2002年11月ハンギョレ21 436号

在野の歌客を呼び集めるデジタルノレバン
… オンライン審査で動映像CDに音盤も製作
[ 文化 ] 2002年11月28日 第436号

わたしも歌手だ!
在野の歌客を呼び集めるデジタルノレバン
… オンライン審査で動映像CDに音盤も製作


同じ町内に暮らす17歳の同い年、ヒョジョン, スビン, ヘジョン(京畿道 龍仁市 スジ邑 プンドクチョン)は、自他が認める‘歌の鬼’だ.
ご飯を食べる時も, トイレで座っている時も、休む余裕がない.
それで、ポケットに千ウォン札が2枚だけあれば意気投合, 直ちにノレバン(註:カラオケ)に直行だ.
最近、彼らは‘デジタルノレバン’にはまった. 一日も欠かさずに必らず通っている. お小遣が充足している日には、一日に二回は出入りする.

“マイクの音質もきれいで, 雰囲気もこざっぱりしていて、何度も来るようになりました. 最も良いのは、私達が歌ったのを他の人々に見せられるということです. 全国の誰でもが私を見られるということで, 震えるようなことですが、ぴりっとするでしょう.”

 
“私の歌の実力を評価してください”

写真/'私だけのCDを欲しい?' 録音室を揃えたノレバンでは、比較的良い音質のCDを作ることができる.(リュ・ウジョン記者)

‘デジタルノレバン’は、オフラインノレバンにオンラインサイトを結合したものである.
ヒョジョンたちが常連として訪れるミュージックネティアンノレバンは、歌を歌う姿を動映像CDに収録できる.
このCDは、インターネット ポータル ネティアン(http://music.netian.com)と連結できるプログラムが含まれていて、自らの歌を鑑賞できるだけでなく、直ちにインターネットに載せてオンラインオーディションに応募できる.

“少々歌える子供たちなら、みな自分の歌の評価を受けたいですよ. 学校で上手に歌える子供は、既に一度くらいはみなデジタルノレバンに来ているでしょう. 顔を知っている子が歌を歌うのをインターネットで見ると、本当に笑えますよ.”
 
“率直に言って、最近テレビに出てくる歌手たちを見ると、私より歌が下手じゃないかと思うことが多いです. 顔が可愛く生まれて、企画社で育てられたら、そんな風に浮かび上がるのだなあと考えますよ. そんな時には、イ・ソンヒ姉さんは最近の歌手達よりもはるかにずっと上手いという考えまで出てきます. ノレバンにきてマイクをつかむ度に, 私も専門的トレーニングを受けることができたらどれくらい良いか, 率直にそう思います.”

写真/広くて清潔な、単独で開放感を生かしたインテリアは、最近のデジタルノレバンの特徴だ.(リュ・ウジョン記者)

一ヶ月前くらい‘ノレバン猟奇女’が爆発的な人気を博したインターネットノレバン サイト アイシンガー(http://www.isinger.co.kr)には、毎日150〜170曲あまりが上がってきて、ネチズンたちの審査を待つ.
アイシンガーで自社開発したノレバン機器は、中央のコンピュータサーバーと連結して、客たちがこの機械で歌を歌った後、直ちにインターネットに載せることができる.
‘ノレバン猟奇女’とは、マイクを恥ずかしそうに両手で握って歌を歌った女子高生が、興が乗るとズボンを捲り上げて握り、壁を押さえて苦闘する姿がそのままインターネットに載って、30万回を超える照会数を記録した.
だが、普通、アイシンガーサイトに自身の姿を上げる者たちは歌自体で勝負しようとする.
ネチズンたちはこれを見て、各自 1〜5点までの点数を与え, 最も多い点数を受けた人がその月の‘ジャン’として選抜される.
アイシンガーは先月、‘ジャン’13人を集めて公開オーディションを繰り広げた.
ここで3等賞を受けたジホ(19・全羅北道 益山市)は、去る7月、アイシンガーに初めて出会い、面白くなった. ‘サイ’(註:ヒップホップ系シンガー)と顔が似ていて、わざわざ違うように見せようと髪を押し付けたというジホは、自分だけの個性とスタイルを最も重要視する. オーディション参加者の中にも、自分が作曲した曲を歌ったのはジホが唯一だった.

