エロビデオ界にまき起こる小さな変化をどのように見るか
"成人用"というシールが貼られた
レンタルビデオ店の片隅.
客の目の高さに固定されたエロビデオ新作のケースは、宵の口を越えるやいなや、あっという間にひっくり返される.
以前のようにはいかないものの、レンタルビデオ店では、いまだに収益の15〜20%を占めるエロビデオは良い商売になる.
特に新作管理は必須だ.
普通、一ケ月に買い入れる作品は、1タイトルにつき、多くて15本.
新作の場合、3本以上を仕入れておいて、何週か反応を見て、適正でない作品は返品して,
客が求めるビデオだけを購買するようにすれば損をすることもない.
いずれにせよ、新作中心の商売であるから、毎月あふれ出る数十タイトルの作品の中から当たりそうなものだけを選び出す見識があればいい.
以前ならユホプロダクションを除けば、だいたい平均していたのに、最近は客がまず探すブランドがかなり多いというのが、最も大きい特徴.
その中で、クリックエンターテイメントが断然先頭を走っている.
普通、ある程度期間が過ぎれば、中古市場に流れるのが定石だが,
クリックエンターテイメントの場合、1年前市場に発表した作品を探してくれという客まである程だ.
クリックが作ったビデオは、若い層にまでかなり人気を呼んでいる.
K大前でレンタルビデオ店を運営するソン・テヨン氏は“洋物よりも国内エロビデオが好まれ,
作品を選ぶ時も製作社中心に選択することが最近の趨勢”とし、“クリックの場合、学生達が主な顧客層を占める”と話す.
‘ブイン(夫人)’‘マニム(奥様)’などは消えて
この何年かの1級エロビデオ製作社は、ユホプロダクションやハン
シネマタウンが選ばれてい た. 最近の2〜3年間、40タイトル以上ずつ粘り強く製作してきたユホプロダクションとクリックエンターテイメントを先頭に、シネプロ,
チョロクスクリーン, デバク等の5〜6業者が人気を集めているのが今の状況.
新作を除けば、貸し出し回数を基準に配列しておけば、以前にうまく行っていた‘夫人’や‘奥様’などはどこかへ消えてしまったことを発見できる.
ユ・ジン, ユリ, チャ・スヨン, ウンビッ, オム・ヘリン,
ペク・ジウンたちは、新生製作社から出された作品に頻繁に顔を表わす俳優たちだ.
いまは出演していないけれど、イ・ギュヨン,
ジョン・フィビンなどのように、一時享受した人気を土台 に、情熱的ファンたちまで率いている場合もある.
タイトル名もかなり高級だ. <鮭> <涙> <きつねと犬>のみだけでなく、<鬼公女>
<月の光>等、タイトル名だけを聞いたら、エロビデオなのかわからないような作品が客の手を引くのに効果的だ.
変化の兆し, 若い監督群登場
ところで、変化が感知されるのは、俳優たちのみだけでなく、若い感覚を出す監督たちが登場してきたからだ.
<ソバッテ>で知られたフン・ダン,
<二千年> <鮭> <一心> などを演出したボン・マンテ, <感覚カップル>を演出したチェ・サンシク監督等は、ミュージックビデオ式演出とアクション場面を組み入れることによって、特色ある監督として出てきた.
クリックで初めて演出を引き受けたボン・マンテ監督は、特にスピーディーな映像で全体のトーンを貫くという点で注目するに値する.
<ビート>のエピソードを摸倣したような<二千年>は、強いコントラスト照明を利用して、巷の青春を比較的よく描き出す.
<二千年> <鮭>がテクニックで可能性を見せるならば、<感覚カップル>はストーリーの叙述が引き立って見える.
互いの配偶者を心に思う二つの夫婦間に情事場面が収められたビデオが届くということから話が展開する<感覚カップル>は、あらましおおげさな編集ではない滑らかな連結が引き立って見える作品.
エロビデオ物の慢性的な問題として指摘される録音も、やはり良好だ.
いくら頑張っても、エロビデオ演出が忠武路(註:韓国のハリウッドと呼ばれる)助監督たちの実習舞台だったのに比べて、いまは放送や広告,
ミュージックビデオ側で活動する彼らが多い.
