[ カバーストーリー ] 2002年06月12日 第413号
誰が"赤い悪魔"を揺さぶるのか
国家-巨大資本-マスメディアの熾烈な角逐中に、商業主義是非と正体と実体性論議沸騰
写真/5年で600倍に高度成長した"赤い悪魔"."赤い悪魔"は、カーニバルの自発性を商業主義と国家主義の構図中にはめ込もう
という資本と国家の動員戦略を拒否する.(イ・ジョンヨン記者)
“単純にサッカーが好きで応援をしてきた集りが、ワールドカップを契機に
あまりにも規模と呼応が大きくなり、問題点も共に現れている.構成員の間の話し合いを経て、前向きの解体または純粋に非政府機構(NGO)と似た集団として残るかのうちの一つの道を選ぶ予定だ.”
さる6月7日、一ケ月ぶりに開いた記者会見で、"赤い悪魔"
シン・インチョル会長は、“ワールドカップが終わった後、"赤い悪魔"の進路”を聞く質問にこのように答えた.
"赤い悪魔"内部でも、"赤い悪魔"の垂直に近い急な成長とそれにともなう深いくいちがいの可能性を深刻に憂慮していることを表す言葉だ.
独島(註:竹島)から済州島ほどに大きくなる
写真/新しく登場した KTF 応援団.(ハンギョレ
ソ・ギョンシン記者)
"赤い悪魔"は、さる2月には5万名程度だった会員数が、6月に入ると、何と15万名水準に増えた.
1997年、200人程度のコンピュータ通信サッカー同好会でスタートし、5年で600倍の高度成長を成し遂げたわけだ.
単純に会員数ばかりが増えたわけではない.
昨年、コンフェデレーションカップ大会時には、赤い服を着て熱狂的に‘大〜韓民国’を連呼する"赤い悪魔"の数は多くても数千名に過ぎなかった. 独島から済州島ほどに大きくなりはしたが,
大多数の観衆の間で"赤い悪魔"は、相変らず一つの島として存在した.
しかし、僅か数ケ月で全てのものが変わった.
渾然一体,
数万の観衆すべてが"赤い悪魔"になって、観客席スタンドが完全に赤く染まる一大壮観が広がっている. 通りでも、数十万市民が真っ赤なTシャツに真っ赤なマフラーを身に付けて
“オー! 必勝コリア”を共に叫ぶ.
問題は、その熱情的成就に見え隠れする内外の力だ.
"赤い悪魔"は明らかにサッカーを非常に楽しい祝祭の場に変貌させようとした純情な意志の産物だ.
しかし、彼らの意志を現実に作りあげるには、各々の利益と欲望に向けた国家と巨大資本, マスメディアの熾烈な 角逐が介入した.
"赤い悪魔"の成長史は、そのまま、祝祭に向かった"赤い悪魔"会員の透明な欲求が、国家, 資本,
メディアという外部の力と一ケ所に絡まって作りだした巨大な混沌のパノラマでもある.
最も直接的に"赤い悪魔"の正体と実体性を威嚇した力は、巨大資本とメディアの商業主義だ.
巨大企業にとって、ワールドカップという世界的イベントは、決して見逃せない宣伝の場だ.
ワールドカップ公式スポンサーの隊列に加わるために、企業は各々数百億から数千億ウォンずつを惜しみなく注ぎ込む. その競争から脱落した企業もまたワールドカップと企業広報を結合させるために、主体の妙策を探そうと全力を注ぐ.
"赤い悪魔"のスローガンの下に集結する市民の巨大な参加の波は、企業にとって見逃せない対象でない筈がない.
"赤い悪魔"にも、単に島のように孤立したサポーターの境遇を抜け出したいという欲望が存在した.
いわゆる‘ビー・ザ・レッズ’(Be the Reds)プロジェクトは、そのように開始した.
昨年1月は今とは全てのものが違った.
ワールドカップは相変らず遠い日の話であった.
“ようやく迎えたサッカーブームの契機なのですが, 心もとないものでした.”
当時、"赤い悪魔"の対外協力局長を担当していたコ・ヨングク氏は、“内部運営スタッフ会議を通して、国民が参加するワールドカップ広報イベントを繰り広げて、ワールドカップを準備しようという結論を下すことになりました”と振り返る.
