2002年4月ハンギョレ21 404号

美しく別れることはできないのか
[ 人と社会 ] 2002年04月10日 第404号
 

美しく別れることはできないのか
一日370組の離婚時代, あらゆる事実と真実が万華鏡のように入り乱れた離婚法廷傍聴記

写真/ソウル家庭裁判所 協議離婚受付室で、ある女性が書類目録を書いている.

夫婦が共に申請して、期日に並んで出席しなければならない.
左側と右側から、きれいではない視線がちらりちらりと飛んできた.
皮肉なことに、私は傍聴席の中間に座っていた.
両側に群がって座っていた原告と被告の家族は、私が‘どちら側’なのかを詮索しているようだった.
‘こちら側’でなければ‘あちら側’だった.

判事は財産分割のための金額計算に入っていった.
アパート(註:賃貸マンション)の価格, 株式価値, 退職金用途に関する原告と被告 側の意見が交錯すると, 株式相場変動表と家族名の銀行入出金明細書などを証拠として提出しろと要求した. その間、夫側と妻側からは大声が行き交った.
“天を恐れろ!” “なんてこと, 情けない.”

 
水彩画のような離婚記事? とてもとても…

法廷だからと表現を自制するような表情だったが、わんわん泣き叫ぶ程になった.
耐えきれず、判事が一言した.
“通常、財産の3分の1を妻に与えるようにしています.
夫は300万〜400万ウォンを惜しんで、終生けちな男, 薄情な父だという声を聞きたいのですか?” 夫は、“わたしの月給で財産を作ったのに、どういう資格があるというのです?”と言い返した.
すると妻が、“何を言っているの.お金はみな引き出しておいて”と切り込む.
判事が付け加えた.
“原告側もそれまでにしなさい.お金を引き出したという証拠がないわけでもありません.通帳を公開し, 土地文書を提出しなさい.”

審理が終わって、法廷の外の控室に出てきた夫婦は、あげくの果てに肉迫戦を繰り広げ始めた.法廷の経緯が、外に出て戦いなさいと彼らを送りだしたのだ.
当初、‘離婚法廷 傍聴記’という記事を企画した時, 私は一幅の水彩画のような記事を書いてみたかった.
出会って別れることは、長い人生ではいくらでも反復されることではないか.
血と肉を分けた親子・兄弟姉妹も、死という巨大な隔離の前では容赦なく別れるのに, 他人同士が出会った夫婦が自分の意志で別れるのだ! その上、一日平均877組が結婚して、370組が離婚する時代ではないか.
離婚法廷は離婚にともなう各種問題に皮膚で接することができ, ‘法に拠って’是々非々を正すことができる所だ.
そこで惨めではなく、苦痛でもない離婚を見てみたかった.
こういう思い込みが愚かだったということを悟るまでは、それほど長い時間がかからなかった.

去る4月3日正午.
ソウル家庭裁判所 総合民願受付室の前.
銀行の窓口のような所の前にぞろぞろ人々が増えている.離婚と相続など、裁判に必要な書類を出す所だ.
30代中盤くらいに見えたある女性が準備書類目録を手帳に書いていた.
夫が協議離婚をすることにしたのに、いつも出席しないので, いっそのこと訴訟することにしたと言う.
イ・ヨンエ(仮名・35)さんは 結婚して8年目.
夫の無分別なカード借金で、アパート(註:賃貸マンション)の保証金と自身の結婚前にいた職場の退職金も洗いざらい飛ばされたという.
離婚の直接的な契機は、その渦中に夫が“別居までしたため”だ.
イさんは、慰謝料や財産分割は考えもしないという.
争いの原因は、六歳になった子供の問題だ.
イさんは“職も探して経済的に自立しなければならないのですが、子供を連れていたら私はなにもできません”とし“地方の大都市で年金生活をしている婚家は子供を預かってくれる能力があります”と話した.
だが、夫側は“子供だけは預かることができない”と粘っている.
まれだが、離婚法廷のなかでは子供をお互い育てないと争う場合がたびたびある.


戯れながら待つ夫婦の理由

ソウル家庭裁判所4階の協議離婚法廷.
離婚を前にして、夫婦が控室に座って職員の呼び出しを待っている.
大部分の夫婦が沈痛な表情で並んで座っていたり、違う方をみつめて背を向けているのに比べて、唯一ある夫婦は、戯れて笑っている.
20代後半くらいに見えた彼ら夫婦は、1年間同居して婚姻届を出したのだが, 両側の家が反対するなかで“一旦離れることにしました”とためらいなく話した.
別れないと生活費を与えないというなかで止むえず選択した‘次善策’という言葉も付け加えた.
夫側は離婚する代わりに留学に送り出してくれと要請し, 留学したら外国で会うという‘ある種の約束’をしたという.

