2006年07月06日 第617号
性器成形までも必らずしなければならないのか
民主労働党 性少数者委員長が見た大法院の‘性転換者 戸籍訂正許可決定’… 貧困階層へと追い出された彼らに手術の莫大な費用は負担, 危険も.
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チェ・ヒョンスク 民主労働党 性少数者委員会委員長
民主労働党 性少数者委員会は、‘性転換者の性別変更及び改名に関する特別法’発議のための調査作業として性転換者たちにインタビューしている.
性転換者たちをインタビューしながら私達の社会の, 性転換者たちの、そして私自身の‘性別異分化された固定観念’を次から次へと確認している.
性転換者たちが自身の生涯を通して語る‘男性性’あるいは‘女性性’は、大部分が社会の性別異分化方式とそのまま似ていたり、時にはもっと頑固であって,
私は概して彼らの見解に同意しない. 時々是非を論じて論争になることもある.
しかし、私が同意しないのは、彼らと社会の性別異分化された考え方と行動までだ. 彼らの性別の正体と実体性は無条件に支持する.
社会のあらゆる差別と偏見と不利益の中でも、彼らは自身を当初のからだとは反対の性別であると確信し,
医学界が厳正な診断を通して確認して手術でからだと精神を一致させるようにした彼らの性別の正体と実体性に対して、社会が是非を問うことは全くない.
社会は彼らの幸福と存在方式をそのまま認めればいいことなのだ. 彼らの幸福追及権は他の誰の幸福も侵害しない.
最高裁判事たちの想像力がより拡大されることを
性転換者たちをインタビューしながら私の中に新しい性的ファンタジーが生まれた.
女性である私が男性のからだと欲望で女性あるいは男性と性関係をする場面を想像するというものだ.
快感の経路と程度がだいぶ違う. 以前のファンタジーよりもずっと楽しいと話すことはできないが, 最小限新しくて格別だ.
当分はこのファンタジーを愛用しそうだ.

△ 大法院は6月22日、性転換者の戸籍訂正を許可する判決を下した.
これで性転換者たちの生がすこしは変わることになった.
(写真/ ハンギョレ イ・ジョングン記者)
何故一度もこのような種類の想像ができなかったのか、性的ファンタジーにおいても性別に縛られた自分の固定観念がおもしろいばかりだ.
そういえば、私の異性愛的固定観念中に同性愛的性が47年間閉じ込められていた.
私は最近2年間、同性愛的性を追求して生きてきた両性愛者だ.
去る6月22日、大法院の‘性転換者戸籍訂正許可決定’は歓迎することだけのことはある判決だった.
反対した二人の最高裁判事さえ積極的な反対ではなく、特別法を通した許可を主張した.
これまで差別と偏見の中で非難と不利益を甘受しなければならなかった性転換者たちが彼らの幸福追及権を法的に認められ、社会の一構成員として交流することができる初めての門を開けることになったのである.
進んで、同性愛者, 移住労働者などの多様な少数者に向かって私達の社会がより壁を低くする契機になることを期待する.
ただし、戸籍訂正許可を受けるために望みの性別への性器成形手術までを条件として提示したことは行き過ぎだ.
大部分の性転換者たちは偏見と差別の中で貧困階層へ追い出されている. 彼らに性器成形手術の莫大な費用は負担になり, 手術の危険もある.
大法院の許容要件は性器成形手術の発達程度と当事者たちの性器手術要求程度を考慮していない.
最高裁判事たちの認識が不足しているというよりは想像力が不足しているものであったと願う.
非性転換者として性転換者たちの生と現実を想像することは容易なことではない.
言論が連日吐き出す性転換者たちの声が、市民と立法府,
行政府に性転換者をはじめとする多様な少数者たちの生に関する想像力を拡大させてくれることを期待する.
一方, 政策と制度を作るための想像力は徹底して現実に基づかなければならない.
民主労働党 性少数者委員会は、いままで生の過程一つ一つが大変困難だった性転換者20余名の生涯史を聞いている.
7月末までに約40名の生涯史を聞き, 約150名の性転換者を対象に人権実態調査を進行する予定だ.
8月には実態調査結果と生涯史を社会に知らせ,
9月の定期国会ではかなり以前から準備してきた‘性転換者性別変更及び改名に関する特別法’(仮称)を発議する予定だ.
