2001年5月ハンギョレ21 361号

“わたしたち、男装でもしようか?”

[ マイノリティ ] 2001年05月29日 第361号

踊るのが世の中で最も楽しいダンシングクイーン達, なぜ、添え物で満足しなければならないのか 


写真/ トクソン女子高 ダンスチーム E&G. 偏見を克服して、女性ダンスチームとして成功するはずだと確かめ合う.

“これちょっと見て ハ! 私をちょっと見て ハ! 私は楽しくて見えないから.” 

速射砲のように 速いラップがあふれ出ていた. ラップに合せて、だぶだぶのヒップホップパンツが踊る. 指先はリズムに乗って流れる. こんがらがった髪の毛まで、リズムに酔い、揺れる. ビートが速くなるほど、Tシャツはどんどん汗で染まっていった. 


“世の中がリズムを合わせない” 

5月23日 午後8時30分. 京畿道 富川市4階建ビルの地下演習室は、ダンスの熱気で暑かった. 四坪ちょっとのリハーサル室に充満していた音楽が終わると、皆、フロアにどっかり座り込んだ. 荒っぽい男の子たちの間に二人の女性が混ざっていた. 
黒いズボンに、とがった靴が印象的なソン・ヒョンジン(20)さんと、長いまつげを翻してダンスに熱中した ソ・ウンヘ(19)さんだ. 彼女たちは、ショッピングモールのステージに主に立つ混成ダンスグループ ‘ノアの子供たち’の女性メンバーだ. 少しの誤差もなく、男子たちと呼吸を合せるのに大変なようで、とりわけ苦しい吐息をついていた. 

ソ・ウンヘ(19)さんは、“踊ることが世の中で一番楽しくて自信がある” 女子高生だ. 中学校の時, ダンスグループをしていた一歳上の兄さんを真似てダンスを学び始めた. ‘ノアの子供たち’に入った時には、すでに3年目. だが、いまだに家族の反対に苦しめられる. 兄さんもダンスグループメンバーとして活動しているが、家の内の反対は唯一彼女に集中している. 
“兄さんはかまわないのに、私は何故許されないの?”と泣きながらとりすがってみることもした. だが、いつも“早く就職して金を稼いで、嫁に行きなさい”という頑強な反対だけが帰ってきた. 家の反対は、ひとりソさんだけの悩みではない. 今年2月に、‘ノアの子供たち’に入った女性メンバー一名は、家の頑強な反対に当面し、結局はダンスを放棄せざるを得なかった. 

見た目には明るく華麗な少女たちの愉快なダンスをさえぎる障壁は、あちらこちらに散在している. 
まず、“女が、何がダンスか?, 家の恥さらしだ”という偏見が、少女たちの足手まといになる. 容易に家の反対をはね除けたとしても、楽しいダンスが始まるのではない. 
その次の障壁としては、“女はだめだ”というダンス界内部の偏見が残っている. ソン・ヒョンジンさんは、“踊りたいけれど、世の中はリズムを合わせてくれない”という言葉で、女性ダンサーの苦しさを要約した. 

翌日の午後4時、鍾路区安國洞のあるカフェで会った女性ダンスグループ‘Key’のメンバー カン・ジョンスク(18)さんは、流れ出る歌に合せて手拍子を続けた. 歌さえ聞こえてくれば、肩を揺らす彼女だが、いまはダンスをあきらめる危機に置かれている. 
カンさんは、さる99年、中学校同期の5人と女性ダンスグループ Keyを 結成した. その年、ダンス競演大会に入賞し、ショッピングモールのステージに立つ機会を得た. 女性ダンスグループとしてはまれに、ショッピングモールのステージで人気者になった. こういう Keyを見ていた、ある男性ダンスグループのマネジャーが混成チームを作ろうと提案してきた. 芸能界に進出するための踏み台が必要だと、彼女たちはこの提案を受け入れた. 男子5人とKeyの女子5人での混成チームができたのが、昨年5月. だが、長くは続かなかった. 


専門ダンサーとして生き残るのは、至難のわざ 

写真/ 東大門のあるショッピングモールで公演している女性ダンスチーム. 観客の大部分が少女ファンだと、彼女たちがステージに立つ機会が少ない.

さて、混成ダンスグループを作ったが、チーム運営は男子中心であった. 
カンさんは、“ダンスの実力は関係なく、無条件にリーダーも男子, 前に立つのも男子でした”とトーンを高める. 
まだ五月を終えないうちに、女性メンバーたちは混成グループを離れた. こういう問題は、構造的に繰り返す. 芸能界はもちろん、ショッピングモールステージさえ、少女ファンが大部分だと見られるので、混成グループでの女性たちは、いつも添え物で終わるのだ. しかも、専門ダンサーは男性一色であるため、進路さえはるかに遠い. カンさんは、男女差別的なダンス界風土を指摘して興奮する. 

“女子が専門ダンサーとして生き残るのは、至難のわざです。 常にダンス動作の速さや力が強調されるからですよ. ますます高難度の技術をするほど、女子が不利にならざるをえないですよ. リズム感や柔軟性のような女性ダンスの美しさは無視されやすいのです.” 

結局、Key メンバーたちは、5月末にショッピングモール公演を最後に、解体を決心した. 一時はダンスにはまり込んで、学校を放棄することまで考えたカンさんだが、“何はともあれ、就職に必要な資格証明をとる努力をしなければ”と辛く吐きだす. 他のメンバーたちの悩みもカンさんと特に違わない. 