“高校1年の時から、ラップに夢中です. インターネットに自分の姿を上げる前までは、自分はどの程度の実力なのかを確認することができませんでした. 率直に言って、歌手になりたいですよ, できることなら.”

 
‘歌手のように’歌って、空中波スターに



写真/インターネットノレバンサイトには、ネチズン評価を望む動映像物が絶えず上がってくる.

インターネットノレバンは、このように歌手になりたい青少年たちの欲望を正確に掌握し, ‘狭き門’ではあるが、その可能性を開けておく.
10余の演芸企画社と提携しているネティアンは、今月末までオンラインで高い点数を受けた人々を集めて、次月中旬に競演大会を開く計画だ.
ここから一等へ選抜されれば、<チェロ>2集製作に客員歌手として電撃起用するという条件を掲げた.
アイシンガーもネチズンが選んだインターネット歌手が十分に商品性が あると判断されれば、専門企画社と連係して空中波をにぎわすスターに育てるという計画を持っている.
全国に70ケ所の加盟店があるサイバリアノレバンは、ノレバンに設置されたウェブカム(註:カメラ)を通してリアルタイムで企画社のオーディションを受けられるようにした.
ノレバンの側では、‘ここで遊ぶと、私が選ばれるのでは’という期待を注入して常連を作って, 企画社は自ら新しい顔を発掘できる機会であるために、‘妹が良くて、妹婿も良くて式’になる.

だが、歌手が誕生するのは容易ではないことで,皆が放送に乗ることも出来ない.
素朴だけれど自分のCDを欲しい人々には、低廉な価格で録音できる施設もある.
ネティアンノレバンは録音スタジオを揃えていて、このような人々を手まねきしている.
12曲程度が収められるCD一枚を作る のに30万ウォン程要る. 100万ウォンを超える専門録音室に比較すれば、遥かに安い価格だ.
ここではインターネットの長所を最大限に活用し、歌を歌うと、これをレコード専門プロデュース会社にオンラインで送り、ここでマスタリングの過程を踏む.
先月こちらで録音をしたムン・ヨンゴン(36・重装備レンタル業)氏は、今月ももう一枚のCDを準備中だ. 先般は普段好きな歌を集めたとすると, 今度は放送によく乗らず、たくさん歌われることもしなくなってきたトロットの名曲を厳選する計画だ.
歌手が夢だった彼は、自身のアルバムが生まれると、20余枚を複写して周辺の人々に分けて, 運転する度時に楽しく聞く.

90年代初め、ブームにのり始めて幾何級数的に増えたノレバンは、現在全国に3万2千余ケ所で、市場は既に飽和状態に達した. 草創期である92年にはソウルに60ケ所だったノレバンが、8ケ月で1600ケ所に急増する、驚くべき伸張傾向を見せた.
その間、ポンプ ノレバンなど、一時的流行にもかかわらず、適当な活路を探せないまま他の業種に押されてリモデリングをしたり、多様な事業を模索している状況だ.
しかし、全国的に一日平均200万名というノレバン利用客は相変らず無視できない数だ. ノレバンは外皮を絶えず脱ぎ変えて存在せざるをえない市場であるわけだ.

このような状況で、インターネットノレバンは我が国の誇りである強大な情報通信インフラを結合させた新しい収益モデルとして登場したのである.
これに伴い、サイバリア・ティンガティンガ(www.tingga.com)をはじめ、アイシンガー・ネティアンなどが加盟店確保を大々的に前面に押し出して、市場に羽振りをきかせるために奮闘している.


音楽界のオンライン攻略道具

イ・ヨンミ韓国芸術研究所研究員は、“インターネットノレバンが自分表現の発現を極大化するように見えるが、結局は既存大衆文化システムとしての吸引力がより一層強まった”と話す.
猟奇的な表現でも, 歌手の完壁な再現でも、インターネットノレバンでの遊びは、創意力ではなく、摸倣水準にとどまり, これは商業主義音楽の論理と影響力を強化させるだけという指摘だ.
また、企画社に代表される音楽界は、サイバー空間でオーディションをイベント化して、少ない費用で適当な歌手を発掘して利得を得るのだ.
インターネットノレバンを消費する心理には‘歌手とは別世界’,‘それでも歌手になりたい’という欲求が交差している.
インターネットノレバンは、その欲求の隙間に食い込む.
‘歌手のように’感じろと誘惑するのだ.

イ・ジュヒョン記者 edigna@hani.co.kr