[ 人と社会 ] 2001年03月27日 第352号
警察庁‘軍隊反対・兵役忌避サイト’全面捜査… 2サイト自主閉鎖等、‘討論萎縮’の動き
写真/‘軍隊反対サイト’のオフラインの集い. 警察は、これらのサイトが、‘兵役または納税の義務を拒否する目的で団体を組織したり、これに加入した者は10年以下の懲役か罰金に処する’と規定した刑法114条2項に触れる嫌疑があると明らかにした.(シン・ユン・ドンウク記者)
兵役拒否と兵役忌避の差は何か? 徴兵制討論と兵役拒否煽動は、どの線でわかれるのか? さる3月20日, ソウル警察庁サイバー犯罪捜査隊が“インターネット上で掲示板を通じて兵役忌避の方法を報せて兵役拒否を煽動し、会員を募集する兵役忌避助長サイト3つに対する全面捜査にたった”と、明らかにしながら論議沸騰が始まっている. サイバー犯罪捜査隊が‘兵役忌避助長’嫌疑で指定した3サイトは、さる3月にアナキストたちが開設した‘軍隊反対サイト’(non-serviam.org), 次に、オンラインカフェの‘徴兵制を拒否する人々の集い’, ライコスの掲示板 ‘ジョンナッケヌン兵務庁’だ.
徴兵拒否を公然と煽動?
徴兵制関連サイト中、昨年初め, 最初に開設された‘徴兵制を反対する集い’(徴反集・www.anticonscript.org)は、捜査から除外になった. 徴反集は、既に4万件以上の照会数を記録し、徴兵制関連サイト中、最も活発な討論を繰り広げている. 警察は“徴反集は徴兵制の問題点を指摘して, 募兵制を対案として提示する討論サイト”とし、“この程度は表現の自由領域に該当すると判断し、捜査対象から除外した”と明らかにした.
警察によれば, わいろの金額と精神科治療, 習慣性脱臼等、具体的な兵役忌避方法を知らせて問題になったサイトは、‘ジョンナッケヌン兵務庁’だ. だが、このサイトは、兵役特例就業情報を知らせる等、実質兵務相談の性格が強く, 一部掲示された兵役忌避方法も、一般的に知られた内容なので、警察も捜査対象から事実上除外した状態だ.
次に、オンラインカフェの徴兵制を拒否する人々の集いは、‘兵役拒否宣言’メニューを作っていたため、捜査範囲に含まれた. だが、このサイトが閉鎖される時まで、兵役拒否宣言にはただ一件の宣言も上がってこないのみならず、会員も4,5名に過ぎない. 警察も、“この二つのサイトは、違法嫌疑が微小な程度”とし、“具体的に兵役忌避を手助けしたことがあったかだけを確認する方針”と明らかにした.
単に、警察は捜査の焦点を‘軍隊反対サイト’に合わせている.
言論によって‘兵役忌避サイト’として知られることはあったが、このサイトを特に問題視するのは、軍隊反対‘運動’を宣言したためだ. 警察は“このサイトのある会員は、公開的に‘軍隊へ行かない’と明らかにして、兵役の義務自体を否定しており, 徴兵拒否を公然と煽動するという点で反社会的”と明らかにした. また、“特に2度にわたり、オフラインの集いを持つ等、軍隊反対運動を繰広げるための動きを見せている”と付け加えた.
論議沸騰の余地があるが、刑法114条の‘兵役拒否団体組織加入罪’を積極的に解析し、彼らを追跡調査するというのが警察側の立場だ. 20日、警察の捜査方針が発表された後、このサイトには一日300余件の文が降り注がれた. 彼らに対する支持表明から、極端な反対抗議まで、徴兵制をめぐる、この社会の多様な意見を見せる風景だった.
捜査発表当日の20日, 警察は、ダウムコミュニケーションとライコス コリアに、サイト運営者の人的事項とIPアドレスを要請し, 情報通信倫理委員会にも閉鎖要請をした状態だ.
ダウムコミュニケーション側は、警察の捜査協調要請によって、運営者の人的事項とIPアドレスを譲り渡した. だが、ライコス コリア側は、“徴兵制関連サイトを閉鎖することは、インターネットが持ってきた表現の自由を過度に制約することだと判断し、強制閉鎖をすべきだとは思わない”と明らかにした.
