註:「チョンセ」とは、韓国特有の家賃形態で、高額な保証金を家主に預けるもので、家主はそれを運用して利益を得る、というものです.
「ウォルセ」とは、月払いの家賃形態です.
また、韓国では分譲集合住宅を一般に「アパート」と呼びます.以下の文中で「アパート」とあるものは、日本でいう「マンション」に読み替えて良いでしょう.

“3億ウォンにもなるお金を何故使わなければならないのか.経済的損害だ.他の投資先を探す”というジョン・スンホさん(34・歯医者)は、ソウル
胛鴎亭洞でチョンセをする理由を、そのように明らかにした.
“住宅普及率が94%にもなったというのに、まだ家を買わないつもりです.職場に通うのに楽で、教育条件と環境が良い所に住むのが最高ですよ”と、キム・チョルさん(33・会社員)は、マイホーム取得の‘適正な時期’を見極めていると話した.
“ローンを組んで家を買って、その借金を返すのに必死になりながら生きたくないです.チョンセで住みながら、自己啓発して生きますよ.”
キム・ヨンヒさん(29・グラフィックデザイナー)は、家よりは生活の質を選んだ.
‘家を買う人はバカだ’という言葉が、20代・30代の住宅
実需要者達の間で広がっている.昨年末と今年初めにコスダック(註:韓国のハイテク関連企業を中心にした株式市場)が暴騰した時はより一層そうだった.証券・金融でお金が動くことによって不動産売買が起きなかった.不動産関係者の側からは“不動産投資心理が地に落ちた.政府側の格別の措置が必要とされる”という主張も流れ出てきていた.最近、政府が出した、9月から2001年末までに、1年以上保有した既存住宅を売って新築分譲住宅を購入した場合に10%の譲渡所得特例税率(現行20〜40%)を適用,
譲渡所得税を大幅減兔するというものも、不動産浮揚策の一つとして見るべきだ.
最近の不動産市場の動きも、不動産関係者を暗たんとさせたようだ.チョンセ価格が売買価格の80%を上回る高値を成し遂げているけれど,
売買はほとんどなされないでいる.過去には、チョンセ価格が売買価格の60%を越える価格に暴騰すると、それを恐れながら売買価格が形成されることが茶飯事であった.69年がそうであって,
78年, 88年がそうである.しかし、現在の不動産市場では、売買はほとんどなされていない.チョンセ価格の強勢に助けられて、過去の方式通りにアパート価格が上がれば、取引が直ちに浮上し,
需給バランスを維持しながら3−4ヶ月過ぎれば、価格が本来の姿に帰ってくる.
それで、若年層のマイホームに対する認識の変化が、不動産市場の伝統的な流れ
を変えているという診断もすでに広がっている.特にウォルセ(註:月払い家賃)が、小型アパートを中心に、着実に出てきている状態であると、先進的な賃貸市場への変化を診断している.
不動産業界では、特に‘ウォルセ’に注目して、“私たちの社会が西欧式賃貸事業に転換している”という立場だ.こういった不動産市場の与件変化によって、賃貸事業・不動産間接投資等、不動産投資戦略が変わるべき時だと説得している.若い住宅実需要者たちのチョンセ・ウォルセ選好を、不動産市場を再編する新しい流れだと見ているようだ.
しかし、一部の専門家たちと、現場をよく理解している仲介業者たちの間で、“金融不安により、住宅需要に対する欲求が抑制されている”と分析して,“持続的にチョンセ価格が上昇する場合,
1〜2年の間に住宅価格が上昇するはずで,
売買率も急上昇する”と予想している.
特に、住宅普及率が71%に終わっているソウル地域の場合,
小型アパート物件数の不足と、既存未分譲アパートの減少によって、強い上昇趨勢が予測されると警告している.IMF以前にも、未分譲アパートの在庫需要は10万戸だったが,
現在は6万戸に終わっているためだ.無住宅者たちには胸や背筋が寒くなった主張に違いない.現在、京畿・仁川地域の住宅普及率は95%,
全国平均は94%に達している.
98年全国的に18.4%まで価格が下落した チョンセ価格は、昨年には16.78%急上昇して,
この上半期だけでも7.82%上昇した.こういう趨勢ならば、今年も15%台の上昇が予想される.このような借用権価格上昇原因を、単純に若い需要層のチョンセ選好に求めなければならないだろうか.
現代経済研究所のキム・スンドク研究委員は、その原因をこのように分析した.まず、今年が、IMF時期の98年に低い価格で契約したチョンセ契約を更新する年であるためだ.二つ目に、チョンセ中の一部がウォルセに転換されているために、チョンセ物件が不足している.三つ目に、IMFで住宅供給が半分近くに減って、新規アパート入居物件が減ったためだという.
彼は“最初の原因は、今年が過ぎれば葛藤要因が解消される.だが、二つ目
三つ目の原因は消えないために、今後1〜2年間、チョンセ上昇が憂慮される”と明らかにした.
しかし、若年層のチョンセ選好には、明白な心理的な理由が隠されていると、彼は話す.すなわち、“不動産市場の異常な流れは、金融不安の悪夢が持続しているため”という指摘だ.
