2006年4月ハンギョレ21 606号

蘭芝島 作業室, ソウルを記憶しなさい
2006年04月26日 第606号

市長指示で2ヶ月ぶりに牛歩ながらも, 蘭芝美術創作スタジオ開館 
地方自治体が提供する無料空間で共同体還元 悩んでこそ

□ キム・スビョン記者 hellios@hani.co.kr

大部分が白いなかに射す光をあらわす絵を描く画家 ソン・ヨンギュ(35)氏.
彼は陰ったカンバスにアクリルで顔と手, 足, 背中だけに固執する. どこかに傷ついた記憶がそっくり含まれているようだ.
そのようなソン氏の顔に微笑が漂って‘他の作業’を予感させる. 去る4月6日に開館した蘭芝美術創作スタジオに‘広い’作業室を得たためだ.
“一般住宅を作業室として使用していたら120号がを超える‘大作’は夢見られなかったのです. これからは何百号もの絵も思う存分描けるようになりました. 来月開く個展に大作を掲げることはできないけれど、その後には狭いカンバスを抜け出した作品で観覧客を迎える ことでしょう.”


浸出水処理場リモデリング… 17人1年無料

現在、蘭芝美術創作スタジオにはソン氏をはじめ17名の作家が入居している.
彼らは2度の作品性と創作意欲・発展可能性などを基準とする専門家審査を経た後、面接を通して蘭芝島遊休施設だった浸出水処理場をリモデリングしたスタジオ入居者として最終選定された.
何と14対1の競争を勝ち抜いて作業室を用意された作家たちは、彫刻4人・設置美術3人・西洋画7人・韓国画2人・写真1人などだ.


△ 蘭芝島 浸出水処理場をリモデリングした蘭芝美術創作スタジオには17名の作家が入居した(左側).
入居作家 ソン・ヨンギュ氏が来る5月に開く展示会に掲げる作品を描いている.

作家を選ぶのに知名度を基準に定めなかったことと, 博士学位所持者が2人で海外留学派を減らしている. その反面、既存の作業室がある作家も含まれて、審査の公正性に汚点が残ることも.
何にしろ、ソン氏のように作業室がなくて創作意欲を眠らせなければならない作家たちが1年間全額ただでスタジオを使用する機会を得たことは大きな‘幸運’だ. この幸運はゴミの山の記憶に芸術魂を植えることでは終わらない.

去る6日の開館式でソウル市立美術館ハ・ジュヒョン管掌は“蘭芝美術創作スタジオが私たちの作家たちの国際化訓練場として育つようにする”としながら、”外国の作家と批評家を招請するプログラムも用意して、入居期間が終わる作家たちの作業結果を公開展示する計画”と話した.
入居作家たちが美術界の予備国家代表として‘選手村’生活をするようにするということだ.
当初、蘭芝美術創作スタジオ建設計画は、イ・ミョンバク ソウル市長の一言から始まった. 蘭芝公園を見回したこの市長が“遊休施設に創作村を造成してはどうだろうか”と話したことが契機だった.
それからまだ1ケ月にならないうちに国内外居住40歳以下作家を対象として入居申請を受けて、3月末に選定作業をしめくくった. まさに一瀉千里で進行されたわけだ.
ある美術人は、“地方自治体で創作スタジオを設立する過程においてもブルドーザー式行政がそのまま適用されました”と指摘した.
“蘭芝島の創作スタジオには、他の所とは区別される公共戦略が必要です. 作家が一方的受恵者に留まらず、地域社会に寄与できるようにしなければならなりません.”
例えば、環境生態公園として新たに出た蘭芝島の空間的特性を勘案した創作スタジオ建設計画が必要だった. 地方自治体と美術人が共存できる道を探さなければならなかったという話だ.
そのためには、入居審査項目に‘公共性確保’の項目を導入して入居作家を体系的に支援するプログラムマネジャーも置くべきだ.
これに対してソウル市立美術館 パク・チョンナム展示課長は“創作スタジオ開館は1段階過程でしかありません”としながらこのように付け加えた.
“今後、青少年美術体験空間を造成して、入居作家たちが参加するようにするはずで、薬品保存棟や流量調整所などを活用して市民と共にすることができるプログラムも用意する予定です.”

まだリモデリング工事によるペイント臭も消えていない蘭芝美術創作スタジオ. 夏が迫れば覆い隠されていた浸出水が出てきて鼻先を刺激するかもしれない.
それでも入居作家たちは“ソウル都心でこれくらい快適な空間を探し出すことは容易ではありません”と皆が話す.
すぐには古くなった歴史を大事に保管した外国の創作村の容貌を蘭芝島で期待することはできない.
問題は、入居作家たちが市民の血税で一方的に支援を受けないようにしなければならないことだ.
僅か2ケ月でリモデリング創作スタジオを超スピードで開館した‘能力’を創作スタジオプログラム開発に注ぎ込むならば、入居作家たちが地域社会に寄与する方案を十分に用意するはずだ.