正規職を拒否する自発的白首(註:ペクス.身分は高いが、官職に就かない人)たち
“たとえ飢えても、好きなことはしなければならない”
(写真/ロック音楽狂人
ジョン・ジグンさんは、毎晩6時から明け方2時までビデオ店でアルバイトする時以外は常に音楽を聞く.ジョンさんは手当たり次第アルバイトをして、最低賃金を稼ぐが、正規職としては就職したくない)
一週間に一度市場での補給(2万〜3万円ずつ), 超高速通信使用料(3万5千ウォン),
電気税(1万〜2万ウォン), 電話料金(1万ウォン),
その他、公課金と交通費等.
ゲームアニメーター チ・ホテ(29・ソウル 新道林洞)さんの、一ケ月の必須支出品目だ.
皆合せて、15万ウォンから20万ウォンほどになる. 映画を見たり、本,
レコード, 必要な物を買う費用を合わせても、一ケ月の生活費は40万〜50万ウォンを超えない.
チ・ホテさんは、外出を嫌ううえに, 仕事もe-mailでやりとりするので、何日も家に閉じこもることができる.
寝たい時に寝て, 食べたい時に食べて,
仕事をしたい時に仕事をする. 8月24日には、雨が凄く降るという話を聞いても,
万事後回しにして、職場生活を送る女友達の休暇に合わせて江原道へ旅行に出発した.
好きなこと, 死んでもしなければならない
チ・ホテさんは、機械設計を専攻したが、大学卒業後に漫画サークル活動をして積んだ実力で食べてきた.
1年半ほど職場生活をしたが,
きちんと整った規律とかた苦しい雰囲気を耐えることができなくて、未練もなしに放棄した.
彼は特別な事がない限り、今後も就職はしない考えだ.
一時‘創造的白首’という言葉が流行した.
未就業や失業でも、自分が処した状況を最大限楽しんで、意味があるように活用しようというスローガンとして提起された言葉だ.
IMFという厳酷な時代に深刻な雇用不安を感じていた人々は、この言葉で多くの慰安を受けた.
その後、人々の口に昇っては下りる、白首という単語は、自然に一つのキャリアとして認められるようになった.
もちろん、心理的なキャリアだ.
歳月が流れた. 相変らず、就職問題は若者達の主な関心事だが,
就職しなかった若者達の中に、独特の色合いをもった彼らが見える.
自らを未就業者ではなく、非就者と呼ぶ、いわゆる‘自発的白首’たちだ.
彼らは、先のチ・ホテさんの場合のように、非正規労働で最小生計をたてて、余った時間は全的に自分が好きな事に使う.
失業手当ても受けなくて、就職努力もしないために労働部統計には捕えられないけれど,
20代の若者達で、周囲にこういう友人が一人もいない者はいない.
慶畿道 光明市 河岸洞 第7団地アパートのビデオ店で働くジョン・チグン(27)さん.
非正規労働で生計をたててきた点ではチ・ホテさんと同じだが、彼は単純労働で生計を解決する.
夕方6時から明け方2時まで、まるまる8時間を働いて、韓国一ケ月の最低賃金(42万余ウォン)をすこし上回る程度受け取る.
だが、ジョンさんはこの生活に満足だ.
目をあけるやいなや、好きな音楽を一日中、思う存分聞くことができるためだ.
ジョンさんはロック音楽マニアだ.
朝、寝床から起きれば、直ちにコンピュータにCDを押込んだ後、家の中でも一日中、無線ヘッドホンをかけている.
朝食兼昼食と、夕食まで家でできるので食事の負担もかからず, 5〜6kmくらい離れたビデオ店には自転車に乗って行き来するので、交通費もほとんどかからない.
大学を中退した後から、ジョンさんは、アルバイトではやったことがないものがない.
龍山 電子商店街で部品配達, ビュッフェ食堂サービング, 染料缶
荷役である, コンビニエンス ストアー 販売, 建設現場 櫓歌だ 等.
そのうちにも 染料缶の荷役仕事が一番だったと選ぶ.
正確に日当を受け取れることも良かったが、何より、音楽をがんがん聴きながら仕事ができるためだ.
一缶当たり27kgを超える重さだが、要領さえ十分ならば、なんとかやれると話す.
性格も明るくて、才気があって、共に仕事をしようと手まねきする‘お兄さん’たちが多いけれど、彼は首を振る.
“職場に通えば、音楽を聞けなくなりますよ.”
からだで学んだ‘お金を使わないこと’
(写真)フリーター ジョン・ジグンさんの部屋.朝、目覚めるやいなや、コンピュータにCDを押込んだ後、無線ヘッドホンをかけて一日を送る
(写真 下). アニメーター
チ・ホテさんは、外出を嫌う.彼はお金をすこしづつ使うのが身についている.チ・ホテさんは、好きな漫画で食べられるので幸せだと話す)
ジョンさんとチ・ホテさんのように、職業よりは趣向により大きい意味をおく彼らの共通点は、出退勤にしばられることが嫌いで,
非合理的で権威的な組織生活からストレスを受けることも嫌いで,
未来のための投資や安定的経済生活に関心がないということだ.
