2002年10月ハンギョレ21 429号

色仕掛けから平和の象徴まで… 北朝鮮 美女応援団を見る多彩な見解
[ カバーストーリー ] 2002年10月10日 第429号

2002 秋 朝鮮女者
色仕掛けから平和の象徴まで… 北朝鮮 美女応援団を見る多彩な見解


1983年12月3日夜9時40分 釜山大多浦 1km近海.
朝鮮労働党作戦部傘の元山連絡所53方面案内員2人が簡易潜水艇で潜航した.
潜水服を着た彼らはチェコ式自動拳銃, ベルギー制拳銃, 手投げ弾で武装して陸に迫った.
任務は1年前に侵入させた南派工作員と海岸で落ち合い、帰還させること.
しかし、彼らは海岸を守っていた軍人に捕まったし、北朝鮮 簡易潜水艇は大多浦南の12km海上で海軍艦艇に撃沈された.

64年から80年代中盤までの20年間放映された韓国放送(KBS)の看板反共ドラマ <実話劇場>は、74年の朴正煕大統領狙撃未遂事件を起こしたムン・セグァンを素材に、‘朝総連’編を送りだした.
計35回の‘朝総連’で、萬景峰号船長 役をした俳優 ムン・オジャン氏の冷酷な演技を見て、国民皆が興奮して朝総連に対する敵愾心が沸き立った.
南の方では、金日成 北朝鮮首席の故郷である平壌市萬景台区域の萬景峰から名前を取った萬景峰号が対南工作船の 代名詞として固まった.


スパイ工作船がやってきた?

写真/北側応援団には平壌音楽舞踊大学・平壌演劇映画大学に通う女学生たちが相当数含まれている.

‘大多浦港に萬景峰号が入ってくる?’ スパイを捕えた所に工作船が入ってきた格好だ.
有り得ないことだ.
だが、有り得ないことも時々起きるのが人が生きる世の中だ.
2002年9月28日午前、釜山アジア競技大会北側応援団293人を乗せた萬景峰92号(9672t級)が大多浦港に入港した.
北朝鮮応援団宿舎として使われた萬景峰92号は、在日本朝鮮人総連合会(総連) 所属の商工人たちが義援金を出して、去る92年に建造した船舶だ.
厳密に正せば、70,80年代に南の方で‘悪名’高かった萬景峰号とは別の船舶であるわけだ.
それでも、はじめのうちは萬景峰92号も萬景峰号だと強弁する人もあった.
当初、警察は一部極右勢力のテロ可能性を心配し、萬景峰号がイカリを下ろした埠頭80m前に統制船を設置することもした.
だが、いらない心配だった.
休日だった10月3日朝、早くから大多浦港には北側応援団を見ようという市民が駆せ参じ始めた.
ゴザと食べ物まで抱えて席を占めて座って家族で遠出にきた一部市民も目についた.
四日目、大多浦港に出てきたというイ・フィウォン(48・釜山 沙下区 ダデ1洞)さんは古いアコーディオンを持ち出して<故郷の春> <われらの願い> <アリラン>など、南北双方で馴染まれた歌を演奏して、北側女性たちが姿をあらわすのを待った.
近隣のアパートに住んでいるという主婦 ヤン・ジョンイム(38)さんも、夫 ユン・ムンギョン(41)さんと一緒に、いち早くカメラを持ち出して萬景峰号の前に立って北側国旗である北朝鮮国旗を背景に記念撮影をした.
ヤンさんは“テレビで見ると、皆可愛くて清純な姿なので、少し離れた場所からでも一度直接見てみたくて出てきました”としながら“北朝鮮は韓国と違い、伝統的な美的基準を持っていると聞いたのですが, 今回やってきた応援団は南の趣向に合わせて選んだのか、南の芸能人たちと似ていたようです”と話した.
夫 ユン氏も“最近、会社ではすっかり北側 女性応援団の話ばかり”と身を乗り出した.
“ああ, もうすでにチケットは無いですよ…”

写真/ "わたしの音楽をちょっと聞いてみて" イ・フィウォン(48)さんが大多浦港の萬景峰号前からアコーディオンで<アリラン>を演奏している.

もちろん、歓迎一色ではなかった.

