"人気作家?
夢にも見ませんよ"
公主病(註;シンデレラコンプレックス)の反対の意味で‘魔女病’というものもあるだろうか?
できるだけ気味悪く,
できれば、吐き気や拒否感が生じるように装いたいという病気.
実生活ではさがすのが難しい重症精神病かも知れないけれど,
作品の中でこういう魔女病の世界を見せている作家が最近少なくはない人気を享受している.
それがまさに イ・エリム(27)さんだ.
映像院 映像漫画科3学年に在学中の、この済州道出身のお嬢さんは、骸骨を変形させたような奇怪な人間がたくさん登場する短編連作の漫画界で自身の領域を確実にしている.
彼女の短編集 <Short Story>は、人を不快にさせる絵と人を不快にさせるストーリーで一杯だ.
ところが、先入観を投げ捨てれば、その絵は魅力的でもあり,
そのストーリーは痛快だ.
この作家はどういう考えでこういう魔女病を伝染させるつもりなのか??
映像院の‘魔女’アガシ(註;お嬢さん)は自分自身の神秘な秘法を素直に明らかにした.
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もちろん漫画主人公といっても、皆が皆可愛くなければならないわけではないのですが,
イ・エリムさんのキャラクターたちは、みな一貫して素直ではなくて、
異常で浅ましいですね. なぜ、そのように描くのですか.
= 私が見ると可愛いんですが. 私も美しく描こうとしているんです.
いかにも明るい美しさではなく、ちょっと湿っぽい美しさ,
そのようなものを描こうとしたのです.
- 可愛いらしい、と.
キャラクターはたとえそうだとしても、漫画の読み取りを妨害する程に複雑な背景はまたどうなのですか.
本当に緊密で,
その絵を見ているうちに、ストーリーを忘れてしまう程です。
= ストーリーにはまりこむ方がいいのでしょうか?
安らかに進行している途中で、なぜかそのような場面が出てくれば、インパクトが強くて全体の構成も滑らかですよ.
そんな話をたくさん聞きます.
だけど、その複雑だという背景ですが,
実は一つ一つがみな計算されて意図したものなんです. どんなに3次元空間を表現しても、2次元的雰囲気が似合うと考えられれば、わたしはそうします.
別の見方をすれば、利己的な考えなのですが,
まず、私が満足する絵を描きたいのですよ.
- では、内容はどうなのですか.
妻を食べさせるために人々をたくさん殺してくる夫であるとか,
男の一物が恋しくて眠れなくて泣き叫ぶ女とか,
男がどんなに虐待して殴る蹴るをしても卑屈にすがりつく女とか….
縦横無盡、どの方向に飛んでいくかわからない話なのですが、特にどういう指向点があるようで無いようです.
= 私がそのまましたい話をあれやこれや率直にしてみたのですよ.
初めの内は、丁寧で真剣に行こうとしたのに、編集陣から“絵に比べて内容があまりにも穏やかだ”という不評が出たため、‘では、内容もより大胆にいこう’,
こんな風に考えました.
それなのに、たいていの人々は、私が純真であまりなにも知らないからできた話だとも言いますね.
知らないとしたら、大胆だということですかねえ.

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内容は、俗物的に表現しようとするなら、いわゆる“魂を抜き去る”素材と話が多いですね.
どういう考えでそのようにしたのですか.
= あれは、そんなに危険で、そんな話でしたっけ?
そんなつもりではありませんでした.
今、話を聞いて、そうだったのかとはじめて思ったのですが.
- 大衆の空間に作品を発表する作家として,
もう少し多くの読者たちに支持されて人気を得る作家になってみようという考えはありませんか?
いわゆる人気作家ですが. 読者からのハガキを集計すれば 1, 2位を占めるような.
= 人気作家ですか? 夢にも見ませんよ. そうですね.
私が本当にそうしたいのならば、熱情的に努力をしてみるでしょうけど,
別に考えていませんよ.
世の中には、私がいちいち合わせるにはあまりも多くて多様な嗜好が存在しますよ.
私は、そのまま私と嗜好が似た人々が私の絵を見てくれれば満足です.
- 何故でしょうか,
イ・エリムさん、魔女の絵がこんなに最近は人気があるのは.
= それがちょっとおかしなことですよね. <ルネサンス>
デビューの時期からそのような絵を描きました.
人々に言葉を失わせる絵….
それなのに、最近になって突然、これがうけ始めたのかわかりません.
こういう絵がうける時代がやってきたかのようです, 突然に.
- 映像院は出版漫画よりもアニメーションに重点をおきませんか?
漫画作家でありながらアニメーションを専攻に選んだのはどんなきっかけでしたか.
= 人々の趣向に合わせるのも難しくて,
私としては最大限可愛くしても、その反応はちょっと….
とうてい折り合いをつけるのが難しいという気がしました.
そうなると、非主流で残る方法以外にありませんでした.
それで、漫画に疑問を感じ,
たまたま映画も好きだったのでんで、関心が自然にアニメーションにいきました.
卒業したら、どちらにも同じ比重をおいて作業したいですね.
- アニメーション キャラクターも、やはり奇怪に走りますか.
= はい, どこへ走りましょうか. (笑い)
- 怪奇な話と雰囲気に集中する理由はなんでしょうか.
= 私は幼いころから悪夢をたくさん見てきました.
夢は、みな悪夢でした.
裁断用のはさみで人を刺したり、近親相姦をしたり、それで眠るのがとても嫌いになった程です.
父は加虐的な人でもなかったし、抑圧的な家庭環境でもなく,
両親の言うことは“礼儀正しく生きろ”程度でしたよ.
それなのに、いつも悪夢ばかり見ていたんです.
ある時は、皮をはがされた人々が釘を打たれたまま倉庫にたくさん積まれていて、血が流れて、私はそのまん中にいて…ものすごく泣きましたよ.今はもうおとなになって、ある程度克服したのですが、その残滓がどんな形で私の頭の中に残っているのかわかりません.
敢えて分析してみると、そういうことですね. 私はそのまま,
描きたいことを描くつもりです.
- ひやっとする話ですね. ところで, 影響された作家はありますか?
外国人でも良いですよ.
= はい, モンクです.
他にも多くの人々の影響を受けたけど、彼らの画風を私の絵の中に活かす程の実力がありませんよ.

- 人形作りも好きで, 色々な小品もたくさん作ったとか,
趣味はそのような方面ですね.
= それなんですが,
最近は課題のためにあまりにも忙しくて、時間があればそのまま横になって、リモコンをいじるのが趣味ですよ.
- 今後、作りたい作品はどんな方向でしょうか.
= うーん, どんな作品でも、私だけの様式美でやりたいですね.
私にとって美しいことが良いのです.
もちろん、美しさの基準は各々違うだろうが,
価値があって所蔵したいほどの、そんな作品を作りたいですよ.
オ・ウンハ/ 客員記者
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