□ リュ・イグン記者
ryuyigeun@hani.co.kr
□ 写真 リュ・ウジョン記者 wjryu@hani.co.kr
カリボン市場は物珍しい. 初めて来たためだというだけではない.
それぞれの家に架かっている簡体字の漢字看板がエキゾチックだ.
その通りは貧しい.
朝鮮族同胞たちの独特な抑揚と相まって、市場の路地は丁度1980年代の田舎町の風景だ.
ワンスンデ(註:腸詰)というハングルがうれしくて入った食堂のお姉さんは道を聞く記者に、北側の話し方で“ここには初めてお越しですか”と問う.
彼らにとっては、ソウルの人のように着飾った記者は珍しい異邦人だ.
ここだけでは、彼らは少数ではない.
ソウル カリボン洞に暮らす中国系(朝鮮族を含む)移住民は5千〜6千名にもなる.
この地域全体人口の25%を超えるのだ.

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中国系結婚移民女性の有権者運動を企画して支援する‘三銃士’がいる.
左側からジョ・ミョングォン<シナボ>編集長,チェ・ファンギュ牧師,キム・ヨンピル <中国同胞タウン新聞>編集局長.
少なくない人口だが、政治的には少数だ. 政治圏の誰も彼らには関心がない.
地方自治団体長たちと議会も同じだ. 市場が位置するカリボン1洞事務所やより大きい行政組織単位である九老区庁インターネットホームページには、彼らのための消息も,
政策もひとつとして見つけることができない.
多くの中国系移民が容易に韓国籍を取得して投票権を得ているけれど、まさしくその韓国で、他のカリボン洞民, 九老区民, ソウル市民,
大韓民国国民とは違い、正常な有権者としての待遇がなされていない.
“偏見と蔑視にも息がつまった” 彼らが動いた.
国内最大の結婚移民女性である中国系女性たちは、去る12月17日、カリボン市場のソウル中国人教会で有権者運動出帆式を開いた.
この日は中国系結婚移民女性60余名が参加した質素な行事だったが, 韓国有権者運動史上で新しい流れへ記録されるほどの日だ.
運動は国内結婚移民女性史最初の運動であり、参政権を活用して自身の地位と権利をさがそうという初めての運動だ. 移住女性たちは有権者運動宣言文で、このように叫んだ.
“これまで、わたしたちはあらゆる偏見と蔑視の中で静かに生きてきました.
しかし、今は選挙権を通して私たちの正当な権利を探して権益を向上させることができます.
結婚移民女性と家庭及び子供たちの問題に特別な関心を持って政策を作って実践しようとする(大統領)候補に私たちの票を集めます.”
彼らが“団結しよう!”という中国系結婚移民女性たちに投げた呼び掛けでもあるが, 私達の社会に投げかけた呼び掛けでもある.
まさに大統領選挙候補や政党など、現実政治勢力と集団が彼らの声にどれくらい耳を傾けるのかはわからない.
だが、中国系結婚移民女性たちは意味ある少数になるための運動を、大統領選挙がある2007年12月19日までずっと繰り広げる計画だ.
韓国男性と結婚した外国女性は1990〜2005年に15万9942人,
この中の62%である9万9164人が中国系だ. だが、これら皆が大韓民国国籍を得たわけではない.
中国系のほとんど半分に近い4万5千余名が投票権を持つようになり, 潜在的有権者である残りの女性たちは国籍が出るのを待っている状態だ.

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結婚移民女性たちは投票権があっても参政権を通して市民としての権利と地位を享受するやりかたを知らなかった.
すでに彼らは目覚めている(写真/シナボ提供)
移住女性を2ケ月間説得
有権者運動の主人公は、名前と顔がない結婚移民女性たちかもしれないが, 記憶しなければならないもう一つの名前もある.
中国系結婚移民女性有権者運動は、ある牧師の頭の中から初めて出てきた.
ソウル中国人教会のチェ・ファンギュ(42)牧師だ.
