ダンスだけが残ったレコード市場
規模限りない下落… 音楽の質を高めて、自生的突破口を探すべき
(写真/評論家たちの間では、空中波(通常の電波.ケーブルに対して)放送社が歌謡番組を果敢にあきらめるべきだという意見が多い.
99SBS歌謡祭典で受賞した4人組女性グループ ピンクル(註:finkle)
昨年、韓国映画界は観客占有率を40%保持を目前に控え、韓国映画のルネサンスを予見した.
大衆音楽の場合はどうか. 国際レコード産業協会(IFPI)によれば、現在、国内レコード市場規模は、世界18位(IMF以前は12位).
国内レコード販売量中に国内大衆音楽が占める比率は65%で、外国の大衆音楽レコード(28%)とクラシックレコード(7%)の販売高を圧倒している.
80年代末に上陸した、ユニバーザル, EMI, ワーナー, ソニー, B.M.G
等、外国 5大直配社のレコード販売率は相変らず20%程度にすぎない.
外国直配社とタワー,
バージン等の多国籍流通社が市場を蚕食した日本に比較すれば、国内音楽産業は強固だと見ることができる.
それなら、韓国大衆音楽は今、黄金時代を謳歌しているのか.
残念ながら、外観の手堅さとは違い、内面は順次崩れてきているというのが、専門家の大半の意見だ.
成人趣向の歌手たち、順位圏から皆消えて
97年末、IMF爆撃で販売量が3分の1以上も減少した後、停滞しているレコード市場の現在の規模は3千億ウォン台.
文化観光部は、98年末、現在国内CD市場規模を3530億ウォンだと推定している.
シンナラレコードで集計した、国内大衆音楽個人CD販売順位の1位から30位までのCD販売量は、98年1565万枚(939億ウォン)から、99年1437万枚(862億ウォン)に低くなった.
しかし、販売量の持続的な下落傾向よりも深刻なことは, 90年代中盤から深刻化したジャンル不均衡が順次極端に駆け上がっている点だ.
98年だけでも、100万枚以上の販売高を記録した歌手は、キム・ジョンファン(110万枚),
H.O.T(106万枚), キム・ゴンモ(105万枚), ソテジ(105万枚),
シン・スンフン(100万枚)で、ジャンルや消費年齢層で比較的色合いが異なる5人であったし,
40位圏には、ダンス歌手たちが主流をなしたが、パク・サンミン,
イ・ソラ, ジョ・グァンウ, シン・ヘチョル, ジャウリム等、20代以上の聴衆を持った歌手も十人以上入っていた.
しかし、99年の販売高100万枚以上を樹立した歌手は チョ・ソンモ(180万枚)と
H.O.T(135万枚)だけであり, 40位圏のなかで成人購買者を動かす歌手は、イ・スンファン,
キム・ギョンホ, イ・スンチョル程度に終わっている.
毎年の全体順位30位中の30%程度を占めた新人歌手たちのCDも、やはり昨年はイ・ジョンヒョンとジョPD程度で終わった.
H.O.T, S.E.S, ピンクル, ユ・スンジュン,
オム・ジョンファ等、既存のダンス歌手だけが20位圏のなかで微小な順位変動をしただけだ.
(写真/企画社によって印刷するように歌手を作りだすスターシステムは、私たちの大衆音楽の発展を後退させる原因として指摘される)
スターシステムによって組立生産された、10代のダンス歌手たちが音楽市場のメインになったのは、96年‘ポスト
ソテジ’時代の開幕以後、既に大勢になっていた.
購買力が旺盛なティーンエージャーを中心に主流音楽産業が動くことは、米国や日本等の海外も同じだ.
問題は、外国の場合、主流のスキ間で自活力のある非主流音楽のジャンル的スペクトラムが多様なのに比べて、国内はスターシステムの一人占めがだんだん深刻化しているという事実だ.
近くの日本だけでも‘ジェイポップ’(J-POP)と呼ばれる日本大衆音楽中にダンスジャンルが占める比率は15%に過ぎないのに比べて、韓国の場合は70%を占めていて,
その比率は益々高くなっている.
評論家と業界関係者たちは、スターシステム
非正常的な肥大化原因が放送にあるという、同じ言葉を吐く.
大衆音楽評論家
イム・ジンモ氏は“テレビが大衆音楽を掌握してしまった90年代中盤以後、大衆音楽は空中派放送のアイテム中の一つに転落した”と批判する.
公演文化が不在な現実で、空中派放送のショー番組のPD(註:プロデューサー)ひとりが製作社,
CD社, 消費者を合せたよりも、より大きな力を持っていて,
一週間に一度ずつ放映される放送3社のランキング番組が音楽市場全体を思うままにしているということだ.