いくつかの安が出され, その中の2種類の案がまず実行に移された.
ひとつは夏休みの間、"赤い悪魔"が直接ワールドカップ開催都市を廻って、広報と応援活動を繰り広げることであったし,
もうひとつは、‘国民皆が"赤い悪魔"になろう’という‘ビー・ザ・レッズ’活動だった. ‘ビー・ザ・レッズ’の核心は、サッカーを愛する市民すべてが国家代表ユニホームと同じ色である赤いTシャツを着て、"赤い悪魔"と一緒に熱狂的応援のカーニバルに参加するということだった.
"赤い悪魔"はこのためにいくつかの企業の支援を受け、無料で赤いTシャツの提供を受ける協賛契約を結んだ.
‘ビー・ザ・レッズ’という字が書かれた赤い"赤い悪魔"Tシャツは、そのようにして作られた.
‘ビー・ザ・レッズ’プロジェクトは どのように始まったか
写真/キリスト教による"赤い悪魔"のカニバリズムを規制しようという試みもまた
"赤い悪魔"の正体と実体性にとって威嚇になっている.国家代表チーム応援にたった '白衣天使' サポーターたち.(ニュースエンジョイ)
協賛契約の当事者は、しかし、その時まで"赤い悪魔"ではなかった.
"赤い悪魔"は、当時まで営利契約の主体にはなり得ないサークル形態の任意団体にとどまっていた. 商標権や著作権などの権利も享受できない境遇だった.
去る5月5日に非営利法人団体としての登録を終えた.
このため、"赤い悪魔"は‘ビー・ザ・レッズ’プロジェクトのための契約主体として、代行社である トピアンを前面に押し出した.
コ・ヨングク対外協力局長がトピアンと協賛社を行き来して実務を引き受けた.
数ケ月の交渉を経て、協賛契約に参加した企業は、現代自動車と外国為替カード, 東洋製菓, タイガープラスなど、計4社であった.
これらの企業は、各々1万枚から3万枚の‘ビー・ザ・レッズ’Tシャツをだいたい1万ウォンから無料で配布する役割をした.
"赤い悪魔"は、Tシャツ代金の半分程度を現金と物品で支援を受け、運営費と活動経費として使えるようになった.
コ・ヨングク氏は、“タイガープラスは約束した協賛金を支払わず、トピアンと訴訟まで行きました”としながら、“このため、実際に"赤い悪魔"が確保した金額は3億ウォン程度でした”と話した.
ここまでは特別な問題がなかった.
確保した金品は"赤い悪魔" 事務局の 経常費と団体応援支援費用, 遠征活動 費用などとして透明に執行された.
コ・ヨングク氏は“ホームページ維持費200万ウォンと事務室賃貸料250万ウォン等、"赤い悪魔"
事務局の基本運営費だけでも一ケ月に600万ウォン程します”と、"赤い悪魔"の費用規模を伝えた.
このような経費は、当初、会員加入費とサッカー協会の支援で充当していたが, ワールドカップを迎えて費用が大きくなりながら限界に達した.
加入時に5千ウォンずつ受け取っていた会員加入費は昨年廃止した.
会費を払った人と払わなかった人を区分しようと業務量ばかりが増えたうえに, 何より、真っ赤な服を着て来たら、皆
"赤い悪魔"だという考えから下した決定だった.
サッカー協会の支援は国家代表チーム 試合のたびに5千席程度の座席を定価の50%水準であらかじめ "赤い悪魔"に供給する方式でなされた.
"赤い悪魔"は、これを応援に参加することを望む会員に20〜30%程度の追加金を受け取ってまた売り、その差額を経費として使った.
コ・ヨングク氏は“しかし、地域別にサポーターのためのバス費用を一部補助でもすれば、あっという間に支出が1千万ウォン台に達するのが実情で、なにか他の対策が必要な時でした”と話す.
商業性論議がふくらんだことは、アイロニカルなことに‘ビー・ザ・レッズ’プロジェクトが急激な跳躍を迎えながらであった.
"赤い悪魔"の代行社トピアンは、昨年 6月、SKテレコムと広告契約を締結する.
