2001年3月ハンギョレ21 350号

[文化] 大衆音楽を大衆に返して!

[ 文化 ] 2001年03月13日 第350号

大資本と言論権力に蹂躙された大衆音楽の場を、また探すために立ち上がった ‘大変委’ 


写真/"大衆音楽を、私達が出ていって変える”と乗り出した 大変委 会員たち. 彼らは随時オフラインとオンラインで会い、'どのように戦うか' 議論する.(カン・チャングァン記者)

“だまってTVを見ろ”と強要した、私たちの大衆音楽現場の巨人に向けて、小人が小さな石つぶてを握り締めた. “今は、私達が出ていって、私たちの力で大衆音楽の現場を変える”と、大衆が立ち上がったのである. さる1月末、発足された大衆音楽の現場を変える委員会(大変委)は、ミュージシャンや評論家 等、‘現場’の専門家たちから何らの入れ知恵も受けず作られた、純粋音楽ファンたちの集い. 彼らは、先週、‘空中派の順位番組廃止と代案番組提案’という分厚い報告書を発表して、大衆音楽現場を‘粉々’にしてきた大資本と放送, 言論権力に向けて火ぶたを切った. 


ソ・テジ賛否論争が契機 

写真/昨年 ソ・テジの放送活動問題に触発された論争は、大変委が生まれる契機になった.(イ・ジョンヨン 記者)

“果して、私たちの大衆音楽に大衆があるだろうか?” 大変委 会員 ユ・チャンボム(31)氏の批判は、大変委の問題意識を明快に代弁する一言だ. “放送とスポーツ紙のような黄色言論, そして、大型企画社が掌握してきた大衆音楽の権力を、私たち大衆が取り戻そう, いや、せめて弱化させよう, そして、他の脱出口を作ろうというのが、私たちの目標です” 

大変委はインターネット空間で、韓国大衆音楽の歪曲された現実を非難してきたネチズン論客を中心に、昨年末からオンライン上で具体的な手順を踏み出した. 彼らを不平と不満から‘行動’へと動かせた火打石は、ソ・テジ カムバック後の放送社出演問題で醸し出された葛藤だった. ソ・テジファンたちが運営するサイトのテジゾーンの掲示板 ‘ウォー ウォー ウォー’で火がついたソ・テジ賛否論は、韓国放送慣行に対する批判に拡大されて、“私達が出ていこう”につながったのである. 

“当時、ソ・テジの放送拒否や録画製作をめぐった論争の相当部分が不当で、一方的なソ・テジ個人に対する批判に片寄っていると考えました. その間に介入した放送社の暴力という問題を指摘せざるをえなかったのです.” インターネット業者を経営する大変委 代表 ハン・ジウ(38)氏が大変委と縁を結ぶようになった理由だ. 

今でも大部分がオンライン上でなされる大変委の活動は、テジゾーンの‘ウォー ウォー ウォー’で進行される. 現在、加入会員1千余名中の80%程度がソ・テジのファンたちであり、ソ・テジファンと大変委は緊密な関係である. ややファンたちの贔屓の一現象として起きたのではないかという質問に、ソ・テジの情熱ファンであることを自認する ソン・ミスク(23)さんはこのように答えた. 

“以前は知らなかった大衆音楽現場の問題を、ソ・テジによって知ることになり、ソ・テジのために変えなければならないと考えました. そして、それは他の歌手にも該当する問題でもあるでしょう.” 最小限のライブ条件も揃えられないまま生放送を強要する放送社の暴力をなくせば、ソ・テジという一歌手ではなく、正しく演奏しようとする他の歌手の難しさも解決して、人形歌手一色の現在を変えるようになる契機にならないかということだ. 

やはり、ソ・テジのファンで、公演場で大変委を初めて知ったキム・ヨンミン(21)さんも、やはり似た考えだ. “ソ・テジ公演を見ながら、体を揺さぶって楽しむ公演文化も初めて知って、インディバンドたちの音楽にも接するようになりました. 人々は, わたしのようにスラムを楽しんでインディバンドを愛するようになりました. では、その人々は母親のお腹の中からスラムとインディ音楽を楽しんで聞いたでしょうか?” 最近では、大変委の友人たちとインディバンドのクラブ公演も楽しみに通うというキムさんは、“そのように興味深く、面白い公演文化を他の人たちも楽しめばいい”ということで大変委に加入したという. 

