのです.”
日本の知識人たちが憂慮することは、19世紀末と20世紀初頭に日本を狂奔の渦に追い詰めた、そのような国粋主義の雰囲気, 少数の極右保守主義者たちが支配する、そのような日本が再現にならないかという点だ.
最近、日本の保守右傾化の流れを見る時、歴史歪曲教科書の登場は、日本社会で極右勢力が力を得ていく橋頭堡を用意した象徴的な事件として見える.
今の政治勢力と政府, 日本社会が過去の植民地支配と戦争が誤ちではないという、誤った歴史認識を容認したわけだ.
こういう変化は、日本との不幸な歴史経験を持っている韓国・中国には不快感を跳び越える、重大な威嚇の信号に違いない.
1945年、第2次大戦敗戦後、戦勝国の米国によって手足をがんじがらめに縛られた日本のそれからの55年間は、彼らの手足に縛られた鎖を緻密に休むことなく少しずつ解いてきた時間だとも表現できる.
米軍政下で日本の武装と侵略戦争を禁止した‘平和憲法’(47年施行)を改正しなければならないという声は、米軍政が日本列島を離れた直後から炸裂して出てきた.
自民党は政治綱領(政綱)に、憲法の改正を明示している.このような自民党が、90年代に社会党政権が少しの間入った時を除いて、50年近く長期執権した点は驚くことではない.
自民党保守勢力を中心にした改憲派は、絶えず憲法改正を試みてきたが、日本の良心勢力, 社会・共産党, 国際社会の監視等で、彼らの試みはいつも壁に当面してきた.
そうこうしたあと、あげくの果てに、昨年、衆院・参院に憲法改正を扱う憲法調査会が設置された.自民党の改憲政治綱領採択45年ぶりに、改憲論議が本格化したのだ.この調査会が、5年間、改憲に関する世論を収集して、日本国会は2008年頃に改憲に着手するという腹案を持っている.
改憲の核心は、日本の交戦権を否認した9条の修正にある.現在、国家統合の象徴とされている天皇陛下を国家元首に格上げする問題も、改憲のもう一つの核心だ.
すると、歴史歪曲を主導している新しい歴史教科書を作る会と、これら改憲派,保守勢力は、どんな相関性があるだろうか.
93年10月、自民党105名の議員が参加した‘歴史検討委員会’が結成された.この委員会は、その年の夏に就任した細川護煕 当時総理の侵略戦争認定発言に反発して急造された.森喜朗 総理も、この委員会出身だ.
検討委員会は、95年2月までに20余回、侵略戦争を美化する右派知識人たちに講演をさせ、その内容を‘大東亜戦争の総括’という本として整理して出刊した
.この本は、日本の過去の戦争がアジア解放戦争であって、侵略ではなく、従軍慰安婦, 南京大虐殺 等の戦争犯罪は完全にねつ造されたもの、という内容を含んでいる.
こういう流れを受け継いで、新しい歴史教科書を作る会が世の中に出たのは、96年6月. 自民党 右派議員たちで構成された‘明るい日本国会議員連盟’ 所属 奥野誠亮 前法務大臣の“従軍慰安婦は商行為であった”という妄言が信号弾となった.
97年1月、西尾幹二 電気通信大教授と藤岡信勝 東京大学教授, 漫画家 小林よしのり などを中心に、新しい歴史教科書を作る会が結成された.彼らは、歴史検討委員会の‘大東亜戦争の総括’を、彼らの歴史認識の定規とした.
新しい歴史教科書を作る会は、知られたとおり、日本極右陣営の最先鋒であり、‘理論の産室’だ.会長を受け持っている西尾教授 等は、学界を通じ, 漫画家 小林という大衆的人気を土台として、日本社会の底辺に彼らの歪曲された歴史認識を繰り広げている.産経新聞は宣伝部隊の役割をしている.
彼らは、政界の右派勢力と命脈を共にしている.彼らと肩を並べている政治圏組織としては、改憲を目標としている‘日本会議’がある.日本会議と新しい歴史教科書を作る会の48全国支部は、構成員がほとんど似ている.
皇国史観を掲げている‘自由主義史観研究会’と、右翼団体の‘ 日本青年協議会’,‘日本教育研究所’などの会員が新しい歴史教科書を作る会にも行き来している等、これら右翼勢力の連帯は縦横に絡まっている.
政界では自民党‘明るい日本国会議員連盟’や‘日本の将来と歴史教育を考える若い議員の集い’,日本会議国会議員懇談会’などが、後方支援を惜しまないでいる.平沼赳夫, 江藤議員などが核心人物だ.
昨年、衆議院選挙で新しい歴史教科書を作る会の支部長7人が、国会議員に当選したように、政界で右翼勢力の根は太くて深い.
それだけではない.富士通, キャノン, 東芝 等、大企業の経営陣の多数が新しい歴史教科書を作る会の会員であると知られている.PHP研究所, 三菱総合研究所, 松下政経塾 等、日本の有名研究所の関係者の相当数も、新しい歴史教科書を作る会と有形無形の関係を結んでいる.
日本の保守・右傾化は、周辺国の憂慮を買っている.より一層気にかかる点は、こういう保守・右傾化が軍事大国化と共に進行しているという点だ.
平和憲法は、武装と交戦権を否認する.しかし、日本は事実上‘解釈改憲’(憲法条文に対する政府解釈の幅を広げること)を通じて、銃も撃ち、海外派兵もしている.
92年、国連の平和維持活動(PKO)派兵を始め、既に90年代に入り世界最高級の軍事力を保有するようになった.軍事費支出だけを見ても、経済力に似合うように、米国に続く世界2位(98年基準370億ドル)だ.
空中給油機導入, 諜報衛星開発, 全域ミサイル防衛方(TMD)構想 等、21世紀型軍備増強にも熱を上げている.
99年6月、日本政府は日の丸を国旗とし, 君が代を国歌とする法案を閣議通過させて、学校現場で推奨する等、第2次大戦勃発前後を連想させるような国民統合を強調している.
いろいろな現象を見る時、日本の歴史歪曲は、単に恥ずかしい過去を隠して捏造したり美化する次元ではないことと見える.
侵略と戦争を正当化して書き、これを未来に実現するための歴史的・理論的土台を用意しようということではないのかという疑問を呼びおこす.
このような点で、韓国や中国のような周辺国は緊張するしかない.‘大東亜共栄’をあきらめないでいる極右勢力が日本の深層部に布陣していて、歴史歪曲は‘華麗だった大日本帝国への回帰’のためのことだという点は、被害当事者たちが誰よりもよく知っているためだ.
ファン・ソンギ 統一チーム記者 marry01@kdaily.com
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