皆が12番目の選手になろうという‘ビー・ザ・レッズ’の概念を広告で広報し、3億ウォンを金と物品で支援する内容だった.
しかし、契約書に“広告と一緒にプロモーションのための付帯行事を支援対象に包括し,
その具体的内容は協議による”と明示されたところに論議沸騰の端緒が生まれた.
SKテレコムが
"赤い悪魔"の合意無しで自体広報行事をむやみに繰り広げて、"赤い悪魔"は011(註:SKテレコムの電話暗号)の前衛部隊なのかという批判が大きくなっていった.
"赤い悪魔"
2代会長をしていたキム・テホ氏は、“大多数の会員たちは、今の状況をそれほど肯定的に見ているようではありません”としながら“SKテレコムが甘い汁をみな吸うことにならないかという見解が多い”と話した.
コ・ヨングク氏は、“当初の契約時、協議ではなく合意として明示するべきだった”としながら、“今としてはSKテレコムが合意無しで勝手に"赤い悪魔"を利用して自体行事を繰り広げることを防ぐことはできず、困り果てています”と話した.
彼は“観衆席を赤く染めるという当初の構想が実現してうれしいのですが,
結局、商業主義是非にまきこまれて、純粋性が壊されたことは本当に胸が痛みます”とさらけ出した.
赤い虎? 赤い豹?
数十万枚の類似‘ビー・ザ・レッズ’ Tシャツが一般人に売られたことも "赤い悪魔"を疑惑に落とし入れた.
"赤い悪魔" 側は“現在売られているTシャツはトピアン側が一方的に販売を決定したことで、 "赤い悪魔"とは関係ない”と釈明した.
最近ではトピアン側の許可さえも無いまま描き写して作った類似品がワールドカップ熱気に乗ってむやみに売れて問題になったりもした.
愛国心と国家主義を強調する国家の介入も、"赤い悪魔"の進路を阻む外部要因のひとつだ.
最近の反米応援に憂慮を表明した政府の形態や
"赤い悪魔"の団結された叫び声を愛国主義の背景音響として活用しようというマスコミの試みに対する憂慮も大きくなっている.
ワールドカップ熱気と一緒に、少しの間静かになったが,"赤い悪魔"という名前に対する一部キリスト教界の集団的反発もまた"赤い悪魔"の正体と実体性を揺さぶる外側の力だ.
保守キリスト教界は、昨年‘白衣天使’という信者サポーター組織を新しく披露したのに続き,
今年に入っても‘赤い虎’や‘赤い豹’などに"赤い悪魔"の名前を変えることを要求してきた.
去る4月には、ワールドカップ関連教界団体が緊急会議を開いて "赤い悪魔"の名称変更のための訴訟を法院に提起すると明らかにした.
実際、ジョン・某牧師は、去る5月22日に“"赤い悪魔" 応援団のワールドカップ競技場出入を国家が防げ”という仮処分抗告申請をソウル高裁に出した.
"赤い悪魔"は、とりあえずワールドカップを行った後、"赤い悪魔"をめぐるいろいろな論議を公開的に検討し、対案を探すという立場を見せている.
シン・インチョル会長は、“"赤い悪魔"と関連した企業が、最近ワールドカップ 初勝利で事前協議無しで
"赤い悪魔"の名前を借りてイベントを繰り広げています”としながら“サッカーを好きな人々が集まった"赤い悪魔"は、商業性に振り回されたいとは全く思っていません”と話した.
彼はまた、“"赤い悪魔"が100億ウォンの収益を出したという一部言論の報道は事実無根で,
現在通帳に残っているお金は1億8千万ウォン程度です”とし、“ワールドカップ後に残ったお金は、幼少年サッカー基金として全て出すつもりです”と釈明した.
"赤い悪魔" 会員である文化評論家
イ・ドンヨン氏は、“ワールドカップの過熱な熱気が、一部だが、"赤い悪魔"の純粋な欲望を歪曲させて現したことは事実”とし、“"赤い悪魔"の選択は、商業主義と国家主義の動員対象になるのを拒否して、自発的なカーニバルの欲望を具現することでなければならない”と提案した.
ソン・ウォンジェ記者 wonje@hani.co.kr
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