[2012.07.16 第919号] [特集]
プロ野球開幕後、わずか6試合放送が生中継されたKリーグ,‘自前中継’するファンたちの悲哀視聴率低く、広告が付かないという理由で見る権利が追い出され“中継がないから人気がない”と抗弁
□ キム・ナミル

≫ ソウル バンイル小学校1学年 ホン・ヨンジェ(7)君はKリーグ
FCソウルのファンだ. シーズン券も手に入れた. だが、テレビでKリーグ生中継をしていたら, チームの区別なくみな見る.
それほど生中継は尊いためだ.
FCソウルと蔚山現代の試合場面.
ハンギョレ キム・ジンス
‘パンパンパッ パンパンパッ パンパンパッパン’ ‘ドゥンドゥンドゥン ドゥンドゥンドゥン ドゥンドゥンドゥドゥン’.
去る6月14日夕方7時 蔚山ムンススタジアム.
Kリーグ 蔚山現代と釜山アイパークの15ラウンド試合が開かれた.
‘中継画面’中の蔚山選手は青色ユニホーム, 釜山は赤色を着た.
中継カメラが1台だけだという事実に気がつくにはそんなに長くはかからなかった.
同じ場所左右に行ったり来たりする深甚なカメラワーキングだ.
画面を捕えるカメラは、時折りフォーカスがずれたが、選手とボールをによく付いていった.
画質は落ちる.
背番号までは確認可能なのだが, タックルで苦痛になる表情や、苦し紛れにグラウンドに唾を吐くような生き生きした場面は捕えられない.
ボールを追ってズームイン, ズームアウトが頻繁に起こる.
画面上段左側の片隅に‘蔚山 0:0 釜山’が単調に浮いている.
当然なければならない試合の経過時間はない.
‘ごほん’ 声が大きく聞こえる.
誰かがマイクのそばでせきをしたらしい.
キャスターと解説はない.
その代わりに、試合への没入度と聴覚的現場感が大きくなった.
主審のホイッスル, 現場の応援, 場内アナウンサーの響きが生々しい.
蔚山にフリーキックのチャンスがきた.
画面が対角線上にほとばしった.
中継カメラが前半21分を知らせるスタジアムの電光版を写す.
キム・スンヨンの鋭いボールがゴールポストをくぐろうとしていた.
真最中が過ぎた後に、他人の目をはばかりながら‘蔚山 1:0 釜山’に変わる.
中継してくれなければ見れなかった?
蔚山から来たソ・ジュンヒョク(19)氏はプロサッカーチーム 蔚山現代のファンだ.
ソ氏はこの日の試合を限りないファンの心で‘自前中継’した.
デジタルカムコーダー1台で撮ったインターネット生中継がなかったら、スタジアムにきていない蔚山・釜山ファンたちは試合結果(蔚山 2:1
釜山)を冷めた新聞記事やインターネットニュースでだけ接するしかなかった.
ソ氏の自前中継は、この日が2度目だった.
去る4月25日、蔚山には雨が降った.
蔚山現代とFCソウルの試合が蔚山ムンススタジアムで開かれた.
サッカーは野球とは違い、雨が降っても取り消しにならない.
試合開始2時間前, 地上波・ケーブルTV・地域放送のどれでも中継をしてくれないという事実を知った.
驚いたわけではなかったが, やり過ぎだという気がした.
大学映画学科で撮影を専攻しているソ氏は、ノートブックコンピュータ, 50万画素デジタルカムコーダー, 三脚, TV受信カード,
無線インターネット機器を持ってスタジアムへ向かった.
前半20分頃、スタジアムに到着したソ氏は装備を接続した.
リアルタイムインターネット放送サービスであるアフリカTVに‘放送局’を開いて, Kリーグ自前放送を始めた.
視聴者300人を超える人々がソ氏の放送を受けて、放送局を新しく開いた.
インターネットを通し、1千名程度のKリーグファンたちがソ氏の1人中継放送を熱く視聴した.
ソ氏は“文字中継で得点を想像するより、劣悪な中継画面でも直接見る方がはるかに満足だ”と言う.
前半20分頃、スタジアムに到着したソ氏は装備を接続した.リアルタイムインターネット放送サービスであるアフリカTVに‘放送局’を開いて,
Kリーグ自前放送を始めた.
野球を好む記者は本当に知らなかった.
‘チュクパ(註:「サッカーファン」)’たちの苦痛を.
元来、企業がついて, 広告がつくプロの試合はどこかが生中継してくれるではないか.
そうではなかった. プロ野球はすべてやるのに. プロサッカーは違った.
やってくれれば有り難いという.
そのような事が.
‘アジア最高リーグ’と聞いたのに.
記者が現実をそんなに知らないことがありえるのかと思った.
知らなかった.
率直に、Kリーグには特別な関心がなかった.
何も知らなかった大学新入生が偶然理念書籍を読んで社会の不平等に目を覚ましたというようなことだろうか.
Kリーグファンたちには怨念が多い.
痛い怨念が腫瘍のように胸の中に凝り沈んでいるだろう.
