[ 特集 ] 2003年10月09日 第479号
腿をちくちく刺して耐えろ
兵士の‘性欲’が許されない大韓民国軍隊…
‘軍人=制服を着た市民’へと認識を転換すべき
“軍隊ではよく耐え抜け.” 大韓民国軍隊には兵士の性欲はない.
セックス問題は“兵士=軍服を着た市民”として認識転換する前には解けない.
歪曲される兵士の性意識をどのようにすればいいのか.
“心で起きる情慾を弱めようという意思にもかかわらず、情欲がより一層位置を占めると感じたら、絶対にそれを弱められないと考えるべきだ.
単に、それを一度で弱めることができないと考えなければならない.
馬の取り扱いが上手い馬子でも、たったの一度で手綱を使えるようになったわけではなく、数えきれない程手綱を握って、結局、馬を扱えるようになったのだ.
したがって、欲望を一度に抑えられなかったとしても、引続き弱めようと努力しなければならないのだ.そのように継続して努力するべきであり、
そのように継続して努力する時、情欲を弱めることができる.”(ロシアの文豪 レフ・トルストイ)

写真/軍規で引き締められた訓練兵たち.二等兵と一等兵までは性欲を感じる余裕もないだろう.
(ハンギョレ イ・ジョンヨン記者)
部隊外で解決しなさい?
トルストイの話のように、人間の性的本能は、人間の意志で統制するのが難しい.
それほどのことだから、インドのマハトマ・ガンジーも“性欲に対する闘争は、刃の上を歩くようなものだ”という言葉を残したのだろうか.
人類の偉大な先師たちでさえこうであり、20代初・中盤の若者達の性的欲望は溶鉱炉の中の熔解鉄のように沸き立っている.
60万名の若い兵士たちが2年以上徴集されて軍服務をしている.
勤務時間が終わると、出退勤をする副士官や将校たちとは違い、24時間部隊のなかで食べて寝なければならない兵士たちの性はどんな姿だろうか.
当初の問題意識は、‘国家が徴集した20代兵士の性的欲望を抑圧するのが正当なのか‘ ‘兵営生活が兵士の性意識にどんな影響を及ぼすのか’であった.
だが、取材は、始めるやいなや壁に直面した.
まず、軍当局は、兵士の性問題に関する問題意識がなかった.
今年に入って、部隊で相次いで淫らな行為・自殺事件がひき続くと、国防部は軍規律強化特別綜合対策として、△兵営内事故を起こすほどの問題を捜し出して
△指揮官が直接セクハラ予防教育をして △匿名のアンケート調査を含む大々的調査を繰り広げて △性暴行加害者処罰強化などを表明した.
軍は兵営内 性醜行防止など、事故予防次元で接近するだけで,
兵士の性問題に対して、‘部隊のなかでは事故を起こさず、我慢して、部隊の外で解決しなさい’という方式だった.
軍関係者は、“徴集制下で多様な階層と性格の兵士が外部と断絶された狭い空間で統制された内務生活をする.
現実的に彼らに性生活の権利まで保証することは難しい.
何よりも、殴打根絶や兵営生活与件のように予算投入と教育を通して改善できる懸案と違い、解決方案がない”と話した.
社会の全般的雰囲気も、兵士の性問題を‘問題’として受け入れない.
最近のソウル行政法院の、軍幹部と先任兵の叱責と暴言・暴行などに耐えられなくて自殺した兵士に対して国家有功者として認めることができないという判決は、このような社会の雰囲気を反映している.
裁判府は判決文で、“軍組織を維持するために、ある程度の軍規教育や叱責は必要不可欠であり、暴行や暴言があっても、持続的だとか程度が激しくなければ、軍人としてこれを克服して、自殺のような極端な方法ではなく,
上部に是正を要求する等の方法で解決できる”と明らかにした.
暴行や暴言も克服できていない‘大韓民国軍人’にセックスする権利までも認めることは時期尚早に見える.
女性運動家たちは、‘国家が20代の兵士を集めて性的欲望を抑圧するのが正当か’という発想は、男性中心の視点だという反応を見せた.
日本軍が第2次世界大戦時、‘男子の性欲は排せつしなければならない’という論理で従軍慰安婦を作ったように,
このような問題提起が兵士の売春など、逸脱した性行動を合理化する危険があるということだ.
‘性売買したことがある’20%
兵士の実態を知るために、10月初めの二日間、ソウル市内ターミナル等と駅で、休暇に出てきた兵士200人を対象にアンケート調査を繰り広げた.
調査結果によれば、半分以上の兵士が性的欲求を感じるが、じっと我慢したり運動をすれば収まると現れた
‘軍服務しながら、性的衝動や欲求を感じる時があるか’という質問に、‘時々ある’という応答が42%(84人)で最も多かった.
応答者の中5人は、‘非常に多い’(ほとんど毎日),
15人は‘多い’(2〜3日に一度)と答え、全体10%(20人)は性的衝動を強く感じると調査で出た.
これに比べ、‘別にない’(61人・30%),‘ほとんどない’(40人・20%)は、応答者の半分ほどだった.
写真/女友達と盛り場を散策する兵士.
兵士は運動と忍耐力で健全に性欲を押さえ込んで過ごす.