また、大部分、映画とか音楽あるいは漫画など、マニア的感性を注ぐ対象をひとつずつもっている.
だが、各自が処した条件と境遇は多様だ.
アニメーターのチ・ホテさんは、仕事を多くすれば200万〜300万ウォンも稼げるが,
仕事をせず遊べば、一銭も儲けることができない.
仕事の量によって違うけれど、平均150万ウォンは稼ぐ.
ビデオ店で仕事をするジョンさんは、最低賃金を稼ぐ程度.
だが、二人とも、お金を使う事には興味がない.
食べて生きる分だけ稼げればいいということだ. 
“未来のための投資?
お金ならば、私は必要なだけ取って、余ったお金はお母さんに差し上げています.
考えて使っているんです.”(チ・ホテ)
“5日後もわからないのに、5年後の心配をどのようにしますか.”(ジョン・チグン)
こういう返事をするからといって、彼らをなげやりな若者達だとだけ見ることはできない.
二人は人よりも金をもうけることに汲々としていないだけだ.
その代わりに、漫画一枚を、そして,
レッドツェペリンの音楽をもう一度聞くという側なのだ.
したがって、共に‘お金を使わないこと’が身についている.
遠く旅行に出発するとか, 高い物を購入することはしない.
ジョンさんは近所の始興洞一帯や鍾路側で主に遊ぶ.
家の前にあるバス路線にともなう同線だ.
だが、二人は学校を終えた後からは、ただの一度も父母に助けを求める手を差し出したことがない.
小遣や生活費など、多ければ多いとおり使い、少なければ少ないとおりに自ら解決してきた.
このような点で、父母の経済力に依存して暮らす若い‘有閑階級’たちとは区別される.
日本では、職業なしのアルバイトで最小生計費を稼いで、残り時間にはしたい仕事をして自由に暮らす、こういう若者達を称して‘フリーター’(フリーアルバイターの和風合成語)と呼ぶ.
最近、その数が増加しているということだ.
日本労働部発表にしたがうと、このような若者達は150万名を超えたという.
韓国の場合にも、労動市場でパートタイムが占める比重が常時増えてきていて、若年層たちの文化的趣向も順次深く広くなるなかで‘フリーター’群の拡散は火を見るより明らかなことだ.
釜山大 社会学科
キム・ムンギョプ教授は、“資本主義技術開発速度が順次速くなって、市民社会が成熟するほど、各個人の個体性は必然的に強化される.
デジタル時代を生きる若者達は、労働と遊びに対して、既成世代とは全く異なる考え方を持っている.
既存の定規で価値判断をするのは難しい.
彼らの趣向は、職業観から明確に現れる”と話す.
家政婦仕事を断られた大卒女性
(写真/毎日は仕事をしないで、隔日で仕事をするホ・サンレさんは、映画製作に参加している.ホさんが
月,水,金曜日に仕事をするソウル逸院洞のある漢字書芸教習学院)
一群のフリーターたちは‘多毛作’生計を追求する.
2種類以上の職業を同時に持つ場合だ. ひとつは本当にしたいこと,
他のひとつは、単純に生計維持手段だ.
ソウル 新林洞に暮らすホ・サンレ(26)さんは、友人たちに“隔日にだけ仕事をする人”として知られている.
ホ・サンレさんは可能なかぎり毎日連続する仕事は避ける.
疲れていたり、時間を活用出来ないためだ. 通信会社 通信検収,
カウンター等、多様なアルバイトを習得した彼女は、最近もうひとつ得た.
毎週 月, 水,
金曜日ごとにソウル逸院洞のある漢字教習学院に出て、初中高生を教える仕事だ.
専攻の中語中文学を生かせるうえ、隔日制であるため、時間を最大限稼ぐことができると喜んでいる.
ホ・サンレさんが学院に行かない日に没頭することは、映画製作である.
いつかはプロデュースをする夢を持って、映画製作に参加するという彼女は、“職場生活が体質に合わないこともあるけれど,
何より、正規職の仕事を持つようになれば、映画が作れません.
どっちみち、ふたつのことができないのならば,
ご飯に飢えても、好きな仕事を選ぶべきですよ”と話す.
ホ・サンレさんの場合は、運が良いケースだ.
大部分が意に添わない仕事に甘んじるしかない.
フリーランサー作家として活動する ユ・某(33・慶畿 安城市)さんは、創作文を書くために職場を放棄したケースだ.
組織生活に適応が出来なかったというよりは、それが身につくことが嫌だった.
“比較的自由な職種だといえる言論社,
出版社等に勤めたけれど、不合理で、時にはダーティーでさえあった組織関係,
先後輩関係で人の個性を押さえつける雰囲気に息が詰まりました.
そのような関係は理解し難かったのですが、理解してみたくもなかったですよ.
個人が選択できるのは、秩序に編入するか、戦うか、二つのうちのひとつなのですが,
編入するのは性格に合わず、戦おうとすれば、敢えてそのようなことでエネルギーを浪費する必要が感じられませんでした.”
職場を放棄した後、偶然にか、単行本作業などの仕事が降り注いだ.