情報通信倫理委員会も、まだ審議委員会を招集せず、閉鎖決定ができない状況だ. だが、事件捜査発表二日後の22日, 別のオンラインカフェ‘徴拒集’の最初の画面には、‘本カフェは2001年3月22日付で、開設者の要請によって、カフェが閉鎖になりました’というメッセージが浮かんでいた. 同じ日、ライコスの掲示板‘ジョンナッケヌン兵務庁’のあらゆる掲示物が削除された.
法適用範囲をめぐった論争につながるもよう
写真/軍隊反対・兵役忌避 サイトに対する警察捜査に対して、市民団体は“インターネット検閲論理を正当化しようという時代錯誤発想”と、憤怒している. 通信秩序確立法に反対するネチズンたちのデモ.(イ・ヨンホ記者)
二サイトの運営者は、今週捜査に応じることにしたが, 3月26日現在、‘軍隊拒否サイト’運営者2名は、まだ召還を拒絶している.
警察は、これらのサイトが‘兵役または納税の義務を拒否する目的で団体を組織したり、これに加入した者は、10年以下の懲役または禁固または1500万ウォン以下の罰金に処する’と規定した刑法114条2項を破った嫌疑だと明らかにした.
だが、法適用範囲をめぐる論争につながるものと見られる. ある弁護士は、“刑法114条2項自らの規定範囲が曖昧で、誤用される素地が大きい条項”を前提にした後、“果して、このサイトが‘兵役の義務を拒否する目的’を持っていたのか, インターネットサイト会員たちの集いを‘組織’だと見ることができるのかは疑問”と明らかにした. しかも、警察は運営者のみだけでなく、加入会員も捜査対象に含んでいて、より一層論議沸騰している.
‘軍隊拒否サイト’運営者は、“わたしたは兵役忌避方法をサイトに上げたことはない”としながら、“政治的良心にともなう兵役拒否権の認定と代替服務制を要求しただけ”と明らかにする. 警察が注目したオフラインの集いは、‘軍隊反対サイト’のみだけでなく、他の徴兵制反対サイトも持ったことが知らされた.
警察が捜査を進行している間、市民社会団体の声明書が続々発表された.
平和人権連帯, 人権運動広間, 民家協 等、8平和・人権団体は、22日に発表した声明書で、“警察の捜査方針が最近言論を通じて、徴集側の人権侵害的要素に対する報道が行われ、これに対する世論の関心が順次形成されている時点で発表されたという点に注目する”としながら、“徴兵制の問題点と関連した合理的討論及び社会公論化をこれ以上座視しないという意志の表出”と批判した.
翌日には、進歩ネットワークセンター, 民主労働党, 全国連合などが参加した ‘情報通信検閲反対共同行動’の声明へとつながった. この団体は、‘徴兵制に対する議論さえ封鎖するインターネット魔女狩りを即刻中断しなさい’というタイトルの声明書で、“徴兵制に対して、単に‘議論’したという理由で反社会的な犯罪云々することは、インターネットに対する検閲論理を正当化しようという時代錯誤的発想”とし、“即刻徴兵制議論サイトに対する全面捜査を撤回しろ”と要求した. 進歩ネットワーク ジャン・ヨギョン政策室長は、“自殺サイト, 爆弾サイト騒動に続いて、インターネットの自由を制約するための三番目のシナリオ”とし、“今の状況に憤怒を感じる”と吐露する.
兵役拒否団体組織加入罪適用?
警察の一関係者は、“軍隊拒否サイトが開設されてまだ一ケ月にもならないうちに大きな組織が形成されたというようには考えない”ながらも、“この運動が本格化した時に支払う社会的費用が途方もないと予想されるため、未然に防止しようとしたこと”だと明らかにした. 彼はまた、“徴兵制に関する社会的討論が始まっているということも知っている”としながら、“議論自体を封鎖するという考えは一度もしてみたことがない”と話した.
今回の事件が、最初の兵役拒否団体組織加入罪適用につながるかは、まだ不確実だ. 警察は、軍隊反対サイトが‘兵役拒否を目的として団体を組織すること’を証明しなければならず、軍隊拒否サイト運営者側は、徴兵忌避が目的でないことを反駁しなければならない状況だ.
これらの拘束可否は、今後、徴兵制の討論程度を計る重要な定規になるはずだ. 徴兵制に関する討論がたった今始まった状況で、明るみに出た警察の捜査方針は、すでに討論の萎縮をもたらしている. ‘自主閉鎖’した二サイトがこれを証明してる.
シン・ユン・ドンウク 記者 syuk@hani.co.kr
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