国会議員たちが遅まきながら当事者たちの話に耳を傾けることを希望する.
その前に、胸を泣かせたいくつかの話を伝える.
手術費用準備のためにひたすら貯蓄
南の島で生まれた女の子が学校に入る前から立っておしっこをすることを切実に願っていた.
それも‘公然と’だった. ままごとよりはボールを追いかけて飛び回ることの方が好きだった.
一人の女の子を好きになったのだが, その子は他の男の子が好きだった.
落ち着いて見たら、その男の子と自分との差は‘唐辛子(註:「おちんちん」の別称)’だった.
それで、自分にもそれが生えることを希望した.
男の子たちと自分が違う列に立たなければならないことを小学校に入って知った.
‘この列は明らかに私の列ではないのに….’ その子はどの列に立っても困った.
ふくらみ始めた胸は包帯で押さえてぐるぐる巻きにした.
そうこうしながら生理になった. 衝撃を越えて、絶望だった.
どちら側に立ってもその子はいつもひどい目にあわなければならなかった.
常にひどい目にあうばかりの子は, 青少年は, 青年は, 列を分けるあらゆる場に行くことは嫌だったし行けなかった.
せっかくどちら側に立ってみても疑われたり追い出された.
女子中・高校, 公衆トイレ, 浴場, 洋服店等、いずれも同じだった.
彼は‘皆がいじめると私が思い込んだにしろ、私が男だというのはしかたがない’と考えた.
女子高中退, 家出, 自傷, 自殺未遂と続いた.
何より、彼自身も理解することができなかったために、生の勇気や欲望はみじんも出すことができなかった.
そのように、死なないだけの生を生きていくばかりだった.

△ ハリス(右側 写真)氏も住民登録番号の前番号を1から2に変えた.
性転換者性別変更関連法制定のための共同連帯も記者会見を行って特別法制定を要求した.
(写真/ ハンギョレ イ・ジョングン)
彼は二十八でソウルにやってきて、‘性転換者’という用語にインターネットで初めて接した.
“性転換者に対する説明を見て一気に自分自身が整理されました. その瞬間、道が広々と見えるようで、人生の計画が生まれました.
あまり遅くに知ってくやしいです.
幼い時、誰かが私に私を理解させてくれていたら、私の人生はこんなに苦労しなかったでしょうに….”
いつのまにか36歳になっていた彼は生活を新聞配達と牛乳配達をしながら送る.
男性ホルモン処方を受けて、誰が見ても男性である彼は取りあえず貯蓄するしかない.
乳房除去手術と性器除去手術を受けるためには多額の金が必要なのだ.
大法院は、性転換手術のうち費用が最も高い性器成形手術まで終えてこそ戸籍訂正が可能だという.
その次には、性別訂正訴訟のための弁護士費用を作らなければならない.
大法院判決当事者に‘接触’
今回の大法院判決の当事者に本当になんとか ‘接触’した.
彼は自身の身分保護のために、私に自身の番号を報せてくれなかった.
彼が党事務室から10回以上電話して出て、やっと私の携帯電話に連結してスパイと接するように会った.
彼は話す言葉が信ずるに足りる人だが、身分露出が怖くて裁判に参加できなかった.
彼は判決を伝える私の電話に、”感謝します…”という一言だけで、後は声にならなかった.
彼はその夜、一晩中声を殺して泣いた.
いまや住民登録番号が1番に変わるといっても、そんなに世の中が変わったのか? 借金と無職と小学校卒業の学歴と既に生きてしまった五十七の年齢….
私としては同意するのが難しい新しい世の中なのであるが, やはり私の想像力不足のせいだろう.
医療保険証を提出して病院に行き, 選挙をして, 銀行通帳を作って, 住民登録証を差し出して働き口を尋ね歩いたことが,
彼が多くの歳月をひとりで号泣しながら切実に恨んだ世の中だった.
去る6月初めの深い夜、沐浴斎戒して最高裁判事に嘆願書として懇求した世の中だった.
15年を一緒に暮らした妻と婚姻届を出したら住民登録証を提出して飛行機チケットを買って済州島へ新婚旅行に行くという.
性別訂正は1番と2番で列を分ける世の中で, どの列に立つかのレッテルを与えるというだけだ.
列を分ける世の中を越えて, 列もレッテルもない世の中が、私達が作っていかなければならない世の中だ.
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