雨が降ってプロ野球中継が取り消しになれば, ケーブルTVスポーツチャンネルは野球中継に押されたKリーグ中継の代わりに野球試合の再放送をする.
アジア チャンピオンズリーグ主要試合も正しく中継出来ないのに, チャンネルを変えて見れば、いまだに2008年北京オリンピックの野球試合が流される.
そうこうしたあと見たら、スタジアムからスマートフォンで直接映像を撮ってリアルタイム中継をする人もいる.
画面中の選手たちは胡麻粒のようだ.
ファンたちがスマートフォンを持ってスタジアムのあちこちで1番カメラ, 2番カメラ, 3番カメラを担当して中継しようというアイデアまで出てくる.
そのように見て, 楽しんで, 遊ばなければならないファンたちが居るのだ.
ソ氏は“Kリーグでハットトリックが成された時、その日の地上波スポーツニュースでは野球選手がハンバーガー何個を食べたというニュースがまず出てきましたよ.
野球選手の日常がサッカー選手の記録よりも先んじるのなんて、話が道理に合いますか”とした.


≫
去る6月14日、蔚山ムンススタジアムで蔚山現代と釜山アイパーク試合の‘自前中継’を準備しているソ・ジュンヒョク氏(上).
ソ氏がデジタルカムコーダー 1台で中継した試合場面(下).
ソ・ジョンヒョク 提供
野球1.5% vs サッカー0.4%, ‘ダダブル’スコア
大韓民国は‘野球共和国’になった.
ケーブルTVプログラム編成だけは確実に‘共和国のルール’が支配する.
2012年、プロ野球中継権料は270億ウォン以上に推定される.
プロ 野球は 一日 休む 月曜日を (抜く)引いて 毎日 試合がある.
一日に同時に進行されるプロ野球4試合は、KBSN, MBC SPORTS+, SBS ESPN, XTMを通して全試合が生中継になる.
週末には地上波が生中継をすることもある.
FCソウルは、Kリーグ16ケチーム中で最高人気チームだが, FCソウルファンたちも生中継を気にしていることは同じだ.
昨年、FCソウルホーム試合を中継し、ファンたちの好評を受けた交通放送ケーブルチャンネルtbsは、今年は中継権契約をしなかった.
去る5月28日、FCソウル試合現場で配られた‘マッチデイマガジン’には、このようなカートゥーンが載った.
“野球は毎日中継をしてくれるのに、何故サッカーは中継をしてくれないのですか?” “野球は選手のガールフレンドが可愛なんて話まで, あるストーリー
ないストーリーをみんな見せている! アクション映画だって映像をどんなによく作っても、ストーリーがおもしろくなければみなゴミになるのに!
今、サッカーは、試合力がなくて人気 ないのではないぞ!”
Kリーグ中継権は皆が持っている.
韓国プロサッカー連盟は地上波3社に中継権を売った.
地上波を除外したケーブルTV・地域民放・IPTVなど、他の媒体は代行社であるエイクラを通して中継権を確保した.
今年一年、Kリーグ中継権料は合計を70億ウォン程度と推定される.
ところが, 何故, Kリーグ ファンたちは生中継に飢えているのか.
Kリーグファンたちと生中継の間には、ユーロ2012で優勝したスペインも越えるのが難しい‘壁’がある.
1.5% 対 0.4%.
プロ野球試合とプロサッカー試合の平均視聴率だ.
それはその通りだが, ケーブルチャンネルでは平均的に1%を超えるプログラムは多くない.
あるケーブルチャンネルスポーツ編成関係者は、“私たちもKリーグ中継権を買っておきながら放送しない理由がない. ところが、視聴率が引っかかる”という.
起亜タイガーズ, ロッテジャイアンツなどの人気チームの試合は視聴率が3%まで出てくることもある.
Kリーグは、最も激烈でおもしろいという‘韓国版 エル・クラシコ’FCソウル-水原三星 ダービーも視聴率1%をとるのが厳しい.
他のチームは良くて0.7%, そうでない時は0.1〜0.2%までおりて行く.
視聴率調査機関であるTNmSの助けを受けた.
Kリーグは3月3日に開幕し、7月1日まで152試合(計352試合)を消化したのだが, この中で地上波3社, ケーブルスポーツチャンネル3社,
総合編成チャンネル(TV朝鮮)を通して生中継されたのは50試合にすぎない.
SBSが3月3日に生中継した‘城南イルファ 対 全北現代モータース’ 開幕戦の視聴率が4.1%で最も高かった.
この試合を含む6試合だけが視聴率1%を超えた.
大部分の試合が0.1〜0.4%に集まった.
4月1日にあった‘スーパーマッチ’ FCソウル-水原三星ダービー(SBS ESPN 中継)も、0.9%に終わった.
視聴率は広告販売と直結する.
3〜4月初めまで18試合を生中継したケーブルスポーツチャンネル3社は, 4月7日、プロ野球開幕以後には6試合だけを生中継した.
