 過去ある女は赦せても、容貌の悪い女は容赦できないとか.悪い外貌は赦せても、身長の低い男はだめだとか・・・.
見えることだけが善だという時代, とりわけ外貌に執着する20代においては、髪の色を毎日変えることも個性で、成形手術もどうということはない.大学入学記念として二重まぶた手術をしたり、より根源的なおしゃれのためにダイエットに続いて、身長伸ばしがブームだ.
事実、とりわけ身長が低くて、劣等感で自信を失った人々にとって、身長を伸ばすことができるというのは、明らかに希望になりうる.しかし、最近では、170㎝のすらりとした美女が‘もう3㎝だけ、もっと伸ばしたい’と、身長クリニックを訪れる世の中になった.‘身長は高いほど良い’という巨大シンドロームの一断面だ.表面の姿で評価を受け,
評価される時代を生きていく人々は、‘10㎝の成長は、心の持ち方’‘小さな身長であきらめる必要はない’等、多様な煽動的誘惑に陥りやすい.
身長を伸ばすブームは、タレント イ・ウィジョンがSBSの‘ビューティフル
ライフ’の‘人間
ゲノムプロジェクト’コーナーで、身長を伸ばすことを始めたことが契機になった.
さらに、イ・ウィジョンが2ケ月で2㎝も伸ばしたという話が伝わった、この前の春から身長伸ばし熱風は、男女の性別はもちろん、幼稚園生から20代大学生と会社員まで、世代を問わずまき起こった.
市中に知られた、身長を伸ばすという‘秘法’は、意外に多い.成長クリニックという名前を付けた所が、洋・韓方(註：漢方を基本に、韓国で独自に受け継がれてきた医学体系)を問わずに増加していて、総合病院でも、矮小症治療クリニックに問い合わせ電話が列をなしている.
そのうち、代表的なこととしては、骨を切断して少しずつ増やして、身長を大きくするという手術から、成長ホルモン注射を毎日家で射って身長を伸ばすという、中・上流層子女の例がうわさのように出回っている.また、韓方の成長促進剤が最も副作用が少なく、効果も良いと、20包で90万ウォンずつする、身長伸ばす韓方薬を3年も服用する子供たちも江南にはめずらしくない.身長を伸ばすのに何百万ウォンから何千万ウォンまで注ぎこんだという人々もある.しかし、これは誰でもできることではない.
何といっても、やはり、運動が最高だという言葉で、身長関連健康器具を6年で10万個以上売って、国民体位向上に寄与したと広報する業者もある.簡単なゴムひもで作った、何万ウォン程度の運動器具から、200余万ウォンに達する大層な発明品まで、10余種類が市中で販売されている.
また、最近は、身長を伸ばす運動という、特別な器具が必要ではないという観点に注目,
家の中で容易にできるサッカーボールなどを利用した運動とストレッチング
体操,マッサージを薦めるビデオが市場に発表された.それだけでなく、成長関連
インターネットサイトもある.
しかし、大部分が身長を伸ばすことを広告し、‘1年に10㎝ずつ責任を持って伸ばす’という、大きな声にもかかわらず、科学的な検証をしていなくて無責任だという指摘も出ている.さらに、成長が終わった時期である20代
にも、5㎝も伸ばせるなどということは、現代の学問では説明できないという指摘もある.
しかし、事実、成長促進剤という韓方薬を売っている漢医院等の広告文に接したら、身長のために悩んでいたら、その気になりかねない.特に、身長の小さな子供を持っている父母の立場ならば、‘他の人々は父母が努力して身長を伸ばしたというのに…’などと、成長クリニックをのぞき込むようになっていく.
“私に似て、子供の身長が小さいんです.高校生だった時の娘が153㎝にしかならないと気に病んでいるのを見ていることができなくて、身長を伸ばすというところをあちこち訪ね歩きましたよ.
”キム・ヨンソン(52・高陽市）氏は、何年間も韓方薬を飲んで、努力もしたが、特別な成果がなかったという.
もちろん、身長を伸ばすのに成功した事例を探すことは難しくない.
チェ・ソッギュ(49・ソウル 永登浦区)氏は、高校生の子供たちの身長が163㎝である自分より1尺(註：手の指を広げた程度の長さ)ほど高くなったのは、成長クリニックのおかげだと話す.
“妻が息子の身長を心配するので、時が来れば育つ,私より栄養状態が良いのだから、いくらでも大きくなるさ、と言ったのですが、
本当に身長が伸びる気配がないので、妻に任せました.薬を飲んで、食べ物も神経を使って,
運動もさせて、子供は1年間で身長が10㎝ 以上づつ伸びました.”
チェさんは、育つ時が来て育ったのか、成長クリニックの韓方薬のためなのかはわからないが、とにかく、あらかじめ手を回して子供の身長を伸ばしたことに満足だ.しかし、まさにこの点,
成長促進剤を飲まなくても育つ子供たちに、強いて成長促進剤を飲ませることが良いのか、と専門医たちは憂慮を表している.
専門医は、成長ホルモンが欠乏して身長が伸びない場合をこのように指摘する.▲身長が同年齢中で小さな方の3%以内である時
▲三歳を過ぎた後にも身長が1年に4㎝も伸びない時
▲脳下垂体機能低下症が疑わしい時 ▲身長が小さくて肥満な時 等.
