2001年9月ハンギョレ21 375号

‘江南本’が読書市場を揺さぶる

[ 文化 ] 2001年09月05日 第375号

高くて品のある本が脚光を浴びて ベストセラーに… 文学をぎゅっと握っている‘江北’に比べて実用書が人気

イラストレーション/ ソル・ウニョン

動物の笑わせる表情を撮った写真を集めた本 <ザ・ブルーディブック>(ブラッドリー・グリフ, パダ出版社 編集出版)が出刊された直後のことだ. パダ出版社は、この本の広報イベントとして、本に出てくる写真展示会を用意した. 場所は、ソウル江南の江南永豊文庫. 江北に位置を占めた有名で大きい書店ではなかった.
この写真本が初めて反応を見せた所が、まさに江南の書店であったし, それで、出版社は江北の大型書店の代わりに、江南の書店を核心攻略地域としてみなしたのだ.


大韓教育保険本と永豊本, ソウル本と地方本

<ザ・ブルーディブック>は、数ケ月目で総合順位5位圏を維持して、いままで計8万部以上売れる大成功をおさめた. けれども、この本は他のベストセラーとは明らかな差がある.
ソウル江北地域でまず評判を得て、江南と地方に人気が移っていく一般的なベストセラーとは違い、ソウル江南地域から反応を得た本だという点だ. 販売量も、ソウル江南地域で江北販売量の半分程度に留まっていたこととは違い、二地域の販売量に差がない. それほど江南で相対的に爆発的な反応を得たということだ.

これまで、出版界では通念的に‘大韓教育保険本’と‘永豊本’, または ‘ソウル本’と‘地方本’とに区分してきた.
‘大韓教育保険本’と‘永豊本’は、主に人文書籍や小説が強勢の大型書店の大韓教育保険文庫と、若者たちの趣向に合う本と子供本がよく売れる永豊文庫の特性にともなう区分で、それぞれの書店でよく売れる本を呼ぶ言葉だ.
一方、‘ソウル本’と‘地方本’は、ソウルと地方のどの地域でまず反応を得るかにともなう区分法だ. ソウルという地域が非常に全体出版市場を代表することなので、ソウル本という指摘は、事実上無意味な方だが、‘地方本’は明確に存在する. ソウルではよく売れないいわゆる ‘B級’小説がここに該当する. 主に地方で勤務する軍人層が楽しむ大衆小説で, 地方で格別によく売れる本だ. 過去のベストセラー中に、小説<一人で浮かぶ月>などが、こういう本だと見なすことができる.

だが、これから、ここに‘江南本’と‘江北本’という新しい分類法が追加されようという兆しが見えている. ソウルは巨大な一つの都市であり、また、同時に二つの都市でもある. 漢江を間に置いて、江北と江南がお互い明らかに区分される特性を持っているのだ. 既に出版市場でも、このような差が反映されようという徴候が見える.
出版市場は大型書店が集まっている江北が、全国的な基本指向をそのまま圧縮している. それで、江北と江南が出ているということは、江南が江南だけの独特の趣向を持っていると見ることができる. そして、その底辺には、二地域の基本的な消費水準の差が敷かれていると見るのが正確だ.

実際、この1〜2年間のベストセラー中では、既存ベストセラーとは異なる指向, すなわち、江南地域で反応を得て、全国的人気を博す本が少しずつ生まれた.
代表的なのは、まさに予想外の‘大ヒット’になった青い林出版社の <ゲーテのイタリア紀行>と<時間博物館>だ. この二巻の本は、いわゆる‘江南本’の典型的な2種類の類型を見せている.
 まず、<ゲーテのイタリア紀行>は、大衆的な本ではなかったが、江南地域から‘アクセサリー’用に脚光を浴びながらベストセラーになった. 本の主な購買層の女性たちが‘持って歩くための本’としてこの本を好んだおかげだ. ハンドバッグより小さく、携帯が気楽で、‘ゲーテ’と‘イタリア’という二単語が品位あるように見えるおかげだ. また、<時間博物館>も、やはり本の価格が何と4万9千ウォンもする高価さにもかかわらず, 所得水準が高い江南地域で集中的に売れて成功した本として業界はみている.


漢江を間に置いて区分される消費特性

もちろん、全国的に人気を博す大型ベストセラーの場合、こういう地方区分は無意味だ. しかし、既に特定ジャンルや本の場合、明確にソウル内で地域的な分化がなされている. そして、江南地域でよく売れる本には、明確に共通的な特徴がある. イメージが強いか感覚的な本, そして、余暇ガイドなどの実用的で, 高級装丁の所蔵用本と画報などという点だ.
基本的に、消費水準がより高い江南市場が形成されたために出てきた変化だ. ファングムカジのジャン・ウンス編集長は、“なにぶん、江南地域は実用的で、具体的に自分の生活の助けになる本がよく売れる”としながら、“高い所得水準がその理由であるとしか見ることができない”と分析した.

出版界では、しばしば“実用書市場は国民所得1万5千ドルが超えてこそ開く”という言葉がある.
 まさに、江南地域で実用書の人気があるのは、こういう俗説を後押ししている. 出版界で2万ウォン台の高級装丁本が出されてもたいして売れなかったのも、これと同じ理由だ. 以前と同じならば、価格抵抗線のために容易に出すことができなかった高価な本が、最近では果敢に市場に出てきている.
文化は基本的に所得の差によって分化し、変わることがその属性だ. しかし、土地が狭い韓国は、文化的同調現象が深く、そのような差が大きくない方だった. 高所得層よりは中間所得層が主導する出版文化は、特にそのような指向が強かった. だが、出版市場にも少しずつ変化が起きているのではないだろうか. インターネット書店 イエス24のカン・ビョング理事も、そのように最近の出版市場を分析している.

“既存ベストセラー, すなわち江北本の特徴は<トゲウオ>等、文学が主流だったが、最近ベストセラーになった<チーズはどこへ消えた>や<金持ちパパ 貧しいパパ>などを見れば、皆伝統的なベストセラー特性を揃えていない. 軽いトレンドを反映している、実用性が強い本だ. 江南地域の読者が主流をなしているインターネット書店から始まり、江南地域オフライン書店で反応が開始した. 江北にだけあった大型書店が、最近の何年間で江南にも列を作るように入りながら、読書市場の中心が徐々に江北から江南に変わり始めていると見える.”


ク・ボンジュ記者 bonbon@hani.co.kr