2006年07月13日 第618号
建国と民族の誇りの太極旗を前に…
月曜日の度に愛国歌を歌って国旗に対する誓いをする子供の家…“まだ小さい子供たちに全体主義教育をするのか” 少数派父母たちの抗議は黙殺されて
□ ナム・ジョンヨン記者
fandg@hani.co.kr
□ 写真 リュ・ウジョン記者
wjryu@hani.co.kr
“私は誇らしい太極旗を前に、祖国と民族の無窮の栄光を….”
昨年春、京畿道 九里に暮らすユキコ・オノ(31・仮名)は、3歳の息子 ジンハン(仮名)がぶつぶつつぶやく声を聞いてはっと驚いた.
韓国人の夫と国際結婚をした後,‘国旗に対する誓い’を初めて聞いたのはその時であった.
おかしな人扱いされた日本人お母さん
ジンハンは子供の家で習ったと言う.
愛国主義に激しい拒否感を感じて日本でも一度も君が代を歌わず、日の丸の前でもお辞儀をしなかったユキコは子供の口から‘無窮の栄光’
‘からだと心を捧げて忠誠’という表現が出ると背筋が寒くなった.

△ ある行事で国旗敬礼をしている子供の姿.
ジンハンは‘国旗に対する誓い’を暗記することを面白がった.
‘東海の水と白頭山が’で始まる愛国歌も楽しそうに歌った.
ユキコは何日も悩んだが, 子供の家の院長に手紙を書いてジンハンのかばん中に入れて送った.
“世界と一緒に生きなければならない子供たちには(国旗に対する誓いは)溶け合わないと考えます.‘誇らしい祖国と民族’は、個人が自ら感じるべきことで,
自ら判断できる時に‘からだと心を捧げる’のではないでしょうか?”
だが、院長から帰ってきた答えは“理解してほしい. ほとんどの学父兄たちが求めている."ということだった
いくらか後、ユキコはお母さん会議の席でこの問題を持ち出したが, おかしな人扱いだけされた.
“皆がしているのに, 何が問題だ??” “いいじゃないか.私も小学校の時からそうして育った”
“日本人だから、そんなことを言うのではないか?”という囁きだけが聞こえた.
果して、韓国人と日本人の民族的差の問題だろうか.
あるいは、植民地と被植民地国家の歴史的体験の差から来る問題だろうか.
少なくとも、京畿道 ソンナムに住んでいるスミン(3)の父 キム・ジンス(32)氏はそうではなかった.
キム氏もまた去る5月に36ケ月にしかならない娘が愛国歌を歌うのを聞いて子供の家と一度戦いを繰り広げた.
“どこで習ったのかと暗に尋ねたら, 子供の家で習ったと言いました. 言葉もきちんとできない子供に対して、もうこんなことを教えるのか.”
一歩前に進み胸に手をおいて思案して、国旗に対する誓いの真似までしてみた.
教師に尋ねると, 一週間に一回ずつ愛国朝会をするという.
スミンは月曜日の朝ごとに太極旗の前で敬礼と誓いをして, 愛国歌を歌った.
“祖国の呼ぶ声を受けて立ち上がった私たち, 侵略を防いで災難を防ぐ郷土の盾, 国のために捧げたからだ….”
1982年の小学校2学年の時<民防衛の歌>を熱心に憶えたキム氏は、5月4日民防衛教育に出てこの歌を助詞、助動詞ひとつ間違わずによく歌った後,
子供の家 ホームページに抗議文を上げた. 今でも<民防衛の歌>を憶えている自身が悲しいためだ. 自身は知らずに熱心に憶えたが,
娘はそのようにしたくなかった.
担任教師と院長にも何度か愛国朝会を中止してくれと頼んだ.
だが、院長は“教育哲学”だとし、愛国朝会を続けると明らかにし, 周囲の学父兄たちも重ねて文を書いて院長に肩入れをした.
“独島(竹島)問題, ワールドカップ… わたしたちは皆大韓民国人なので共に泣いて笑うのではないでしょうか?
父母を私が選べないように、国も私は選択出来ず, だからこそ切実に信じなければならないのではないでしょうか.”
キム氏は“それなら、スミンを月曜日には出さない”と思ったが、スミンが子供の家を好きだったのであきらめた.
他の子供の家もやはり愛国朝会をするということを知って、子供の家を移す計画もやめた.
“何にもしらずに楽しんでいる子供に‘君が習う時ではないよ’と言えますか? 溜息だけですよ.”
愛国朝会は‘愛国朝会’や‘週礼’という名前で大多数の子供の家でなされている.
主に月曜日に講堂や大きい教室に全員が集まって並んだ後, 太極旗の前で敬礼と誓いをして愛国歌を歌う.
国民儀礼が終わると、院長は子供たちの前で訓話をする.
首都圏のある子供の家 院長は、“独島(竹島)問題やワールドカップのような愛国心と関連した示唆的な主題を選ぶ”と話した.
運動場の閲兵と週番教師の怒鳴り声がないだけで、愛国朝会の骨格をそのまま受け継いでいるのだ.
判断能力ない子供にとっては暴力
子供の家の愛国朝会はいかなる根拠で施行されるのだろうか.
女性家族部所管である子供の家は、教育部が勧告する教育過程に従わずに自律的に運営する.
だが、イ・ユンギョン全国保育労組事務処長は、“相当数の子供の家が幼稚園教育過程を準用して使う場合が多い”と話した.