“参考書を買いに行かなければならない”というカンさんを後にして、鍾路区 安國洞のトクソン女子高に入った. おぼろ月夜にとっぷりと暮れた午後7時だが、学校の片側に位置した体育館の灯は明るく灯っていた. 足を踏みしめる度にホコリが舞い上がる体育館で、五人の少女たちがダンスに熱中していた. トクソン女子高 ダンスチーム‘E&G’だ. 練習を終えて出てきた彼らのジャージの所々にホコリがいっぱい付いていた. 

リーダー カン・ジョンヒ(18)さんは息を整えて、“とても問題が多い”と、話を切り出した. 
カンさんは、まず、ダンス競演大会の不公正な賞分配を指摘した. 
さる2000年10月に結成された‘E&G’は、ダンス競演大会でいろいろな賞を得た. だが、最高成績は2位に終わった. カンさんは、“授賞者名簿に薬味のように女性チームを組み入れるだけで、一位は男性チームばかりになります”と愚痴をこぼす. 
反面、最近、ダンス競演大会に参加する女性チームはますます増加している. カンさんは、“以前はダンス競演大会に参加すると、‘え? 女の子達が?’と言われたけれど、最近は、‘また女の子?’と言われる程にたくさん増えました”と伝える. ショッピングモールにオーディションを受けに来るダンシングチームも、女子チームの方がむしろもっと多い程だ. 

女子ダンサーは増えているが、ダンスを学ぶ所は適当ではない. 
一部の男子ダンサー達から、女性だという理由で、教えてくれという要請を拒否されることもある. E&Gもこういう経験を持っている. 去る4月、‘E&G’は、城南のある男子ヒップホップチームに振りつけを学びにいった. 日曜日の明け方6時に家を出て、二時間過ぎて城南に到着した. 遠くから訊ねてきた彼女たちに、ヒップホップチームのリーダーは“女には難しい動作だ”と、教えることを拒否した. 
E&G メンバー パク・ジヘ(18)さんは、“いまだにこういう事は一回や二回ではありません”としながら、“男性ダンサーたちから女子に対する偏見を捨てるべきではありませんか”と正す. 女性たちが踊ればついてくる不利益が多いのに、敢えて女性ダンスチームに固執する理由はなんだろうか. パクさんは、女性ダンスの美しさを強調する. 


芸能界進出過程でも差別 

写真/ 富川のある練習室でダンスに熱中している ノアの子供たち. ソ・ウンヘ(前のほうから三番目)さんの母親は、いまだにダンスチーム活動を止めている.

“女の子たちの方が、振りつけがはるかに繊細で、流れるように組み立てますよ. 動作もよりすっきりしていて、十分に速いですよ. 動く線の美しさや柔軟性は、男子にはとうていまねできません.” 

“女性ダンスチームを決してあきらめない”と繰り返し強調する E&G メンバーたちと別れて、ソウル中心街のあるショッピングモールに達した. 
すでにステージ上では、男子ダンサーたちが絢爛なダンスを披露していた. あちこちで少女たちの嬌声がさく烈した. 
ステージ後方には女性ダンスチーム‘アトラクション’(Attraction)のメンバーたちが緊張したまま順番を待っていた. 灰色の髪が印象的な、アトラクションのリーダー キム・テウン(20)さんは“ステージに上がる度に反応が冷ややかでないだろうかと怖い”と言う. 
難しいオーディションを通過しても、観客の大部分が女性のため、 男子ダンスチームに比べて呼応が少ないのだ. 横にいたアトラクションのメンバー ジョ・ヨンミ(19)さんは “私たち、男装でもしようか?”と冗談を言う程だ. 
こういう扱いは、ステージ上に続く. 
キムさんは、“男子ダンシングチームは司会者が個人技をさせて盛り上げてくれるのに、女子チームは紹介だけでもちゃんとやってくれれば有難い程度”と愚痴った. ジョさんも“それでもここは良い方”とし、“他のショッピングモールでは男子チームが5,6曲ずつする時に女子チームはやっと2曲する機会しかもらうことができません”と言う. 

アトラクションがステージに上がっていた間に会った女性ダンスグループ‘ファンタ’のカン・ヨンヘ(20)さんは、芸能界進出でも、女子ダンサーたちが差別を受けることでは同じだとトーンを高めた. 

“私が知っているかぎりでは、混成ダンスチームがレコード企画社に入っていくようになりました. でも、女子メンバーだけを入れ替えてなんです. 顔が良くないから、というのです. 男子はそこそこな外貌ならダンスの実力で評価を受けるけれど、女子のダンスの実力は後まわしなんです.” 

アトラクションのリーダー キム・テウンさんは、ステージから降りてくるやいなや、次の公演準備に入った. 先にステージに上がった男子ダンスチームより呼応が少なかったが、気にしないようだった. むしろ、“難しいほど欲が出る”と、一言投げかけるほどだった. 
“踊るときに、はじめて生きているという実感を持つようになります”と、皆が話す女性ダンサーたち. 世の中のどんな障害物も彼女たちらの‘ダンス旋風’を止められない. 誰が何と言おうと、彼女たちは自らがダンシングクイーンであるためだ. 


文/ シン・ユン・ドンウク 記者 syuk@hani.co.kr
写真/ パク・スンファ 記者 eyeshoot@hani.co.kr