すなわち、成長ホルモンを分泌する脳下垂体や慢性腎臓病により、成長抑制物質が分泌されたり、栄養欠乏等のいろいろな原因により、成長ホルモン分泌が最大にならない.しかし、これは普通人が容易に判断できないもので、病院で24時間の間に30分単位で成長ホルモンの濃度を測定,
観察する等、いろいろな検査を経て可能になる.
したがって、成長ホルモンを投与して身長を伸ばさなければならない場合は、成長ホルモン欠乏症と慢性腎不全症,
ターナー症候群等の三つの場合だけだと明らかになっている.
成長ホルモンは、毎日家で直接注射をうって、それも、3年も続けなければならないという費用と面倒さ,
危険があるにもかかわらず、一部の人々は‘最も確実な方法’だと騒ぎ立てている.
それで、一般的に使われる方法は韓方の成長促進剤だ.薬品ではなく、健康補助食品に分類され,
大部分は市・道 管轄
地方自治体に申告だけをすれば、販売が可能なために、客観的検証が不可能だという問題点があるのだが、日毎に人気を博している.
しかし、韓方では身長を伸ばす韓方薬はないというのが定説だ.“東医宝鑑をはじめとする原典にも、身長を伸ばす処方はない”と、慶煕大
韓医大 ドゥ・ホギョン教授は明らかにした.
稀だが、一部では骨を増やす‘イルリザロフ’手術も行う.骨を切断した後、少しずつ増やして身長を伸ばすという手術だ.しかし、切断部位の神経と筋肉に無理を与えるため、整形外科では両足の長さが異なるような特別な場合にだけ使用する.ところが、この手術が身長を伸ばす秘法として信奉されているのは恐ろしい.この手術をすれば、1～2ケ月に1㎝ずつ伸ばすことができるという話は、身長の小さな人々が引きこまれる程魅力的だ.
“身長とは、決して、骨だけを伸ばすことではありません.さらに、この手術をして膝に水が溜まったという青少年たちもある程であるので、この手術の弊害が知らされなければいけません.また、この手術をしたら、登山等の運動も正しく出来ません.”
整形外科専門医
キム・ヨンフン氏は、身長伸ばしは筋肉だけを増やしたり骨だけを増やしては不可能だと強調した.
身長クリニックが知られながら、最近になって栄養摂取と正しい姿勢を守る生活態度と運動などで、身長を伸ばすことができるという認識が改まっていることは事実だ.
これまで、‘牛乳が身長を大きくしてくれる’という俗説が事実だと確認されて、最近‘身長伸ばしビデオ’を市場に発表したポラムエンターテイメントのパク・ドスン専務は“副作用のない、安全な成長方法を探すことが重要だ”と強調した.
このビデオでは、身長を伸ばすために、頚脈を刺激するストレッチングを中心に、コンピュータの前で曲がった姿勢を取る大部分の学生達に脊椎矯正できる体操を薦める.立って行う運動から、眠る前・後と登下校時、跳ねるように歩く等,
後ろに歩くこと, かかとを持って階段を登ること,
横になって行う体操, などを詳細に説明する.
運動の重要性は当然であるが、一貫して行わないとだめだという点で、成長クリニックを肯定的に評価する人々もある.
成長クリニックで中・高校生の兄弟姉妹の身長を伸ばしているファン・ウォンヘ(45・城南市)さんは、娘
ユン・ジヨン(17・高1）さんの身長が2月で3.2㎝も大きくなったと話す.“牛乳をたくさん飲んで、間食をしないで運動をする等、生活態度を変え、154.2㎝から157.4㎝に育ちました.成長が終わったので大きく期待するなという話があったのですが、‘隠れた身長’が2㎝はあると、身長ドクターから言われて、毎週少しずつ伸びるのがすごくうれしいですよ.目標は159㎝なのですが、今後4ケ月間で1.6㎝は無理かなあ?”
ファンさんは、夜11時から明け方1時までに成長ホルモンが出てくるため、高校生にしては早い時刻の夜11時に娘に眠ることを薦めるようになったという.代わりに、夜明けに目をさまさせて運動もするので、健康もよく、集中力も良くなり、いろいろに良いということだ.
26歳のイ・ヨンギュンさんは、いつも小さな身長がコンプレックスであったのだが、最近身長が、何と4㎝も伸びたという.“身長は極めて個人的な満足度が基準になるように、成長もやはり個人差があるようです”と喜んだ.
遺伝的に身長の小さな人の身長を伸ばすことはできない.
しかし、実際に身長が伸びたのか,
姿勢を正して曲がった脊椎を伸ばして身長が育ったと考えるかに関係なく、とにかく身長が大きくなったという人々に会うことは難しくない.ただし、“副作用などを心配して用心深く選択しなければ、ただ何㎝かの身長を伸ばそうとして、重病を得るようになるかもしれない”という警告には耳を傾ける必要がある
ようだ.
ホ・ナムジュ記者[yukyung@kdaily.com]
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2000年8月NEWS PEOPLE 429号 