九老で8〜9年以上中国系移住民のための活動を行なってきた彼は、結婚移民女性たちが人格破綻者, アルコール中毒の夫による家庭暴力に苦しめられ,
夫たちは大多数が農村出身, 都市貧民, 再婚者等で、辛く汚く過酷な業種で生存の威嚇を受けながら生きてきたことを見守ってきた.
チェ牧師は、“彼らのためにこのように教会次元で奉仕するには限度がありました”としながら“移住結婚女性たちが自ら出てきて、問題を構造的,
制度的に解くための試みを悩んでいたらここまでくることになりました”と話した.
彼のアイデアに初めて接した移住女性たちは“良い考えだ”としたが, 確信を持てなかった.
投票をしたことがない彼らに参政権を行使しようという有権者運動はすぐには至らなかった.
中国系移住民たちが初めて韓国にきて驚くことには2種類あるという.
ひとつは24時間灯りがついたままの事務室や工場で、他のひとつはまさに大統領を投票で選んで、そのように選抜された大統領の悪口を思う存分言うということだ.
チェ牧師は、“この際、移住民たちが受動的な姿勢にとどまっているのではなく、自ら権利を探して地位を向上させることができるようにパラダイム(構造)を完全にかえてみたい”と話した.
チェ牧師と移住女性たちの2ヶ月余りにわたった説得と理解の過程を経て, 有権者運動宣布式は光を見ることになった.
有権者運動本部はソウル中国人教会だが、実はキャンペーン成功の半分以上は広報によるといっても言い過ぎでない.
都市と農村にちりじりに散らばっている移住民を一つに集めることは容易ではないことだ.
それで、中国語で発行されて主に漢族がたくさん読む<シナボ>(ジョ・ミョングォン 社長 兼
編集長)とハングルで発行されながら朝鮮族がたくさん読む<中国同胞タウン新聞>(キム・ヨンピル 社長 兼
編集局長)が賛同すると出たことはキャンペーンにとって大きな力だ.
隔週で発行される2新聞は、ソウル・安山・水原・大田・大邱 等で各々2万〜2万5千部が配布されて, 中国系移住民たちに影響力が大きい.
これらの新聞はキャンペーンを2007年大統領選挙時まで継続連載していく計画だ.
キム・ヨンピル(38) 編集局長は“実は、去る大統領選挙の時から朝鮮族同胞はどの大統領になれば同胞政策が変わると考えて関心はあったが,
90%以上が大韓民国国籍がなくて投票権がなかった”と話した.
ジョ・ミョングォン(38)編集長は既に発行された <シナボ> 12月22日紙に中国系結婚移民女性の有権者運動と関連した初めての記事が載った後,
“‘関心と期待が大きい’という連絡と反応が多い”と伝えた.
より大きい風もある.
ジョ編集長は“単純に投票権だけを行使するのではなく, 米国やカナダのように中国系も国会議員や市・郡・区
議員などの地方議員職に出て、中国同胞たちのために一言でも言うことができる環境になりたい”と話した.
中国系地方議員も誕生することを
被選挙権(選出職 公職候補)はまだ遠い話であることは間違いない.
それで、社会主義国で暮らしていた時にはなかったが、資本主義国にきて得ることになった投票権の重要性を結婚移民女性たちに拡散させるのが優先だと皆が話す.
有権者運動本部は組織を全国的に拡大していく計画だ.
また、境遇が似た東南アジアなど、他の所から来た移民女性たちも賛同させようと努力中だ.
チェ牧師は“2007年大統領選挙で終わるのではなく, その後にある国会議員選挙, 地方選挙でも有権者運動を継続して繰り広げる”と話した.
有権者運動本部は大統領選挙候補選択の原則的な基準2種類を提示した.
“経済発展と雇用創出, 換言すれば‘食べて住む問題’を解決できる候補, 結婚移住女性たちの家庭, 働き口,
子女問題など、地位と権益を増進させて結婚詐欺等の被害を蒙った女性たちのための保護対策を用意して実践する候補”だ.
チェ牧師には夢がある.
2007年12月19日以前に大統領選挙候補を呼んで移住女性有権者本部の名前で公聴会を開くというものだ.
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