CD販売量で決定されるランキングではなく、CD販売量を決定するランキング番組に顔を現すことは、歌手たちの至上課題になった.
“空中派放送のアイテムの中一つに転落”
ケーブルTVチャンネルで活動しているPDカン某氏は“CDを出した後、他の放送社にすぐに出演したり、自社よりたくさん出演した歌手を空中派3社が3週程度自社放送の出演を禁止させることは、すでに業界では暗黙的な懲戒として受入れられている”と伝える.
昨年末開かれた<SBS 歌謡大全>に H.O.Tと S.E.Sが候補にも上がっていない‘事件’は、放送社がどれくらい恣意的に大衆音楽界の地図を描き換えているのかを見せる事例だ.
それでも、歌手たちが針の穴のように狭い放送出演に命をかけることは、放送に乗る道の他に市場競争力を持つことができる通路がないためだ.
したがって、10代の視聴者たちの目を引き付けることができる絢爛なビジュアルを要求する放送の言うなりにCD製作者たちがついて行っているということだ.
評論家たちは、放送社が音楽放送を外国のように、ケーブルTVとラジオに渡し、大衆音楽が放送から独立しない限り、現在の畸形的構造は改善しないと見通している.
しかし、ある放送関係者は“5千万〜6千万ウォンずつ投資しても視聴率に自信を持てないドラマよりも、せいぜい1千万〜2千万ウォン程度だけ入れれば視聴率も保障されて莫大な広告収益も上げられるショー番組を放送社があきらめることは難しい”と診断する.
見る音楽を量産する流れは、CD製作費をぐんぐん沸き上がらせながら作って、高費用低効率の構造を固着化している.
以前には放送社で提供していたバックダンサーさえ、企画社が別に管理するのが普通になって,
はなはだしきは、最近になってからは放送セットでさえ、企画社で準備する場合もあって,
CD一枚当たりの投資額は著しく沸き上がっている.
メジャーCD社製作者のK氏の計算によれば, 中間級CD1枚を製作するのに要する費用は、平均1億5千万ウォン.
広報費, 進行費と衣装コーディネート費等の付帯費用を含めれば3億ウォン程度がかかるらしい.
ここには、新しく発掘した新人を6ケ月から1年間の訓練を経て‘歌手’に変身させるのに注ぎ込む企画費用は入っていない.
ソテジ以後、マーケティング戦略とイメージを浮び上がらせる企画力がCD成功の鍵になりながら、製作社に‘絵’に
なる顔を発掘して歌の練習から髪型まで指定して、歌手に作る訓練過程は必須になった.
H.O.T, S.E.Sを輩出したSMエンターテイメント(代表
イ・スマン)と、ピンクル, ジャックスキスを成功させたDSPエンターテイメント(代表
イ・ホヨン)は、このような戦略と戦術に成功し、主流音楽界を掌握した二大企画社だ.
注ぎ込み式投資… 不良塊り 流通体系
( 写真/99 KBS歌謡対象で大賞を受賞した歌手 チョ・ソンモ)
このように製作されたCDは、最小限20万枚以上売れて初めて製作費を回収する.
1年に1千枚以上あふれ出るCD中で損益分岐点を超えるCDは、僅か10%未満.
‘10万枚以上、でなければ、2千枚未満’というのが、業界の定説になりながら、莫大な借金を抱え込むに企画社が続出,
成功した企画社は新人歌手発掘よりは安全街道に上がった歌手をより大きく爆発させるための‘注ぎ込み’を好む悪循環を反復している.
ダンス音楽よりも相対的に少ない製作費ですむバラード音楽も、98年
チョ・ソンモが<トゥ ヘブン>ミュージックビデオ成功以後、ミュージックビデオに金をふんだんに使いながら製作単価が日々沸き上がっている状態だ.
韓国音盤製作者協会のクォン・スンシク理事は“高い製作費のために、企画社とCD社が共に崩れやすいCD市場の零細性から抜け出すためには、外国のように印税制度が導入されるべきだ”と話す.
彼は“作詞者や作曲家に曲あたり500万〜1千万ウォンずつを一時に支払う現行方式の代わりに,
消費者価の7%を著作権法によって創作者に支払う日本のように、印税制度を導入すれば製作費を低くすることができるだけでなく、ひょう窃等の他の問題もだいぶ改善できる”と診断する.
国内大衆音楽界の発展を阻害する、また違う要因としては、流通体系の落後性を選ぶことができる.
文化観光部や大型CD社では、自主的に販売集計を出しているけれど、実像で国内大衆音楽市場の規模は誰も知らないというのが音楽界の定説だ.