慶尚南道 居昌 出身というハ・某(70・釜山 金井区 金紗洞)さんは、北側応援団の姿を詳細に見るために望遠鏡まで準備してきた.
しかし、ハさんは萬景峰号に翻る北朝鮮国旗に対しては拒否感を明確に表した.
朝鮮戦争後、‘共産軍’討伐にも参加したという彼は、
“共産主義者はひどい. 北朝鮮に与えてもらったことがあるでしょうか.
私達が北に応援団を送っても、可愛い女子大生たちを選んで送るなんてことはしませんよ.
彼らに本当に統一を願うのかを聞きたいです.‘私たちのやり方’で統一しなければなりません”と声を荒げた.

10月3日午後、金井体育公園ではバスケットボール南北対決が行われた.
だが、過去のように死を覚悟した決闘式の殺伐した雰囲気とは違い、祝祭の雰囲気であった.
北側応援団は釜山金井体育公園バスケット競技場にいち早く到着し、応援を始めた. 応援道具は北朝鮮国旗, 拍子木等であった.
北側歌謡である<口笛><オンヘヤ>など、非常に楽しい歌に合せた踊りと歌で注目をかき集めた. 試合が始まると、選手のプレー中の姿に感嘆の声を叫んだり、北側選手の名前を連呼した.
特に、北側応援団を指揮する リ・ユギョン氏は、北側応援団が“祖国”を 叫ぶと、南の観客と応援団側に向けて耳に手をあてる動作を反復して、“統一”という叫び声を引き出すこともした.
前日の経験のためか、観衆皆が参加するウェービングなど、‘共同’応援も 滑らかになされた.
興が沸いた観衆は、北側応援団 リ・ユギョン氏の指揮に合せて“祖国, 統一”,“われらは, ひとつだ”を連呼し、競技場が熱く盛り上がった.
試合が終わった後、北側応援団は リ・ソンエ・イム・チュンシル・チ・グジュさんなどが<統一アリラン>歌に合せて、歌と非常に楽しい踊りを繰り広げてみせた.
席を立って帰ろうとしていた数千の観衆はびくともしないで、踊りの動作一つ一つに感嘆の声を叫んだ.

連日、北側美女応援団が話題を引き起こしたアジア競技大会の組織委員会関係者は、“今回の大会には人気種目は なく、人気チームがある”という冗談を言う.
大会開幕前まではプロリーグスターたちが出場するサッカーや野球などが観衆を集めると予想されていた.
ところが、予想外に北朝鮮チームの試合に観衆が駆け込んでいる.
他の試合には観衆がなく、近隣の中・高等学校学生達が空席を埋めるために動員されたりもするのに、北朝鮮チームの試合はチケットが売り切れになって、闇チケットまで登場した. 北朝鮮チームの試合が行われる競技場のチケット売場には、“来たら, 既にチケットが無いって?”という観衆の抗議が続出したりした.

ワールドカップ時に赤い悪魔があるならば、アジア競技大会時には‘赤い美女’があるという話が出る程だ.


“気を許すと頭の中が赤くなる”

写真/ '来た, 見た, 勝った'.
一糸不乱な応援を繰り広げた北側応援団も、試合内容が火を吐くと, 自身も知らないうちにむっくり立ち上がったりした.

10月3日、柔道の試合が行われた釜山 九徳室内体育館で会ったキム・ジュンキ(43・釜山市 金井区 ジャンジョン洞)さんは“話題になっている美女応援団を直接見てみたくて友人と共に来ました”と話した.
キムさんは“北側女性には、可愛いという言葉よりはきれいだという方がより似合うようです. 妹たちの若い時の姿を見ているようで…”と言い、“とてもきれいだ”という言葉を繰り返した.

一部では‘気を許して眺めると、自身も知らないうちに、頭の中まで赤くなる’と、北側の色仕掛けを用心しようという主張も出てきた.
タイトルが‘色仕掛け’である10月1日附<朝鮮日報>コラム‘万物像’だ.
“色仕掛けは兵法36計中の妙手だが、同様に不利な戦術に属する.…北朝鮮 応援団293名のずば抜けた美貌が連日の話題だ. 大部分が20代の女性芸術員と女子大生だけで構成されている.
ところが、‘やはり南男北女!(註:朝鮮では昔から「男は北、女は南」と言われている)’という言葉も新たに膾炙されていて, ‘成形を知らない純粋美’という称賛も飛び交う.
ただし、何故男は無しで女性だけが来たのか気になったり, 女優のように華やかに笑う顔の間で北朝鮮国旗を振る姿に陶酔もしかねない. ‘美しさは善なるもの’として惹かれる時、色仕掛けは的中する.”