分譲団地に住む、ある研究員の場合、家の値段が1億ウォンなのであるが,
チョンセの8千万ウォンで住んでいる.普通、住宅購入時の住宅長期貸出などが2千余万ウォンずつ配分されるため、家の価格は実像8千万ウォンだと見ても構わない.それでも買わない.理由は、98年にあった住宅価格暴落を経験したためだということだ.最高30%暴落した時、1億ウォンの家は7千万ウォンだ.貸出を除けば、5千余万ウォンにしかならない.しかし、チョンセは8千万ウォンがそのまま維持されるため,
チョンセを好むのだという説明だ.
“売買価格が動かないのは、住宅普及率が全国的に94%に至ったためではない.ただし、IMF以後、現金流動性の重要性を確実に悟った消費者たちが、巨額の金で家に縛られることを避けようとしたのだ.銀行に金が集まるのも道理だ”と、分析して“仮に、私たちの経済が成長を続けて,
第2の金融大乱がおきないという確信が広まれば、住宅売買はこれから広がることができる”と指摘した.
景気が不透明な状況では、現金保有を高めようという傾向が強いということだ.20年前に住宅普及率100%を超えた米国の場合,
着実に住宅価格が上昇していることも反証になると.
不動産仲介業者の同じ言葉だ.“10年前には、アパート分譲を受けてチョンセを預けて待てば、一年で住宅価格が最高二倍に上がることもあった.庶民が家を増やすという面白さ,
金をもうける面白さがあった.しかし、現在は、住宅価格が年間銀行利率ほどにも上がらない.ポケットに充分なお金があればともかく,
ローンまで組みながら最短距離で速く買うメリットがなくなった”と、‘21世紀コンサルティング’のハン・グァンホ課長は主張している.また、住宅売買時に5.8%に達する取得税・登録税を払わなければならず,
年間財産税も手強い.結局、経済観念が明確な若年層は、家を買ったら損をするという結論に容易に到達するということだ.
最近、建設業体から、情報アパートとか,
田園アパートとか、未来型アパートを出しているために、すぐに購入するほど施設競争力が落ちるということも、買った瞬間にアパート価格を落とす理由になるという.その上、アパート再建築時の容積率も低くなったため、減価償却費を確かめれば、買った瞬間から損害が発生することになるという.
不動産市場が両極化しているのも、売買忌避の一原因になっている.不動産市場も‘貧益貧
富益富’が徹底的になされている.すなわち、ソウル
江南のような住みやすい所は、買う時も高いが、売る時にはプレミアムを付けて売ることができる.
しかし、若い需要層にとっては、金がないため、接近が難しい所でもある.
持続的に供給されている‘ウォルセ’も、それが良くて選択しているのだというよりは、やむをえず選択しているようだと見られている.
あたかも、60・70年代に‘子供は何人か?’という質問でチョンセ入居者を選択したように,‘ウォルセでも良ければ入れ’式で選別しているという主張だ.
その上、先進的で安定した賃貸市場に進入するには、韓国不動産市場の障害物があまりにも多いという指摘もある.高い住宅価格とチョンセ価格が形成された韓国不動産市場では,
高額賃貸料を毎月要求するためだ.
西欧ヨーロッパの場合、ウォルセが銀行金利+1〜2% 水準.国内も、最近、ウォルセが
1〜1.2分の間で、年間12〜15% 程に落ちた.しかし、月1分にウォルセが落ちたとしても、高評価された住宅価格のために、月平均150万ウォンの30代の会社員が負担しなければならない金額は少なくない.京畿道
シフン市の17坪アパートを例に見てみよう.売買価格が5千300万ウォンなのであるが,
保証金500万ウォンにウォルセ50万ウォンで家を空けておいた.これで、家主は年間12.5%の収入を上げる.反面、ウォルセ入居者は、月給の3分の
1を家賃として出さなければならない状態だ.ソウル 上渓洞の24坪アパートも、保証金3千万ウォンにウォルセ45万ウォンを提示している.
銀行利子より高い,
安全な財テクを追求する住宅所有者の立場で主導されるウォルセ市場は、主に上渓洞のような中小型アパート密集地域で形成されている.ウォルセは散発的で,
零細地域で起きているために、増加推移がまだどんな統計にも現在は捕えられていない.現場の雰囲気であるだけだ.
ウォルセ市場が、韓国特有のチョンセ市場の亀裂をもたらすことは、皆認める.
だが、1〜2年中にウォルセ市場に流れがぱっと変わるはずだと速断することはまだむずかしいということが専門家の立場だ.‘強制貯蓄’手段であるチョンセの長所が、元金保全に対する欲求が強い需要者の立場では大きく選好される制度であるためだ.
そして、賃貸借保護法で縛られている各種賃貸事業者に関する規制を解消することも必要とされる.長期賃貸事業が発達するためには、なによりも多くの賃貸事業者が市場に飛込んで、競争を繰り広げなければならないためだ.そのような時にだけ、住宅需要者側にとっても利益になる賃貸慣行などが形成されると見ている.また、金融・税制上の恩恵を支援する金融制度の変化が先行しなければならない.
ムン・ソヨン 記者(symun@kdaily.com)
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