2013年11月ハンギョレ21 986号

中年男が作ったおふくろの味?


[2013.11.18 第986号] [北京女子, 東京女子, バンコク女子]

‘日本版 食べ物 Xファイル’,
食材‘虚偽記載’事件は、どのように日本の‘ブランド指向’と相対しているか

≫ 日本 大型スーパーマーケットで安い価格で出されている和牛肉を消費者が注意深くみている. ハンギョレ資料

最近、日本では使われている食材とは違う表記をした‘虚偽記載’が社会的問題として台頭した.
‘食品虚偽記載’というと、安価な食品が思い起こされるが、今回の事態は高島屋デパート, 帝国ホテル, リッツカールトンホテルなどの有名デパートやホテルで起きたことだと消費者の衝撃が大きい.

今回の虚偽記載が消費者の健康に害があるわけではなかった.
‘和牛’(日本産牛肉)がオーストラリア産だった,‘車海老’がブラックタイガーだった, ほとんどそのような内容だ.
だが、‘お金をもう少し出してでも良いものを食べたい’という消費者の心理を利用した悪辣な行為という批判が荒々しい.

虚偽記載はどの国でも起きているが, 今回の件は日本特有の文化と関連している.
日本は世界的にみても、生産方法や産地を詳細に指定して良い食品を作りだす技術が飛び抜けている.
京都で生産される‘九条ねぎ’は普通のねぎより甘みが多い.
‘ふじ(りんご)’は敢えて説明をする必要も無いほど、韓国や中国でも有名だ.
良い食材を作りだそうという‘執着’は、日本の食文化を豊饒にして, その分食品表示規定も徹底している.

狂牛病事態時、韓国に住む友人たちと話しながら食品表記の信頼性に対して温度差を感じたことが ある.
米国産だと書かれたものを食べなければどうだろうと尋ねたら、“それをどうして信じるのか?” と問い返された.
日本ではそのように表記されていればそうだろうという信頼がある.
それほど日本の食品表記は法的に丹念に整備されてきた.
今回の事態は、日本の消費者たちがその制度を享有してきたという傍証でもある.

‘そこまで正す必要があるのか’と感じる程に日本の食品表記規定は徹底している.
今回問題になった中にも、レストランで出される‘おふくろの味定食’を中年の男性調理士が作っていた,‘フレッシュジュース’がミカンを直接絞ったものではなく、紙パックに入っていた果汁100%ジュースであった, などがあった.
虚偽記載は一次としては業者側の問題だが、消費者の意識にも問題がある.
あるホテルチェーングループの中華料理レストランで‘芝海老のチリソース’に南米で漁獲されるバナメイ海老を材料として使っていたという事実が表れることもした.
芝海老は日本の芝浦という地域で捕えられたから芝海老だ.
ところが、生物学的に芝海老とバナメイ海老は似ている.
中国で海老養殖を指導した経験がある専門家はこのように話す.
“芝海老でもバナメイ海老でも英語では全く同じ‘Shrimp’, 中国語では‘蝦仁’(シャロン)です.
車海老とブラックタイガーでも、英語では全く同じく‘Prawn’, 中国語では‘明蝦’(ミンシャ)です.

食材の詳細な種類を正すことは日本特有の文化です.”
厳密に正せば、芝海老とバナメイ海老は違う.
芝海老は水分が多くて軟らかくて、刺身等の食材の味を生かす和風料理ではその差が現れる.
ところが、中華料理ではほとんど差がない.
日本の専門料理店では海老の種類によって調理法を変える.
ところが、中国本土で料理する時、海老の種類を正す場合はほとんどない.
今回、高島屋デパートで‘車海老のテリーヌ’の食材がブラックタイガーだったという問題があったのだが, これもまた似た脈絡で話すことができる.
加熱する調理法である‘テリーヌ’では2種類の海老の味に大差ない.
生物学的にほとんど差がなく、味も同じであり、安全に食べることができるのに、食材の種類を正す理由は何であるのか.
それは、消費者に実際の味よりはブランド指向があったためはでないだろうか.

車海老と芝海老は養殖が非常に難しくて貴重な存在だ.
そのような知識がある消費者は多くない.
食材を正すのならば、食品表記にだけすがらず、個々人の知識と経験が必要だという話だ.


キム・ヒャンチョン 在日同胞 3世 自由寄稿家