[ 人と社会 ] 2002年08月14日 第422号
セクシーな老年をプレゼント!
藁くずひとつ持ち上げる力さえあればセックス可能… いつまで老人の性をないがしろにするのか
“ああ、良いわ!” “ああ、良い!”

70歳を越えたおばあさんとおじいさんが感嘆の声を連発して、実際に情事に没頭する.
挿入する前、相手を愛撫する手助けは‘至極誠実’だ.
生がいくらも残っていないから、その喜悦の日々を記録したかったのだろうか?.
おじいさんは‘こと’を行った日と、そのまま過ごした日を暦に正確に書いておく.
驚くべきことに、そのまま過ごした日との違いは、僅か一日二日の差だ.
“昼情事”と書いてあるものもある.
現実でも恋人間であるおじいさん, おばあさんが出演した映画 <死んでも良い>(監督 パク・ジンピョ)の1シーンだ.
シナリオを作って撮影したことではあるが, 本当に繰り広げられる情事場面があたえる‘教育的衝撃’は大変なものだ.
皮膚がたるんでしまっている60代に入ればセックスは過ぎ去ってしまったことだと考えていた人にとっては, 70代老人のそびえ立った性器と,
彼らの愛撫と感嘆の声が成人男女のそれと違うところがないという事実を‘突然に’悟ることになる.
死んでも良い、70代老人の情事
“私どもの父は、60歳で一人身になられて, 78歳に亡くなりました. 再婚させてあげようと、妹たちと相談した時,
妹が老人がなにをするのかと言いました. しかし、私はそのようには考えなかったのです.
中1の時、屋上で70代の老人が自慰行為をするのを見たことがありますよ. わたしたちは老人の性を隠して恥ずかしく話しますね.
<死んでも良い>を見ると、パク・ジンピョ監督が老人の隠れている性を明らかにする代表者になったんだなあという気がします.”
<死んでも良い>が、制限上映等級を受けて封切りが不可能になると、8月7日ソウル 鍾路区 寛勳洞 ミロスペースで市民団体討論会が開かれた.
そこで47歳の銀行員だと明かした一市民がさらけ出した、父親に関わる記憶は、“老後の性生活が老人福祉問題の半分”(韓国老人問題研究所
カン・ジヒョン博士)ということの一端をあらわしている.
老年でも減らない性欲と能力に対する若い世代の無知と外面,
そして、このような子供たちの‘希望’通り、これからも性は関係がないという振りをして内心を隠さざるをえない老人の一般化された傾向がねばっこくからまってしまった現実.
パゴダ公園を聖域化しながら、その附近であるソウル鍾路区慶雲洞に作ったソウル老人福祉センターには、一日平均3500余名の老人が出入りする.
男女が相対する所には、間違いなく愛が生まれる.
キム・某(76・男)さんと ユ・某(76・女)さんは、毎日そこで一日中デートを楽しむ.
2年前、ユさんが55年ぶりにパゴダ公園を訪れて遺跡をつくづくと見ていた.
キムさんが近づいて、“めがねを使わなくてもよく見えるんですか.
私達が暮らしたらどんなでしょうね, 楽しいでしょうねえ”と話しかけながら恋愛が開始した.
ユさんは29年前離婚した後、数多くの求愛を受けたが、キムさんにはじめて心を開いた.
ユさんが“ここをちょっと見て, 私とは違って、この人はシワもなくて. ハスキーに歌を上手に歌うけど、血圧が高くて私はよくできないの”
と、言いながらキムさんの手と襟首を触る手つきや、これを望んでいるキムさんの眼が切ないことこのうえない.
愛が熱くなれば、一時も離れるのが嫌なのが人の情だ.
おじいさんは、おばあさんに自分の戸籍に入って一緒に暮そうと提案したが, おばあさんは拒んだ.
“生きるにしても、どれくらい長生きするというの…. 子供たちもそう言うし. そのまま、このままが良いと思ったのです.”
“30代の性欲をそのまま感じて生きる”
写真/老人のラブストーリーを正面から扱った映画
<死んでも良い>.
制限上映等級を受けて、封切りが不可能になると、製作社は8月9日、再審を申請した.
手顫症で挙動が不便な程だが、キムさんの愛情攻勢は若者達のそれと違わない.
“道を歩いていても突然抱きついてくるんですよ.そんなことをしないでと言っても、時々そうしますよ.旅館に行こうとか、そういう風にね,
しょっちゅうですよ.” ユさんの言葉に、かすかに微笑を浮かべるキムさんに耳打ちした.
“30代の時と比較してみたら、性欲は減るんでしょうか?” “まったく同じだよ.”
このなかに障害物が感じられた.
“風紀紊乱したら、大変よ”というユさんの言葉のように、老人をおとなしくだけ眺めようという社会の視線を自ら語る姿は最初のものだ.
成人たちも<死んでも良い>を見てはいけないと峻厳に判決を下す世相そのままだ.
また、ひとつには、両者の愛情を積極的に自慢する言葉とは違い、からだで行う表現にはとりわけ気難しいおばあさんのやむを得ない‘二重性’だ.
女性に特別に注入された性差別的教育の痕跡が歴然なのだ.
ユさんは、“日帝時、日本に渡っていって帝国主義教育を受けて, 解放後には社会生活を辛抱強くしました”と話した.