最近、統計庁の発表によれば、2001年の1年間に離婚した人は13万5千組で、1990年の4万5千組に比べて3倍以上増加した.
同居期間を見ると、4年未満が30.5%, 20年以上が11.3%を占めている.
全離婚件数のうち、4年未満を過ごした夫婦の比率は減ったが, 20年以上過ごした夫婦の比率は90年の3.9%からずっと増えたわけだ.

‘無分別な夫婦’が消えた後, 片隅で一人ぷっくりと腫れた顔で座っていたおばさんに“離婚の決心をしてから、どれくらいになりましたか”と尋ねた.
おばさんは “あなたはどれくらいなんですか?”と尋ねてきた.
夫を待っている予備離婚者に見えたのだろう.
私がまごまごしているうちにおばさんが短く答えた.
“30年.”そして、続けた.
“昨年に末娘まで結婚しましたので.今は別れることができるのですが.”
夫だと見える人は廊下の向こう側でぶらぶらしていた.
彼の顔も話にならなかった.

過去には、夫婦のうち、一方が協議離婚申請をすれば出席期日が決まったが, 去る2月1日からは夫婦が共に来て申請するように条規が変わった.
配偶者のクセを直すために、または怒りで離婚申請をしても、一方が出席しない場合が多くて変えたのである.
ソウル家庭裁判所の場合、午前に申請すれば、午後に判事の前で判を押し, 午後に申請すると、翌日午前にすることになる.
特別な場合でなければ、判事は双方の両側の意思を一度確認して、子供の問題を尋ねた後で離婚を‘許可’してくれる.


裁判離婚法廷, 貴方も見られる

写真/当事者だけが入る協議離婚法廷.

判事の前で意思を確認して、出てくるのに僅か30秒もかからない.
ここにかかる時間は30秒程度. 1年暮らした夫婦でも、10年暮らした夫婦でも同じだ.
ふっと結婚にかかる時間がどのであるかを計算してみた.
結婚式だけでも最小30分, 新婚旅行最小3日, いろいろな準備まで合せれば最小限30日にはならないだろうか.
これに比べて、離婚は本当に虚しい程に短い時間でなされた. もちろん、このおばさんのように30年を悩んだ人もあるけれど.

家庭裁判所3階は裁判離婚法廷だ.
一法廷で一日平均100件以上の争いが行われる.
協議離婚法廷は当事者だけが入るようにされているが、裁判離婚法廷は判事が特別に非公開方針を定めない限り、傍聴が許される.
開廷中のある法廷に入ろうとすると, 法廷警備員が“証人にきたのか”と尋ねた.
そのまま傍聴しようとすると, “ああ, ウォーミングアップしに来たのか”と言われた.

夫側が原告, 妻側が被告であった.
彼らが三人で暮らしていた建物の持主が証言台に立っていた.
“保証金はママの名義で, 妹を嫁がせるためにお金を1千万ウォン借りたのは、パパの名義で借用証を書きました. ママの性格が残忍性が少なくなくて、おとなしいパパは苦しそうに見えました.”
夫側弁護士の誘導質問でもあったが, 妻側に不利な証言があふれ出た.
会計士である夫は性格も合わず、執念深い妻が怖くて家を出てきたし, 妻は前途有望な夫の背景に欲を出して彼を束縛するという内容だった.
その後は反対尋問.
妻は弁護士無しで自ら弁論した.
反対尋問によれば、夫は2-3回妻を殴打し、警察が家に来たこともあり, また、家主に金を借りておいて妻に返すように迫ったという.
両側の話を聞いてみた結果, 夫は“ママボーイ(註:マザコン)”のようなものだったし, 妻は“どんなことがあっても離婚は出来ない”という執着を持っていた.
乳飲み子も居たが, 彼らは既に遠い以前から実質的な破鏡状態であるようだった.
判事は傍聴席に座った夫に、“本当に離婚しますか”と尋ねて、夫がそうだと答えると, “財産といってみたところで、住宅保証金3千万ウォンなのであるが、必らず分けますね”と、再度聞いて、次の期日に‘強制調停’をすると話した.

強制調停とは、離婚するのかしないのか, 財産分割をどのようにするのか、当事者合意がならないので判事が調停してくれることだ.
裁判上、離婚をしようとするなら、民法840条に規定された離婚理由がある時、訴えを提起できる.
△配偶者に不貞行為があった時 △配偶者が悪意で他の一方をなおざりにした時 △配偶者またはその直系尊属からはなはだ不当な待遇を受けた時 △自らの直系尊属が配偶者からはなはだ不当な待遇を受けた時 △配偶者の生死が3年以上明らかでない時 △その他、婚姻を続けるのに難しい重大な事由がある時などだ.