シネプロのイ・ガンリム監督,
ソウル映像企画のパク・ソンウク監督,
クリックエンターテイメントで演出もするイ・スンウ代表などが、広告界で活動してきたし,
イ・フィリップ監督の場合は放送界出身だ. 業界では50%がエロビデオに直ちに進入した人たちで,
25%は既存35mm劇映画出身, 残りが放送と広告界出身だと推算している.
エロビデオの場合、‘16mm映画’と称されてきたが、既にフィルム作業をする者はいない.
初めはホームビデオ用カメラを使用するVX1000を使い, 今はキャノンXL-1やPD150などのデジタルカメラで撮影するという.
シネプロのイ・ガンリム監督は、“デジタルカメラを使用すれば、テレシネ作業を経なくてもいいので作業が容易で,
狭い空間で多様なアングルをつかみ出すことも楽だ”としながら、“今後はシナリオ,
演出, 撮影まで一人で担当する1人システム形態でやっていくことが明らかだ”と話した.
アクション以外にも、SF,
アニメーションを使用する作品も見える. メディア21Cで製作した<透明パンティ>や、クリックエンターテイメントの<不滅の愛>
等は、コンピュータグラフィックまで動員した事例.
シネプロで製作した<美少女 自由学院>にはアニメーションが登場する.
新しい監督群が登場して、いろいろな試みがなされる趨勢に関して、クリックエンターテイメントのイ・スンウ代表はこのように説明する.
“エロビデオを見る人たちは大抵早送りしています.
どっちみち中間に割り込む話は必要ないということです.
だから、すこしでも視線を捕えて置きたいなら、色々な考慮をせざるをえないのです.
普通なら飛ばされる部分には、コンピュータグラフィックやアクション などを加味して引き伸ばし、セックス場面は色々な角度で撮るアングルと、速い編集で変化を与えるのが、最近の趨勢です.
私たちの場合、トライフォードはやめました.
なんと、ステディカムまで買いましたよ.”
最優先課題, 製作与件 改善
だが、何より至急な件は、劣悪な製作与件を改善しなければならないことだ.
今の状況だけでは、才能ある監督が出てきたり、市場状況が大幅活性化はしない.
当初、韓国にエロビデオが出てき始めたのは、米国メジャー映画と国内映画の版権料が大幅引上げになり始めた88年からだ.
これにビデオ製作社は、製作単価が関連して、短期間で製作可能な16mm映画に追い込まれ始めた.
90年と93年の2度、全盛期を迎えることもあったが、中間に製作本数が落ちることもあった.
これは、市場が不安定なためだ.
最近の何年間は、大幅増加傾向を記録しているところだ. 2000年1月1日から10月10日まで、映像物等級委員会に等級分類申請をしたエロビデオ業者は60余.
作品数は、何と400編あまりに達する.
ここに、現在等級保留中のビデオと昨年末等級分類を通過して今年市場に発表された作品まで合わせれば、年末には500編あまりを超えることが予想される.
99年の470編よりは小幅増加したもようだが, 98年の247編や、5年前のこの時期に80編の作品が出されたことと比較する時、今年1年間に溢れ出たエロビデオ数はおびただしい.
問題は、製作編数と製作社が増えたのに、市場の規模はむしろ小さくなったということにある.
非常に浮沈が激しいうえに、正確な製作社の売上額を把握するのは難しいという点が、市場規模を推定出来なくさせる.
ただし、レンタルビデオ店で1本以上購買するエロビデオは多くないので,
レンタルビデオ店数が、規模を把握できる糸口になる. 90年代初め、多くは3万5千まで増えたレンタルビデオ店は、90年代中盤に不況とIMFを経ながらバブルがはじけて、いまは1万2千に減った.
5年前、2万5千程度に推定されたことと比較すると50%の水準だ.
構成の良い作品がいくつか出てきながら少数のマニア層を形成することはあったが,
かと言って、需要層自体を大きくひろめるだけの水準ではない.
“いつか、1億
予算規模の映画を”というけれど、そのような状態ではない.