‘高齢化社会において、老人の性生活実態に関する研究-京畿道 水原市
居住老人を中心に’(2001年)というパク・ヒョンギュ氏の修士論文で、性生活に支障を与える要因を見ると,
女性の場合の第1順位は“恥ずかしい”(37.5%)で、第2順位は“穏やかなことではないようで”(28.1%)だ.
これは、第1順位“健康上の理由”(20%), 第2順位“年齢による性機能減退”(24%)と現れた男性の場合とは明確に違う.
水原地域に暮す65歳以上の老人130人を調べた結果だ.
老人問題研究所のパク・ジェガン(79)所長は、老年の性問題を一目瞭然に一気に説明してくれる.
“老人も藁くずひとつを持ち上げることができる能力があれば、誰でも性生活が可能です.
老人にも、若者達に劣らず性欲求があります. 男性老人は70代に入っても、肉体的欲求を感じます. 女性の場合,
欲求は同じでも、膣の分泌物が減る等、身体的に変化がくるために負担を感じるのです. 痛みを感じたら忌避するというのです. 西欧社会では、おばあさんのための潤滑薬を薬局などで容易に購入することができて、若者達に劣らず、性生活を楽しんでいます. 我が国もシルバー産業でこれをすべきです.
異常なのは若者達ですよ.
自分たちは自由に会って食事して遊ぶくせに、老人たちがそうすると後ろ指を差すのです.
穏やかなことではないと. こういう利己的なことがどこにあるのでしょうか. 老人たちはこれを意識せざるを得ないのです. だから、見えない所では老人たちが若者よりもっと行っています. 老人たちは息子・娘から扶養を受けるために、欠点を知られないでよく見られるように努力せざるをえないのです. 老人に対するこのような差別待遇は私達が敬老孝親の国ではなく、敬老虐待の国だということを見せています.”
抱きかかえるだけで快感を感じて… 同居斡旋が孝行
写真/専門家たちは、老年の性問題を解決したいのなら、老人たちの間で自然に交流する出会いの場所をたくさん作らなければならないと皆が話す.
ソウル老人福祉センターで楽しい時間を送るおばあさん, おじいさんたち.
藁くずを持ち上げる力さえあればセックスが可能だというのは行き過ぎた話ではない.
ソウル大 医大 ボラメ病院
泌尿器科のソン・ファンチョル教授は、“性的能力は成人も老人も差がないため、未成年と成年で分ける区分は適切なのかもしれないけれど、老人と成人を区分するのはとても不適切だ”としながら“歳をとったからといっても、性生活を楽しむかどうかは、全的に個人の自由によるもの”と話した.
ソン教授は“私のところに勃起不全の治療を受けようと来る患者の中には、80歳を越えた方達もあります”と付け加えた.
老年の性生活では挿入性交が全部ではない.
親しみの交流だけでも適切な快感を感じるらしい.
キス・抱擁・愛撫はもちろん、手を握り合うだけでも満足な場合が多いというのが性生活に積極的な老人たちの話だ.
大邱に住んでいる恋人に定期的に会う キム・某(72)さんは“(性器を)そのまま触っているだけでも十分に満足だ”と話した.
お金がからんだ問題は意外に重要だ.
年齢を問わず、男女交際に必須なのはお金なので, 先に言及したキムさん, ユさん恋人が現実的に最も困るのがお金だった.
キムさんは恋人に買ってあげたいものも, 一緒に遊びに行きたい所も多いのに、お金が問題だという.
一人身になった老人が性生活を持続しようとするなら、再婚が最善かもしれないが、経済的に息子に頼る場合、色々な面で簡単ではない.
また、お金が結構あっても問題だ.
子女が遺産相続問題で再婚を敬遠する場合があるためだ.
ソウル女子大 老年学科 イ・ユンロ教授は、“相続問題のために、息子と距離が生じて往来が途絶える場合がたびたびある”としながら“こういう問題
のためには、現在では同居が最も有用な方法”と話した.
このような点に照らしてみると、今年に入ってチョン・某(69・女)さんと同居生活に入っていったオ・某(82・男)さんはとても幸福なケースだ.
オさんはときおり海外旅行に行くことができる程、お金に関しては余裕がある. 運動もかなり多くすることができて、年齢に比べて健康だ.
彼の周辺で多くのおばあさんたちが気にかけていて, 同居生活に入ると妬みの声が降り注いだ程だ.
オさんが自由に同居生活に入っていくことができた背景には、お金の直間接的な助けもあったが、子供たちが海外移民に行ったという気楽な状態も重要だった.
老人の幸福を遮るな
<死んでも良い>の主演であるパク・チギュ(73)さんとイ・スンエ(71)さんは、去る6月からソウルのある老人福祉センターに通っている.
他のカップルたちと違い、両者に問題が生まれれば、常時相談を申請して、自分たちの問題を客観化した後、解決していく姿が印象的だとセンターの関係者が伝えた.
彼ら恋人が映画で見せてくれるのは、性生活以上だ.
愛を分かち合う心がけや態度がどうでなければならないのか,
老年に入っても幸福であるには自分自身に対する愛情と自信が必要なのだが、それがどんなものなのかを写実的に見せる.
このような映画を見て考え直す機会を妨げる現実, それが、私たち老年が処する性問題の侘びしい断面だ.
文 イ・ソンウク記者 lewook@hani.co.kr
写真 キム・ジョンス記者 jongsoo@hani.co.kr
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