(ユ・ウジョン記者)
応答者を階級別に見ると、二等兵と一兵の中では‘性的衝動を感じる時が非常に多い’という応答者が一名もない反面, 上兵と兵長は5人だと調査された.
‘性的衝動が起こる時が多い’という応答も、二等兵と一兵は計4人であったし, 上兵と兵長は11人だった.
‘時々性的衝動が起こる’と答えた二等兵と一兵は25人であったし, 上兵と兵長は59人だった.
兵士の性欲は徹底して‘古参順’に現れた.
端的に、アンケート調査に応じたある二等兵は、“部隊で自慰行為をしようとしてもする余裕がない”と話した.
‘性衝動を感じたらどうするか’という質問に対して、‘そのまま耐える’(61人・37%)という応答が最も多かった.
次に、‘運動を一生懸命にする’(54人・33%), ‘外出・外泊時まで耐える’(24人・14%)などの順だった.
‘いつ性衝動を感じるか’という質問に、応答者162人中、最も多い70人(43%)が、‘テレビで卑猥な場面を見た後’と答えた.
次に、‘就寝時間’(21人・13%),‘部隊員間で淫談をした後’(17人・10%),‘外出して部隊に戻ってきた後’(16人・10%),
‘大変な訓練を終えた後’(8人・5%)などの順序であった.
兵士は性的衝動の強度に対して、‘なんとか耐えられる’(58人・33%), ‘少しの間感じても忘れられる’(54人・31%),
‘すぐ忘れて業務に熱中する’(39人・22%)と答え、応答者の86%ほどは‘なんとか耐える’と答えた.
‘耐えるのが難しい’という応答は13%ほどだった.
一方,‘入隊以後、お金を払って買春をしたことがあるか’という質問に、20%(38人)が‘ある’と答えた反面,
大多数(150人・80%)は‘ない’と答えた.
今回のアンケート調査で、‘休暇に出てきた兵士は軍服姿で私娼街を訪れる’という一部の先入観と違い、大多数の兵士は比較的健全な生活をしていると現れた.
兵士に部隊で性的欲求を解消する方法を自由に書くように、という設問では、‘運動を一生懸命にする’と‘外出・外泊定例化 ’‘
自慰行為ができるようにトイレを清潔にしてほしい’などが出た.
何名かの兵士は、‘方法がない’‘退役して解決する’という意見を出した.
一方, 血気旺盛な兵士を指導する部隊幹部たちの苦情も侮れない.
ある中隊長は、“軍隊に行った人ならば知っているだろうが、軍隊では時間があればサッカーをする. 特に、公休日ならば、朝食を済ませてサッカーをして,
昼食を食べて、またサッカーをして, 夕食の後にサッカーをする等、太陽が昇っている間は継続して運動させる場合もある.
兵士に運動をさせる目的は、体力鍛練と、大それた考えをする時間を与えないということだ.
普段兵士たちの状態を観察していたが、外出や外泊などを適切に活用し、外の風に当たるようにしてあげる”と話した.
90年代末から各部隊で、ダンス, サムルノリ, 英会話, 漫画, 漢文, 演劇. コンピュータ,
ボディビルなど、サークル活動が活発なことは部隊管理次元で自己主張が強い新世代兵士の欲求不満を解消させて、事故を予防するためだ.
写真/英国軍は兵士が恋人と共に兵営で夜を共に送ることを許諾している.写真は英国軍がバレーボールをする姿.(GAMMA)
恋人との寝床を許した英国軍
一方、外国では兵士の性問題を‘平和時に兵営内で軍人をどのように扱うか’次元で取扱う.
昨年3月、英国軍スポークスマンは、未婚英国軍人が自身のセックスパートナーと一緒に軍兵営で夜を共に送ることを許諾していると発表した.
英国軍スポークスマンは、“平和時に兵営内で軍人をどのように扱うかという問題を深刻に検討してきたのであり,
今回の政策は、私達がいくつかの規則をどのように緩和しているのか見せる一例だ.
軍人もひとりの人間であり, したがって、彼らの私生活は彼ら自身の問題”と話した.
英国軍当局は、空いている既婚将校幕舎利用の他にも、未婚将兵が週末に恋人と共に送るために予約できる多数の‘福祉館’を建てていて,
適切な構内施設内での飲酒も許す予定だ.
英国軍は、この政策と12週新兵教育に関する規則緩和で、新兵の服務放棄を防止できることを期待している.
英国軍は徴兵制であるわたしたちとは違い、募集兵制だ.
韓国軍と英国軍が処した状況が違うが, 軍の人権に対する接近視覚には注目する必要がある.
兵士の性問題は、単純に兵士にセックスする権利を保証するということではなく, 軍での人格的な生の保証という拡大された概念だとみることができる.
兵士を徴集した国家には、事故予防次元のプログラムだけでなく、適切に休息して欲求を解消できる施設や制度などを改善するように努力しなければならない義務がある.
最近ふくらんだ各種軍関連事件、事故の根本問題は、軍当局が軍人個々人を、一般市民と共に人権と尊厳性を持った人格体と見ないことにある.
社会変化に合わせて、軍当局が兵士を値段が安い戦闘力ではなく、憲法上保証されている基本権を享受する権利がある‘軍人=制服を着た市民’への認識転換が必要な時だ.
クォン・ヒョクチョル記者 nura@hani.co.kr
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