現在、1級製作社の1本あたり製作費は、平均2千万ウォンを上回る.
その他に1千万ウォンにもならない製作費でまかなう所も数知れず.
2500万ウォン程度を投入して大きな作品を企画して製作する場合, 2万2千本程度大量コピーするテープ製作費に、広告費まで合わせれば、製作費は4千〜5千万ウォンを超える.
ビデオ総合流通センターに1万2800ウォンで卸す場合、現在レンタルビデオ店にすべて売れるとしても、戻ってくる金は、1億4千万ウォン程度だ.
だが、今、現在の国内市場は1万本に及ばないというのが、業界の評価だ.
いわゆる大ヒット作品といっても、7〜8千本を記録するのがせいぜいだ.
この場合、収益は1億をすこし超える.
また、有力ブランドで、大金を投入して市場に発表したといっても、全てヒットを放つわけでもない.
むしろ、少ない製作費で損をしないで作るほうがよりよいという誘惑の前では、揺れるのは止むを得ない.
業界の一関係者は、“コンピュータグラフィックを使った作品だが,
普通に作って出した作品よりも反応が良くないことが多い”と指摘する.
比較的大きな映画を作って、倒れる危険までも甘受しなければならない.
95年のシネマートの場合も似ている. その他の製作社が5〜7日で3千万〜4千万ウォンを入れて映画一本を撮る状況で、シネマートは1億余ウォンを投資し、20余日の撮影期間で忠武路の製作社に外注を出して<携帯ベルラブ>という作品を作ったが、当初の1万5千本の目標を満たすことができなくて、言葉そのままに実験で終わった.
5年がすぎた今、一般的に2月に3本の格好で作品をだすクリックの場合、他の製作社とは違い、2〜3日に一作品を撮る.
女優が4名以上出演する等、ギャランティーと技術的な校正に使う費用を進行費として埋め合せするには無理があって、やむを得ず撮影を終えなければならない時が多いということだ.
泥からレンゲが咲くことを待って
むしろ少ない製作費を入れても、少しずつ利潤を高めるために、また女優に頼る状況が反復される.
クリックやシネプロのような新生製作社が既存製作社を抜いて先頭にたつことができた理由でもある.
<美少女 自由学院>シリーズで大きな成功を収めたシネプロの場合、思いきって俳優たちの名前をつけた連続シリーズで大きく利益を得た.
これらの追撃を受けるユホやデバクなどのプロダクションで、日本のAV(Adult
Video)出身の俳優を出演させるのも、同じ脈絡だ.
国内俳優を発掘することが容易ではないという点で、<赤坂
エロ通信> <東京妻 ジュンコ> <トリプル>
等で、国内俳優水準のギャランティーで、日本の俳優を出演させたのだ.
現在、各製作社の専属形式で出演する国内1級女優のギャランティーは、1本あたり300万ウォン程度.
再等級分類申請をかえりみず、露出が激しい情事場面を撮ることも一方法だ.
ある監督は、“露出で販売を伸ばすことができる時代は過ぎた”としたが、大部分の製作社の市場に発表した作品には、隠すべき部分をわざわざ流したような場面が頻繁に表れる.
クリックもやはり、相手俳優が女優の重要部分を覆ったり、逆光を利用したりして、ハラハラする場面が多い.
ある作品は、見かたによっては男女の性器を見るような錯覚を起こすような場面を連続編集する等、審議を避けていくための故意的な演出意図が表れている.
実は、エロビデオを見る理由は一様だ.
みだらな場面を見て、代理満足を得ることだ.
一時、日本映画市場を支えてきたロマンポルノは、セックス場面が20分に一度の格好でだけ出てくれば、どんな内容かは気にしなかった.
既存の道徳観念や慣習にとらわれなかった若い監督たちがロマンポルノ業界に飛び込んだ理由だ.
観客はみだらな場面を見るけれど,
監督は、その合間に自身の精神を込めた.
こういう絶妙な不一致が、むしろロマンポルノの傑作を作った.
韓国のエロビデオもやはり、このような跳躍が必要とされないだろうか.
昔から、泥からレンゲが咲くというではないか.
文 イ・ヨンジン記者 anti@hani.co.kr
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