前の場合は、夫側が殴打を行ったので表面的な帰責事由は夫側にあると見えた.
過去には帰責事由がある側は、離婚訴訟を出す権利がなかったが, 最近では帰責事由があろうがなかろうが、一方が強力に願う場合は事実上の破鏡だと理解して、裁判府も離婚判決を下ろす趨勢だ.無理に暮らせといってみたところで、無理な関係のためだ.

法廷は、普通、調停段階を経て、裁判に入っていく.
判事が両側の意見を聞いて、最大限譲歩させることが調停段階で, 判事一名が扱う単独審だ. それでも合意がならなければ、判事が調停委員会を経て強制調停をする.
この調停に不服な当事者は、決定文が下されてから20日以内に異議申請をできる.
しかし、争いが複雑な様相ならば、裁判に繰り越す.
1次判決後、控訴審に入っていけば、これ以上は単独審ではない.

去る4月4日午後2時30分.
判事3人が座っている控訴審法廷が開かれていた.
夫婦の代理人である弁護士が前に立ち, 夫側家族は傍聴席右側に, 妻の実家の母親と兄弟姉妹たちは左側に座っていた.
義妹の証言が開始した.
義妹は、兄の妻が嫁入り支度も正しくしてこず、婚家を無視して、姑のご飯も整えなかったと証言した.
そのような渦中に、子供が流産して知ったのが、結婚前から慢性腎不全症を病みながらも欺いて結婚したということだ.
また、姑と夫を追い出し、婚家の財産を減らすためにむやみにボイラーをつけて電気のスイッチを入れるので、止むえずガスと電気を切ったと話した.
傍聴席に座っていた姑が何回も入り込もうとして警備員が制止した.
反対尋問をする間、義妹の話が反復された.
本人が見て聞いたことは、実は大部分母親から伝え聞いたことだった.
また、兄の妻は職場女性であったし, 生活費の大部分の責任を負った状況だった. 嫁入り支度も、やはり婚家に入って暮らすために準備することがなかった.
そして、電気とガスを切った情況もつじつまが合わないことに照らしてみる時、嫁を追い出すためのこととして考えられた.
実はこの裁判は、昨年8月, 1審判決が出て新聞紙上に短く紹介された離婚事件の控訴審だった.


証人に出た老人の涙

写真/険しい離婚率上昇中、訴訟を提起する夫婦も増加している.

ソウル家庭裁判所では単独審の場合、一日100件以上の審理が開かれる.
1審では“離婚しなさい”という判決が出た.
裁判部は“妻側は疾病を隠して結婚し、妊娠するのが難しい状況であったし、姑に不遜に接した誤ちがあり、夫側は嫁姑間の葛藤を克服しようという努力を怠って妻を追い出すようにしたので, 両側の誤ちが釣り合い、別途の慰謝料を払う必要はない”とした.
この事件は、典型的な姑と嫁の葛藤として醸し出された不和のようだった.
姑は一人息子の夫婦生活にことごとに干渉し, 職場生活している嫁を少しも 理解しないようだった.
そのような中で疲れていた嫁は、愚痴をこぼすが, 夫はこれを他人事のように聞き流していたのだった.

法廷のそとの廊下で、しばらく待っていた妻 Oさんは意外に淡々とした表情だった.
“夫が裁判を仕掛けたのは、姑の圧力 のためのようです. 事実、私たちの間には大きな問題はないのです. 私もやり込められるばかりではいられないので、慰謝料を請求する控訴審を提訴したのです. 一旦別れると健康も良くなって, 生活にも余裕が生まれました.”

離婚法廷はあらゆる事実と真実が入り乱れた万華鏡中のようだった.
法廷で争うのは‘事実’だ.
だが、裏面の‘真実’は容易にはわからない.
時には要点のみを述べることでの事実が真実を現し, 時には真実が自らの重さで事実を押さえ付けることもある.

4月4日午後、ある単独審法廷では90歳近い老人が娘婿と娘の離婚法廷に証人として立った.
痛むからだを引きずって田舎から上京してきたという彼は、話しながら涙を 流し, 咳き込んだりもした.
傍聴席では例外なく、両側の家の人々の気力の戦いが行われた.
“この井戸では絶対に水を飲まないと唾を吐いても、いつかはその井戸を訪れてまた飲むようになる”という古語がある.
一時は夫婦だった男女の争いと, 一時は姻戚だった家族の戦いを見ながらふとこの話を思い起こした. お互い慈しみ信頼することが結婚の重要な要件ならば, 今は‘きれいに別れる’こともやはり比重を持って含まれなければならないだろう.

家庭裁判所の外の法院 結婚式場 表示板の前では、若い男女が明るい笑いをばら撒きながら歩いていた.
春の花が真っさかりだった.
私は混乱していた.


文 キム・ソヒ記者 sohee@hani.co.kr
写真 イ・ジョンヨン記者 lee312@hani.co.kr