92, 93年頃には、一ケ月に最高700万ウォンまで稼いだこともある.
しかし、どんなに生計のために雑文を書いたとしても、文を書く仕事である以上、精神的な消耗が大きい.
それで、ユさんは単純労働をしようと思いついた.
偶然、家政婦の仕事をみつけて, 家主と面接までした.
食べて寝る事が解決するうえに、家族が出かける昼には、十分に自己時間を出すことができるという条件だった.
しかし、家主の面接でユさんはひじ鉄砲を食らってしまった.
大学まで卒業したことがはっきりしている家政婦をおくことができないというのが理由であった.
左官仕事も学んでみたかったが、左官の先生が、身長も低くて力もないように見えると、拒否した.
大変な苦労をした彼女は、一定期間大金を集めて、創作に没頭するという決心で、この前の春、政府支援機関に契約職で就職した状態だ.
だが、契約期間の半分も満たすことができていないのに、すでに寒気がする程だ.
取材の途中に会ったフリーターたちは、専門性があろうがなかろうが、主体の所信と哲学があった.
どこにもしばられるのが嫌いで、自由に生きるという単純な考えから、稼いだだけ使うという原則,
進んで資本主義的蓄積と競争秩序からはずれるという哲学,
不精と遊びに対する称賛まで、スペクトラムが多様だ.
勇気が必要
(写真/自発的非就業者として生きていくためには、主流秩序から抜け出した生を耐える勇気と訓練が必要とされると話すソン・ビョンウクさん.彼は印刷物を配るアルバイトをしながら、大部分の時間は本を読んだり文を書くのに捧げる)
印刷物を配るアルバイトをする ソン・ビョンウク(30・江南区
論硯洞)さんは、一ケ月の小遣が10万ウォンを超えない.
印刷物を配れば、日当5万ウォンから8万ウォンまで稼ぐことができる.
一ケ月に何日か働いて、余った時間にはインターネット空間に文を書いたり本を読む.
そうこうしたあと、退屈ならば時々市民社会団体集会にも見物に行く.
ソンさんは、“主流秩序を批判することはやさしいけれど、生を担って、その秩序から逸脱することは容易ではない.
勇気が必要とされることだ”と、自身の生活哲学を堂々と明らかにする.
“私達の社会が弾力がないのです.
そのため、就職をしないで暮らすということがやさしくはないのです.
経済的な問題は、すこしづつ稼いで使えばいいけれど,
世間の視線がより厳しいですよ.
同時に、そのような視線に耐えるのが、また訓練でもあります.”
自身の場合は、兄,
弟が正しく職場で成功しているうえに、お母さんも経済力があるので、一人で小遣の他に別にお金を集める必要を感じることができないらしい.
いつか、自身がお母さんを世話しなければならなくなるか、お金が必要になることができたら、その時はその条件に合わせて生きていく用意もある.
だが、まだだ.
ソンさんは インターネットで
‘君はどう’というIDで文を書いている.
オンラインの友人がかなり多い. 8月24日には‘ルジョ’というIDを使う女友達に、家で聞かないLPレコードを一包み贈った.
自分の家では無駄になるとか、その人がよく聞いて紹介してくれることを願う心からだ.
“当面の生計ゆえに、職場にすがる方達には申し訳ないことながら,
皆が家族を作って、彼らを扶養することで人生の意味をさがす必要はないと考えます.
そのような価値をもった人は、そのように生きて、そうでない人は違うように生きればいいのです.
また、将来に対応する手段とは、安定した職場やお金でなければならないでしょうか?
人を資本だとみなすことも出来るでしょう.”
フリーターたちは同じ意識を持った彼らとは、年齢上下を問わず、容易に親しくなる.
彼らが会う空間は、主にインターネット.
デジタルの世の中がアナログ型人間の彼らに翼をつけてあげたわけだ.
だが、私達の社会で、フリーターとして生きていくということは、ソンさんの話のように容易ではないことだ.
ゲーム漫画を描くチ・ホテさんの場合、仕事が追い込まれる時は徹夜になる日が多い.
翻訳, デザイン,
プログラム構築等、専門性を持つ仕事は、短期間ではあるが、時間にしばられなければならない.
場合によっては、お金が貸し倒れになったり、遅れる場合も数多い.
非正規労働者たちが体験する困難難はそのまま抱いているわけだ.
生活リズムもよく調節しなければならない. 外部的な規律や強制,
基準がないせいだ. フリーランサー作家
ユさんは、“一ケ月に数百万ウォンずつ収入を上げることもあるけれど,
そうでない時は、僅かなお金100ウォンもない時もある”と話す.
お金に対する管理概念がなくなるということだ.
それでも、彼らは幸せだ.
望みの方式通りに生きて、望む仕事を思う存分出来るからだ.
たとえ、思う存分できないとしても、他人の強要ではない、自分の趣向に合せて選択した道だから後悔はない.
若いフリーターたちは、何よりも世の中の速度にしたがわないで、自分の速度で生きるということはスリルがあって面白いと皆がいう.
キム・ソヒ記者sohee@hani.co.kr
.
Copyright ハンギョレ新聞社
webmast@news.hani.co.kr
|