専門家たちは、外国直配社や日本で大きな成功を収めた大型多国籍CD流通業社のタワーレコードが国内に入ろうとしない理由を、国内流通の不透明なマーケティング方式に適応できない点に求める.
CD流通の45%を占めているシンナラレコードでは、98年末からバーコードを導入して流通電算化を推進してきたが、中間卸売商と小売り商の反対で、中央電算化にいまだに踏み込めないでいる.
シンナラレコードのジョン・ムンギョ代表は“不法流通を根絶するためには、中央電算化と共に、無資料取引を助長する高い税率を低くするべき”と指摘する.
国内CDにつく付加価値税は10%に達する. いくらか前、3%から5%に上がった日本よりもはるかに高い税率だ.
それだけでなく、サービス業として分類されている企画社は、売上額の39.9%に達する高い税率適用を受けている.
ジョン氏は“政府当局の無資料取引取り締まりと共に、大衆音楽産業を遊興業ではなく文化産業に認識転換し、税制合理化を通した、業界の自発的な申告取引を誘導する政策的支援が急がれる”と話す.
文化観光部 映像音盤課は、98年9月に設立したCD協同組合に対し、1年40億ウォンを投資して卸売商を中心にPOSシステムを構築する予定だ.
シンナラレコードと共に流通の二つの軸となっているCD卸売商協議会が、昨年末、協同組合参加を決定したため、顕著な成果があると文化観光部側は見通している.
IMF以後、また猛威をふるい始めた不法CD流通も、CD産業を食い荒らす要因だ.
全体CD市場の30〜40%程度と推算される不法CDの規模は、IMF以後、全体CD市場の半分までもを見越している実情だ.
最近になって深刻化している問題は、露天商を通じて流通している不法CDが、CDジャケット複写技術の発展で、正規商品売り場に堂々と展示されて売れている点だ.
ちょっと前には、配布したCDよりずっと多くの数の返品が製作社に帰ってくるという、笑うことができない事態が音盤協会に報告されたこともあった.
しかし、流通網が非常にわかりにくく、不法CD業者を摘発するのが難しいのみだけでなく、大部分の製作社や企画社についても、無資料取引をしているために申告もできなくて、心痛をしている状態だ.
クォン・スンシク理事は“不法CD取り締まりのため人材拡充等、政策的意志も問題だが,
不法CD流通を担ぎや(註:一時的なごまかし商売)ではない
‘長物取引(註:継続して行われる定着した取り引き)’として理解する政府側の認識転換がなされるべき”と主張する.
大衆音楽評論家 カン・ホン氏は“大衆音楽産業の21世紀の話の種は、産業が音楽の中へ入ること”としながら、“ゲームの論理ではなく、音楽の質によって市場が決定されるためには、ライブ公演文化を定着させることができるインフラが整備されなければならない”と指摘する.
文化観光部が98年に集計したところによれば、全国の総合公演場と一般公演場,
小公演場は321ケ所で, 562ケ所に達する映画館の半分をすこし超える.
この中で、大衆音楽専門公演場は全くない.
施設不備や公演場側の理解不足で、大衆音楽が舞台に上がるために越えるべきハードルはあまりにも高い.
昨年末、辛うじてなされたライブクラブ合法化以後、当局は2002年完工を目標に、オリンピック公園内の5千席規模の大衆音楽専門公演場設立,
体育館等の既存施設の改善補修,
大衆芸術公演付加価値税免除等、自ら公演文化振興のための政策を打ち出している.
インターネットはどんな影響をおよぼすか
課題ばかりが山積した大衆音楽界の自生的突破口はないか.
短期的な展望は暗いけれど,
長期的には、コンピュータとインターネットが大衆音楽産業に変化をもたらすはずだという意見に専門家たちも同意する.
昨年のジョPDの成功は、通信を通した音楽電波の潜在力を見せてくれた.
MP3の普及は、2〜3年中に流通構造を革命的に再編することと予見される.
イム・ジンモ氏は“現在は、ダウンロードが複雑で、レパートリーと価格競争力が不足するけれど,
10年かかることと予想されていた、CDの大衆化が僅か5年中になされたように、MP3も早く広がるでしょう”と見通す.
“コンピュータを通した新しい音楽ジャンルの実験で、ネチズンたちの猛烈な活躍が広まれば,
韓国の大衆音楽もスターシステムの従属から抜け出す可能性が高い”と、彼は展望する.
キム・ウンヒョン記者
dmsgud@hani.co.kr
ハンギョレ21 2000年 01月 20日 第292号 .
Copyright ハンギョレ新聞社
webmast@news.hani.co.kr
|