アジア競技大会開幕直前までは、一部では‘南の土地で北朝鮮国旗を持って応援する北側応援団をどのように見るべきか’式の論議がおきた.
<朝鮮日報>のように色仕掛けを警戒しようという声があったが、このような論議は霧散していった. 北の女熱風が色仕掛け論議を眠らせたのである.
このような現状の背景には、‘女は可愛ければ全てのものが許される’という外貌至上主義がある程度位置を占めていることが事実だ.

言論批評専門 週間新聞である<メディア今日>のシン・ミヒ記者は“北側応援団のニュース価値は充分にあるけれど、毎度記事ごとに‘ずば抜けた美貌’ または‘美女’という修飾語がつかなければならないのか疑問だ”としながら、“万一にも、南北関係の本質を曇らせかねない粗雑な女性商品化報道は自制しなければならない”と話した.

ある国策研究所 研究員も、“手に触れたいと、北側応援団のバスにすがる中年男性たちや、応援団の外貌だけを強調する言論報道は問題が少しある”と 話した.
彼はまた、“北朝鮮 研究者の間で言われる冗談の中に‘南北権力者たちが共有する文化に、'封建的女性観’というのがある. 南北皆が女性を対象化する家父長的女性観から大きく抜け出すことができずにいる”と主張した.


花の旋風よ, 南北関係に薫風であれ!

写真/バスに乗った北側応援団が釜山市民に手を振っている

警察などが '安全’を理由に、競技場で応援団と観衆を'源泉隔離'したため、競技が終わった後、釜山市民は応援団が乗ったバスに駆せ参じた.
このような主張に対して、南北関係の進展と民族和解側面が重要だという反論も出てきた.

キム・チャンス 民和協 政策室長は、まず北側応援団をおいて男性優越主義や俗物的な‘男根主義’が表れたという主張を全的に否定してはいない.
だが、彼は女性応援団が南北関係におよぼす肯定的影響に注目した.
“率直に言うと、男性応援団がやって来たとしたら、このような関心を集められないのではないでしょうか. 軟らかい女性のイメージが北に対する硬直した視線を緩和するのに寄与しました.
北が国際体育行事に大規模女性応援団を送ったことは、南の方だけでなく、国際社会に北が孤立的で閉鎖的な体制ではないという姿勢を見せたのです.”

イ・キム・ヒョンスク 統一教育協議会 共同議長は、民族和解次元で女性応援団を平和の象徴として受け入れようと主張した.
彼は、“変化の過程でイメージを軟らかくして、平和の象徴として若い女性を送り、世界の注目を集めようという企画意図があるということができます”と前置きした.
だが、彼は“このような北の意図を不純にではなく、若さを美しさと平和の 象徴として受け入れましょう”と話した.
彼は北側に対して、次の南北交流機会にも女性をたくさん送れと注文した.
北側がアジア競技大会は若者達の祝祭だから若い応援団を送ったが, 次の機会には、どうせならおばあさんたちも半分ほど混ぜて送ればもっと良いと話した.

一方、北側応援団の投げかけるメッセージの窮極的な対象は米国だという分析もある.
ソ・ジェジン 統一研究院 選任研究委員は、北側応援団が着てきたナイキの帽子とジャージに注目した.
北側が女性応援団を通し、銃の代わりに平和を前面に押し出したとすれば, 米国の代表的商業キャラクターであるナイキを公開的に着用し、‘私たちの体制は開いていて、商業的マインドも持っている’という対米メッセージを送ったという説明だ.
彼はこのような北側のメッセージは、最近の改革の動きと噛み合い、意味があると分析した.

‘北朝鮮国旗を掲げた彼女’たちを眺める南の側の見解にはねばっこい性的欲望, 資本主義商業性, 単純な野次馬根性, 民族愛と同胞愛, 統一熱望などが入り乱れている.
南の観衆は、各競技場で南北選手を共に応援し、北側応援団と共に‘われらはひとつだ’を叫んだ.
この叫び声には、北の女が作り出した花の旋風が単純な好奇心次元を超えて南北関係に持続的な薫風として作用することを希望する気持ちが孕まれていた.

釜山=文 クォン・ヒョンチョル記者 nura@hani.co.kr・ジョン・インファン記者 inhwan@hani.co.kr / 写真 パク・スンファ記者 eyeshoot@hani.co.kr