2008年10月ハンギョレ21 730号

[ジョン・ジェスンの愛情学実験室]最終回-関係が成熟し、信頼があふれ出る、年齢を重ねた夫婦であるほど満足な性生活を楽しむ

[2008.10.10 第730号]

[ジョン・ジェスンの愛情学実験室]最終回-関係が成熟し、信頼があふれ出る、年齢を重ねた夫婦であるほど満足な性生活を楽しむ

最近、‘黄昏のロマンス’が大人気だ.
最高の視聴率を記録して最近終映した韓国放送 週末ドラマ<ママに角が生えた>で、80を超えたナ・チュンボクおじいさん(イ・スンジェ)とアン・ヨンスクおばあさん(ジョン・ヨンジャ)間の熱い恋愛は、黄昏のロマンスを‘社会的問題’にした.
彼らは劇中で青春男女に劣らず情熱的な愛を交わして熱いキスをする場面まで披露した.
‘黄昏のロマンス’はこれで終わらない.
70代の美しい愛を描いた漫画<あなたを愛します>が演劇で公演になるかと思えば, ‘本格老人ギャグ漫画’を標榜して老人の性生活を溌剌と描き出した漫画家 ユン・テホの<ロマンス>も、新聞連載で大人気を呼んだ. 出演陣の平均年齢が61歳であるミュージカル<ラブ>も老人の愛を描き、人気が集めたことがある.

≫ 映画〈死んでも良い〉は、老人も若者に劣らない性欲を持っているというメッセージを確実に伝達することによって、老人の性を省みさせる契機になった.性には定年がない.


既婚女性の90%“セックスレスは男の責任”

‘黄昏のロマンス’を描いた映画の中でも傑作は、断然ナンシー・マイアース監督のロマンチックコメデイ<愛する時 捨てるべきな 惜しいもの>(Something’s Gotta Give 註:邦題は「恋愛適齢期」)だ.
老人の愛をこのように 美しくて愉快でありながらも真剣に描いた作品が他にあるだろうか? 60代の事業家であるヘリ(ジャック・ニコルソン)は若い女性だけを選んで愛する浮気者だ.
彼がある日、自身にはこれ以上愛の熱情がないとし、執筆にだけ没頭する劇作家エリカ(ダイアン・キートン)に会い、愛に陥る.
この映画で切ない場面の中のひとつは、彼らの力に余るセックス場面.
セックスの途中、心拍数があまり増えて心臓麻痺になるのを心配して, 血圧測定装置のマニュアルを見るために眼鏡を探す彼らの姿は観客の爆笑をかもし出す.
痛ましいけれど美しい彼らの愛は、妨害屋キアヌ・リーブスも防止できない!

‘黄昏のロマンス’に関する医者達の一様な声は、彼らの愛は決して若者達の愛に劣らないということだ.
しかし、驚くべきことにいままで科学者たちは、‘老人が愛に陥った時、彼らの脳でどんなことが行われ、からだではどのような変化が発生するのか’に関する研究をきちんとしなかったのだ.
それで、わたしたちは老人の脳が愛に陥った時、ドーパミンの分泌量が若者達に比べてどの程度なのか, 性的欲望を醸し出すアドレナリンとテストステロンの数値がどの程度になるのか全く知らない. 科学者たちはまだ真剣に彼らの‘愛’を研究したことがないのだ.
老人の‘愛’に関する研究者が大きく不足した反面, 老人の性生活に関する研究は永く持続されてきた.
研究結果によれば, 老人は性関係回数が若者達に比べて顕著に減ったり 性生活をすべて放棄する場合が多い.
1970年代に実施された, 60歳以上の高齢者男女に対するアンケート調査によれば, 夫と妻が共に生活する場合、54%の夫婦が性的接触を定期的にしていて、一人暮しの場合には7%だけが性的接触をしていた.
自身の配偶者が性関係に対する関心や能力がなくなったと考える応答者は、男性が1%, 女性は14%であり, 自身が性関係に対する関心や能力がなくなったと回答したのは男性が15%, 女性は10%であった.
また、自身が性的に無能だと答えたのは、男性が29%であるのに比べて, 女性はほとんどなかった.
それなら、高齢者夫婦が性交を放棄するようになる年齢はいつだろうか? 米国のアンケート調査によれば, 男性は平均68歳, 女性は 60歳という.
また、既婚男性の約60%, 既婚女性の90%が‘性交をしなくなった責任は男にある’と回答した.

このような趨勢は、最近、生活の質が向上してバイアグラなど勃起不全治療剤が登場しながら大きく改善されている.
最近スウェーデン ゴーセンバーグ大学のニルス・ベックマン博士チームのアンケート調査によれば, 性生活をする70代の独身男性は去る30年間で30%から54%に, 女性は0.8%から12%に急増した.
米シカゴ大学が女性1550人と男性1455人を対象に実施したアンケート調査によれば, 米国の57〜85歳の男性のうち68%は最近1年間に最低1回以上のセックスをしたことがあると現れた. 女性は42%だ.
おもしろいことは、この数値が女性側の方がより大きく上昇しているということであり, 特に年齢の高い女性たちの中に性関係を望む者の数は増加しているが, 性関係が可能な同じ年齢帯の男性を探すことが大変だと吐露したという.