大変委のいろいろな‘実践的戦略’中のひとつは、キムさんの話のように、公演文化の活性化だ. その初めての実践は、さる3月1日に開かれたディアブロ公演の前売り作業だった. 公演一週間前に、前売りに合流した彼らが集めた数字は、全体観客700余名中の152人. “ソ・テジのそそのかしでそのようなことをしているのではないかと批判しても良いけれど、行かないで、聞かないよりはましでしょう?” 

彼らは4月中にバンド4〜5チームを招請し、無料公演も準備している. 公演を定着させて、定期的に地方公演も企画する予定だ. 無料公演進行の核心の金脈, スポンサー募集の責任を負うイ・ヨンジン(30)さんは、“‘民衆’の集い”というところに大変委の意味をおく. “重要なのは、批判のための批判ではなく、動くことだと考えます. 私達が議論を引出す過程は遅いのですよ. 専門家ならば、30分で整理する話を4〜5時間討論しながら整理するのです. それだけ長く戦ってきた人たちでしょう.” イ・ヨジンさんは、大変委がテジファンたちの団体だという声が出てくれば、最初に抗弁する‘秘書テジファン’(?)でもある. それで、同僚たちとたびたび論争を繰り広げる戦い屋でもある. 


順位番組廃止運動に参加 

写真/大変委は、空中派放送の順位番組廃止運動で、大衆音楽批判の火ぶたを切った.

実は、大変委の性格には曖昧な側面もある. ファンクラブでも, 同好人の集いでも, 運動団体でもないが、そのあらゆることが一定部分ずつ混ざりながら化学的結合を起こし、シナジーを結んでいると見て正しいようだ. “大変委に対して知りたいのですが.” 電話して二時間で七人が走ってきた彼らの精力には、ファンクラブのエネルギーが混ざっている. ほとんど毎日インターネット上で会って、共に他の会員に会おうと釜山までおりて行く等、通信同好人の集い特有の人間的紐帯感も強い. しかし、一週間に一度ずつする‘チャッティング’で、30〜40名ずつ集まって彼らがする話は、安否と雑談ではなく、‘小規模ライブクラブ活性化にとって妨害要素になる食品衛生法に関する議論’等の深刻な主題だ. 今回出された報告書は、彼らの‘運動’が出した初めての産物だ. 

大変委媒体批評チームが3週間準備した報告書は、専門家の作品に劣らない. この報告書は、放送技術従事者の証言と資料調査を通じて、音響システムが思わしくないスタジオで生放送を押し通し、歌手たちにリップシンクを強要する放送社の暴力を論理的に批判した. また、日本とアメリカの音楽番組運営方式を細密に比較することから専門公演場活用等、現実的な対案まで提案している(もちろん、他の番組の半分にもならない製作費のためにスタジオ生放送に固執する放送社にとっては現実的ではないと言えるだろうが). 最後に、生放送順位番組に対するティーンエージャーの意識調査を別添し、放送社の最後の砦の“ティーンエージャーが求めるから”という弁解に一撃を加えた. 

空中派の順位番組問題を初めて提起した理由のひとつは、最近、文化連帯で本格化した順位番組廃止運動に賛同する意味からだ. 彼らは、公聴会の時、共に参加して発言権を得て問題を提起して, 廃止のための街頭署名運動にも出た. “私は大変委の活動は、消費者運動だと考えます. 音楽を聞く消費者の立場で、生産者に願うことを要求したいのですよ. 明らかに虚偽記事を書く媒体にも同じです”(パク・サンヒョン) 


言論の気ままさ, 座視しない 


彼らは放送ではない言論媒体にも不満が多い. みえすいた‘にせ物’インタビューごときは言うまでもなく、歌手が入院している病室にカメラを入れたりして、音楽ファンたちを‘愚昧な大衆’に追い込む, 言論の傲慢な態度も、やはりこれからは座視しないという. 言論に対する話が出てくると、緊張した雰囲気に、記者は瞬間身の毛がよだった. ‘これは、まさか、悪口だけを書かないでしょうね.’ 

まだ大変委は完成された組織ではない. 今も団体が進む方向を露呈する彼らの歩みはのろい. ‘大衆音楽の現場を変える委員会’という名前の普遍性を獲得するためには、テジゾーンから独立することも彼らの課題だ. しかし、重要なことは、彼らの言葉の“民衆”が蜂起を始めたということだろう. フランス革命がロペス・ ピエールやダントンではなく、民衆のこととして行われたように、彼らの‘民衆蜂起’によって、大衆音楽界の革命は既に一歩を踏み出したのである. 


キム・ウンヒョン記者 dmsgud@hani.co.kr