ケーブルチャンネル関係者は“1ケ月単位で広告が販売されるのだが,
毎日試合がある野球と、だいたい一週間ごとに試合が帰ってくるサッカーには差があるしかない”と説明した.
その上、野球は毎イニングごとに広告が入る. 投手を交替しても広告が入る.
試合開始前とハーフタイムだけに広告がつくサッカーとは比較出来ない.
もう一人のスポーツ編成PDは“サッカーは45〜50分の一般番組プログラムと同じだ.
広告販売には格別な助けにならない”とした.
地上波広告業務をするコパコ関係者は“率直に言って、プロ野球も地上波は難しい.
まして、プロサッカー試合を出せば、広告がつくだろうか”とした.
サッカーファンたちは放送社側の現実論に憤然と対抗する.
“Kリーグ人気がないから中継がないと言うけれど, 反対に、中継がないから人気が出ないのだ.”
放送社が意志としてKリーグを編成・露出させれば雰囲気は変わるはずだという話だ.
野球とサッカーの共生は可能か
野球は広告がとても多い.
去る7月4日、起亜タイガーズと斗山ベアースの光州での試合は、MBC SPORTS+で中継した.
6回裏が終わった.
攻守が替る短い時間. 何と、7個の広告が降り注ぐ.
画面が野球場へ戻るやいなや, グラウンドの空の所を探してまた再びポップアップ広告が浮かぶ.
サッカーファンたちは放送社側の現実論に憤然と対抗する.
“Kリーグ人気がないから中継がないと言うけれど, 反対に、中継がないから人気が出ないのだ.”
放送社が意志としてKリーグを編成・露出させれば雰囲気は変わるはずだという話だ.
痛い視点だが、ヨーロッパリーグに目の高さをあげた彼らの視線を引くのにKリーグはまだ不足しているという指摘も多い.
これに、ソ・ジョンヒョク氏は“Kリーグにも興行要素は充分にある.
これを包装して商品化しなければならないのに、そういう役割をしようという放送社がどこにもない”とした.
そうこうしたら、サッカーファンの不満は韓国プロサッカー連盟へ向かうようになる.
中継権を巡っても、生中継条項ひとつ入れれられないかということだ.
サッカー連盟関係者は“地域民放などを通して多くの試合が生中継されている.
だが、地域に限定された中継であるため、アウェーの試合は相手チーム地域のファンたちしか視聴出来ない場合が生まれる. こういう不満には十分に共感する”とした.
といえども、“試合時間が重なる時、サッカーか? 野球か?を 決定することは結局は放送社だ.
連盟がどんなに協調を求めても、決定はそちら側ですることになる”とした.
中継権を特定放送社独占に追い込もうという主張もあるが, 連盟側は“独占は時期尚早”と話す.
ともかく‘接触してみる’ことを広めることが重要だということだ.
プロ野球という‘最上位飽食者’が支配する生態系で‘共生’は可能か.
プロサッカーとプロ野球などの中継権を代行するエイクラにのイ・ジョンソン広報チーム長は“同じ時期にサッカーと野球シーズンが進行になる国は韓国と日本程度だ. 共存するのが難しい構造”といった.
彼は“プロ野球と競争する構図は望ましくない. Kリーグ中継回数を広めてみれば、状況が少しずつ変わることと見られる”という展望をだした.
エイクラは、最近サッカー専門チャンネルであるSPOTV+運営に入った.
イチーム長は“韓国ケーブル市場でプロサッカー8試合全てを一日で生中継するには難しい側面がある. すぐには全試合生中継が難しい代わりに,
視聴者が連続ドラマのようにサッカーを見るように‘ストーリーテリング’ガ可能な一貫した中継を推進している”とした.
生態系に平和は当分難しいという話だ.
球団には、自主的に自己救済策を探す所もある.
江原道民球団である江原FCは、昨年から外部業者と契約をし、ホーム試合をアフリカTV等を通して自前中継する.
経費が厳しいが、中継カメラ5台, 現場スタッフだけでも25人以上使う.
一日の中継費だけで600万ウォン程度がかかる.
江原FC戦略事業チーム イム・ヨンミン主任は“カメラ6〜7台を設置する一般放送社中継とクォリティーの差はほとんどない.
1試合当たりのインターネット累積視聴者は2万名程度になる”とした.
浦項スティーラース, 城南イルファも球団自前放送をする.
1980年代有権者の心情のような
サッカーファンの現在の心情が, 1980年代の有権者と同じだという話も出ている.
野球にあまりにも押さえられて、中継も見ることができずにいるという話だ.
プロサッカーだけではない. 他の種目も境遇は似ている.
去る5月、女子バレーボールが日本で8年ぶりにオリンピック進出権を獲得したが, これを生中継した所はなかった.
プロ野球も、一時わずか何十名, 何百名の観衆の前でプレーしなければならなかった惨めな時期を経た.
Kリーグには自前中継も厭わない熱情的な‘チュクパ’たちが一杯だ.
この話がサッカーファンたちには慰めになるかもしれない.
キム・ナミル記者 namfic@hani.co.kr
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