老人の性生活の増加趨勢は、我が国も同じだ.
漢陽大学校 大学院 看護学科 大学院生 イ・チャングン氏がソウルに居住する65歳以上の老人113人を対象に調べたところによれば, 回答者のうち19.5%が現在性生活を持続していて, 頻度は月平均1.37回であると明らかになった.
頻度は1ケ月に1回である場合が10人で最も多く, あとは2ケ月に1回(4人), 1ケ月に2回(4人), 1ケ月に3回(2人), 一週間に1回(1人), 1年に2回(1人)の順だった.
現在性生活をしない老人の場合, 最後に性関係を持った平均年齢が男性の場合は63.1歳, 女性の場合は57.4歳で, 全体平均が61.3歳だった.
最後の性関係年齢 61.3歳

興味深いことは‘素晴しい異性を見たら、相変らず興奮するのか’という質問に、男性老人の84%, 女性老人の14.3%が‘そうだ’と回答したという事実だ.
女性はより少ない反面、男性はいまだに素晴しい異性に反応した.
性生活をする老人たちがそうでない老人達より生の満足度がより高いことはよく知られた事実だ.
我が国の統計でも似た結果を得たのだが, 性生活に対する全体的認知度を表す‘性生活認識度’の場合, 男性老人は自我尊重感と自我成就感に, 女性老人は自我成就感と現実満足度に大きな影響を及ぼすことと調査された.

去る2002年、70代老人たちの‘旺盛な’性生活を写実的に描写した映画<死んでも良い>が封切りされて大きな話題を集めたことがある.
当時、映画は老人も若者に劣らない性欲を持っているというメッセージを確実に伝達することによって老人の性を省みるようにする契機になった. ‘性には定年がない’ということだ.

米テキサス州立大学の教授陣は‘なぜ貴方はセックスをするのか’に関する興味深いアンケート調査をしたことがある.
この調査に参加した2千名は‘貴方は性生活に満足か’という質問に、男性56%と女性57%が‘そうだ’と答えたが, 質問の内容を若干変えて‘貴方は性関係を十分に営んでいると考えるか’という質問には、56%の女性と68%の男性が‘そうではない’と答えた.
この研究を遂行したテキサス大のファイファ・シュワルツ博士は“55歳に離婚した後、最も立派な性関係を維持できた”と主張した. 55歳以後にセックスを本物として楽しむようになるということだ.
誰が見ても美しくて賢明な若い女性だといっても、性関係を成功的に維持できないし, むしろ配偶者との関係が成熟して信頼があふれ出る、年齢を重ねた夫婦であるほど満足な性生活を楽しんでいるというのが、彼の主張だ.

最近、チリの老人たちは非常に幸福な時期を迎えた.
チリのロプラド市では老人たちに‘バイアグラ’を無料で配布しているためだ.
ロプラド市長 コンジャロ・ナバレは‘生活の質向上には活発な性生活が必須’という趣旨で市民にバイアグラを配布すると発表し, 1500人の老人たちに1ケ月に4錠程度の勃起不全治療剤を受けとることができるようにした.
チリは今後他の地域でも同じ処置をする計画であると明らかにして、市民が歓呼の声を叫んでいる(我が国も支持率を50%くらいに上げることができる政策として‘保健所でバイアグラ配布’を薦めるところだ).
性に対する態度がどれほど国ごとに違うかをよく見せる一例だということができる.

‘黄昏のロマンス’を終わりに, 去る1年6ケ月間連載された愛情学実験室をしめくくらなければならない時になった.
愛に陥り始めた20代始めの若者達から80代の老人達の‘黄昏のロマンス’に至るまで, この連載コラムは愛に関する科学的な研究を、時には露骨的に, 時には冷静に伝えた.
愛に普遍的な法則があるならば、それは何かという真摯な努力を熱情的に遂行してきた科学者たちのおかげでこのコラムは誕生できたし, 彼らの努力は私たちの愛をより一層賢明にさせてくれることを疑わない.

何より、特別な愛

去る30年間の愛に関する科学的な研究を通して私達が得た教訓は簡潔だ.
私達は魂だけでなく‘肉体と脳’という生物学的機関を通して全身で愛するということだ.
それを受け入れて、私を正しく理解する時, 私達は賢明な愛に目覚めることができる.
すべての人々が‘わたしの愛は非常に特別だ’と考えるという点で、私たちの愛は決して特別ではない.
だが、普遍的な愛の法則から大きく抜け出されない存在であるのに、人生を通して毎度格別な色合いの愛を繰り広げるという点で、私たちの愛は何より特別だ.