
胎教はモーツァルトに任せなさい?
さる98年以後、モーツァルトの音楽を聴けば天才を産むという俗説は、‘モーツァルトを聴くことが、最も確実な胎教法’という定説としての位置を占めた.モーツァルトを聴かない妊産婦は‘お母さんになる資格がない人’などと考えられる程だった.クラシックを楽しまない妊産婦にとっては、モーツァルトはちょっとうんざりすることもあるはずだが、まだ‘モーツァルト流行’は縮まないでいる.国内でさる30年間に売れたモーツァルトのレコードより、98年と99年の2年間で売れたレコードのほうがより多いというレコード業界の噂話がこれを後押しする.
今生れた子供の頭のなかでモーツァルトの音楽を再生するために、モーツァルトのCDやテープを購入する父母ばかりだったのだが、さらに最近では、モーツァルトだけでなく、クラシック音楽が肥満はもちろん、ストレスまで解消する、副作用のない‘最後の秘法’とされている.
音楽の効果については、これ以上話す必要もない.音楽を聴いて、感動と喜悦,
悲しみのような情緒的反応を表すのは、誰にでも一回くらいはあることで、毎日聴くことで頭痛と睡眠障害,胃腸疾患の治療にも音楽はすぐに部分的効果を見せた.その他、牛や豚,
植物の成長にも音楽が良い効果を与えるということは、色々な面で立証されている.
もちろん、音楽の効果は、4千年前のエジプトで音楽家がまさに祭司長だった時期,
音楽は病気を直す確実な処方として認められていたり、不妊女性には音楽を聴かせてあげれば妊娠できるという信頼を持つ程に、当時‘霊魂の薬’というのが音楽のもうひとつの名前だったほどに、音楽の治療効果は認定されていた.
このように、歴史的にも認められた音楽の効果や魔力だけは無視出来ず、‘
音楽を聴いて悪いはずがあるだろうか?’と考える程度ならば問題になるはずはない.ところが、問題は、音楽治療が社会のあちらこちらで話題を呼びおこしながら、インターネットにも音楽治療に関する情報があふれ出ていて、音楽治療を担当する音楽治療者を養成する機関も雨後の筍のように増加している.音楽鑑賞室のように暗い照明をつけてモーツァルトのCDが何枚もあって精神科治療をするのだと宣伝をする所もあるのが現実だ.
それでは、モーツァルトを盲信することが正しいかという問題に対して、懐疑的な見解を明らかにする人も少なくない.
教育学者
キム・ジェウン博士は“クラシック音楽の効果は教育的次元で肯定的に評価されてきたが、音楽を楽しまない人にとって‘騷音’である時には、むしろ身体エネルギーを低下させる”としながら、これを米国の精神科医師ジョン・ダイアモンドの研究を土台に説明する.
さる97年、米国の精神科専門医
ジョン・ダイアモンド博士チームは、青少年2
グループに一定期間クラシック音楽とロックを各々聞かせた結果、ロック音楽を聴いたグループでは筋肉弱化,
無気力,意欲喪失, 学習能率低下,
成績低下の結果が現れたという結果を発表した.そして、ロック音楽を聴いたグループにクラシック音楽を聴かせると、こういう問題が解消し始めたという実験結果で、キム教授はサウンドシステムによる大きな演奏音は人体機能を歪曲する恐れがあるし、音楽の種類はもちろん、状況も重要であると指摘する.
妊産婦教育専門家
ジャン・ウンジュ氏は、“モーツァルトやバッハ等、クラシックのカタログをたくさん持ってきて、最も良い胎教音楽を選んでくれという妊産婦も多い”としながら、“モーツァルトよりは、むしろ、ママとパパが聞かせてあげる低い声の方がより良い胎教音楽”と妊産婦たちに説明する.
世界胎教学会理事の産婦人科専門医
キム・チャンギュ博士は、モーツァルトの音楽聞くことを積極的に止めなければならないと主張する.
“クラシックを好きでもないのに子供のIQのために無理に聞いても、IQが高まるわけもないばかりでなく、私達の社会の盲点の中のひとつがまさに画一的な教育なのに、胎教から画一的にモーツァルトの音楽を聞けば、胎教としてはもちろん、30年後の韓国の発展にもやはり
懐疑的にならざるを得ない”と話す.彼も自身が好む音楽を聴いて楽しむならば、モーツァルトではないにせよ、関係ないはずだと指摘する.
ところが、さる8月6日付ニューヨーク
タイムズは、アメリカ国内学者たちのあいだのモーツァルトエフェクトに関する熾烈な論争を紹介した.
この記事は、‘モーツァルト
エフェクト’とは、クラシック音楽が脳を刺激して、その機能を向上させるという理論で、これはさる93年,
ゴードン・ショウとフランシス・ラウソが大学生を対象にモーツァルトソナタを聴かせた後、空間推論テストを実施した結果、学生達の点数が向上することを土台に、音楽が早い時間内に頭を良くすることができると説明する.その後、クラシックが胎教音楽として米国で人気を呼んで、98年にはジョージア州のジェル・ミラーという州知事が、ソニー社の協賛で、病院で産婦にモーツァルトをはじめ,
クラシック音楽CDをプレゼントすることによって、より一層強固になった.
最近になってからは、さる6月,クリントン大統領が音楽教育が知的刺激を提供できるという演説をしたかと思えば、それより先の5月には、ニューヨク市公立学校担当官であるヘラルド・ルバイが43名の教育官たちにアイザック・スターンからバイオリンレッスンを受ける、画期的な音楽教育法を導入して話題になった.
モーツァルト
エフェクトが脳に及ぼす影響を研究する学者たちは、子守歌に対する赤ちゃんの反応を分析して、赤ちゃんがおとなとほとんど同じように音楽を受け入れると主張する.また、ハーバード教育大学院の心理学者ロイス・ハートランドの報告書によれば、子供に持続的に音楽を聴かせて,
演奏するようにすれば、空間推論能力が向上するという結果を提示している.
しかし、これを懐疑的に眺める学者たちもひけをとらない.大抵の音楽教育が音楽を聴くものだけでなく、ピアノ演奏を同伴していて、音楽が脳に刺激を与えたものなのか、そうでなければ、黒い色と白い色の鍵盤を演奏した後の気分の変化の結果として現れたものか、正確ではないという反論だ.トロント大学の心理学者
グレン・スレンバーグは、“音楽が点数向上に直接連結することを見せた例はまだない”と主張,
36週間6才の子供3グループを対象に鍵盤楽器演奏と歌,
演劇レッスンを通じて、音楽の効果を証明するための実験に入ったと明らかにした.
この実験結果がどのように出てくるのかはまだわからない.そして、この結果がモーツァルト熱風にどんな影響を及ぼすかもわからない.しかし、音楽の効果がモーツァルトの英才教育として過度に誇張されることだけは、国内外を問わず、学者たちは憂慮している.
ホ・ナムジュ記者 yukyung@kdaily.com
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