教育人的資源部が2000年に発表した‘第6次幼稚園教育過程’は、健康・社会・表現・言語・探求生活など、5大領域に分けて段階別教育を勧告している.
社会生活領域には‘太極旗・愛国歌に対する礼節を知って守る’という教育目標が入っている.
だが、ここにも愛国朝会を毎週実施しろという指針は出ていない.
ユ・ソンヒ ソウル
ノウォン区立子供の家連合会長は、“国公立子供の家で大部分愛国朝会が実施されていると見ていい”とし、“実際の生活で国がどれくらい人々に助けを与えているのかを消防署や交通安全施設見学などを通して体験するのだが,
愛国朝会もこれと連係して自律的になされる”と話した.
問題は愛国朝会のような愛国心教育が幼い子供たちにとって望ましいかどうかという点だ.
国旗に対する誓いに出てくる全体主義的文言が子供たちに適合するかという論議だけだ.
善と悪の普遍的倫理さえ正しく立っていない子供たちに愛国心を教えるのは暴力だというのがユキコとキム・ジンス氏の考えだ.

△ ユキコ・オノ(左側)と三歳の息子ジンハン(右側).
ジンハンは国旗の誓い暗唱を楽しんでいるが、それを目にするお母さんにとっては辛いことこのうえない.
イム・ジェテク 釜山大乳児教育学科教授(乳幼児教育学会長)もこの問題に関して、いくつかの子供の家の院長たちと意見を交わしたという.
“子供の家院長が学父兄に良い姿を見せたいという感じがしました.
学父兄は話の理解もよくできない子供達が‘国旗に対する敬礼’ では真っすぐに立っているのを見ることになります.”
しかし、イム教授は、“このような慣行は子供たちを国家主義に埋沒させかねない”としながら、“時間と空間を超越した普遍的価値を教えることをせずに‘国家は無条件に正しくて忠誠しなければならない’という盲目的観念を教えるのは穏当ではない”と指摘した.
イ・ユンギョン事務所長も“幼児段階は認知的教育が適当ではない時期”とし、“抽象的概念である国家さえ理解できない子供たちにとって愛国朝会は
望ましくない”と話した.
日本の君が代強制と何が違っているのか
韓国と日本の学父兄は共通的に“自分の子供に国旗に対する誓いを憶える覚えさせることができない”と話した.
ユキコは“盲目的な忠誠を要求するという点で日本の日の丸・君が代強制と違わない”と話し,
キム・ジンス氏は“愛国歌と国旗に対する誓いは一番後に習って暗記するようにしてもらいたい”と話した.
国家主義に対するユキコとキム氏の触覚があまりにも鋭敏なのだろうか.
昨年から今年のはじめまで続いたファン・ウソク 論文操作事件の時、インターネットで‘ファン・ウソクを助けよう’とたった相当数のネチズンは青少年だった.
青少年はワールドカップ期間には‘われらは大韓民国です’と叫んで国家主義の祝祭に興奮した.
ユキコとキム氏はここで息子たちの未来を見る.
イム教授は“ドイツ
バルドローフプログラムに従う幼稚園では毎朝子供たちに美しい詩を朗読してあげる”としながら“判断能力もない子供達が一方的な国家主義教育を受けるのはやるせない”と話した.
“愛国朝会もあらかじめ教えよう”
子供の家と幼稚園がしなくてもいい国旗儀式を行う理由
愛国朝会は月曜日の朝に開く.
愛国朝会の由来となる日帝植民地学校でも月曜日の朝に開いた.
儀式は‘東方遥拜’と呼ばれる、東方にいる日王(註:天皇)に対するおじぎで開始した.
天皇陛下と日本に対する忠誠を確かめる皇国新民叙事の序詞につながって,‘祖国を愛しなさい’という校長の愛国訓話と高学年週番の勅語朗読も欠かせなかった.
このような風景はいまだに学校現場で飽きずに見られる.
特に、日帝時代‘皇国新民教育’という名前で行なわれた数多くの国家主義儀式は、1970年代初期の維新体制に際して大々的によみがえった.
学生達は教育勅語の代わりに国民教育憲章を, 皇国新民叙事の代わりに国旗に対する誓いを憶え始めた.
1990年代中盤を越えながら生じた変化といえば, 多くの学校が‘愛国朝会’から‘愛国’という単語を外し始めたのである.
もちろん、いまだに全学生を集めて運動場朝会を固守する学校もある.
ソウル市教育庁関係者は、“多くの学校が運動場朝会を減らして放送訓話などに変えている”としながら、“しかし、朝会は学校長裁量によって実施されることであり,
教育部や教育庁が指導・監督するものではない”と話した.
幼稚園や子供の家の愛国朝会も教師の裁量によって実施されるという点で学校とそっくりだ.
京畿
ヨンインのある市立子供の家で働く某(34)教師は、“大多数の子供の家がハングル・英語などの小学校内容をあらかじめ教えなければならないという考えを持っているために,
正規学校で進行される愛国朝会に沿って行う側面が大きい”と話した.
子供の家は皆自発的に愛国朝会を実施する.
取材途中に会った教師たちも“日に日に共同体精神が弱まる状況で、愛国心を教えるのは何が問題か?”という反応を見せた.
それで、国家に対する忠誠を確かめることから始まった,
軍事政権が植え付けた韓国人の内面意識がこのような子供の家の慣行を作ったという分析の説得力は大きい. |
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